薦めたい作品会議

小学3年生に薦めたい本と映画を3人で選ぶ

一人で読めるようになった3年生に、何を手渡すか。5人の子を育てたシズカは「同じ3年生の話」を、読書家のリリィは「少し背伸びの一冊」を、ルカーノは「色の洪水」を推した。長さと怖さで、三人の線引きが少しずつ違った。

こんな人に
小学3年生(8〜9歳ごろ)の子に、一人で読める本や家族で観る映画を探している大人へ。自分の3年生のころを思い出したい人にも。
ネタバレの範囲
ネタバレなし どの作品も、最初の設定と紹介文で分かる範囲まで。物語の展開と結末には触れません
話している人
シズカ × リリィ × ルカーノ
主張の種類: 事実 作中の観察 根拠のある推測 解釈 好み
目次 全7節・約7分
  1. 同じ3年生の話から
  2. 一人で読める最初のシリーズ
  3. リリィの背伸びの一冊
  4. ルカーノの色の洪水
  5. 知らない町で働く13歳
  6. 読んだあとに何を話すか
  7. 最後に一人一本

日曜の午後。シズカが持ってきた問いは、台所に立ちながら何年も考えてきたことだった。「3年生になると、急に一人で本を読むようになるでしょう。そのとき、何を棚に置いておけばいいのかしら」。読書家のリリィと、甥っ子のソウタにいつも目線を合わせるルカーノが、それぞれの一冊を持ち寄った。三人で話すのは、これがほとんど初めてだ。

同じ3年生の話から

シズカ

私はまず『ちびまる子ちゃん』を薦めたいんです。日曜の夕方は、しつけの厳しい家でも、家族そろってテレビの前で笑っていました。何でもない会話がいちばんおもしろいと知ったのは、あの時間です。好み

『ちびまる子ちゃん』はさくらももこの漫画と、それを原作にしたテレビアニメ。1970年代の静岡県清水市で少女時代を過ごした作者の投影である小学3年生の「ちびまる子ちゃん」が、家族や友達と繰り広げる日常を描くコメディで、アニメはフジテレビ系列の日曜18時の枠で放送されている。事実[1]

リリィ

まる子も3年生なんですね。……それは強いです。自分と同じ学年の子が、宿題を後回しにして叱られているのを見ると、読んでいる側は少し安心するので。解釈

ルカーノ

Bellissimo。同じ年の主人公がいるっていうのは、鏡を一枚渡すみたいなものだね。それも、ちょっとゆがんで笑える鏡。解釈

一人で読める最初のシリーズ

シズカ

もう一つ、うちの子どもたちが代わる代わる読んでいたのが『かいけつゾロリ』です。正直に言うと、最初は少し迷いました。お行儀のよくない冗談もあって、私なら黙ってテレビを消すような場面もあるので。好み

『かいけつゾロリ』は原ゆたか作、ポプラ社の児童書シリーズで、1987年11月に第1作が出た。キツネのゾロリと、子分で双子のイノシシの兄弟イシシとノシシが修行の旅をする話で、二人は「ゾロリ以上におならが得意」と紹介されている。本文や台詞に難しい漢字は使われず振り仮名もあり、小学校低学年程度なら一人でも十分に読める内容とされる。事実[2]

リリィ

小学校の図書室で、ゾロリの棚はいつも隙間だらけでした。「一冊を最後まで自分で読んだ」の最初の一冊が、ゾロリだった友達も多かったです。解釈

シズカ

あらあら、やっぱり。冗談で笑って、最後のページまでたどり着けるなら、それは立派な一冊ですものね。私の好き嫌いで棚から下ろすのは、やめておきます。解釈

リリィの背伸びの一冊

リリィ

私は……『ハリー・ポッターと賢者の石』です。魔法の派手さより、知らない世界で学んで、友達と居場所を見つける話として読んでほしくて。祖母と図書館に通っていたころに出会いました。それから11歳の誕生日まで、手紙を本気で待っていたんです。好み

『ハリー・ポッターと賢者の石』はイギリスの作家J・K・ローリングが1997年に発表した子ども向けファンタジー小説で、日本では1999年に静山社から出た。1997年、イギリス版はネスレ・スマーティーズ賞の9歳から11歳の部で金メダルを受賞している。事実[3]

シズカ

でもリリィさん、3年生には少し長くないかしら。うちの子たちは、分厚い本を見ただけで棚に戻してしまう子もいましたよ。

リリィ

長いです。それは認めます。だから一人で読ませなくていいと思っています。最初の数章だけ、大人が読み聞かせをする。ハリーのところに手紙が届くあたりまで来たら、続きは自分で読みたくなる子が多いはずです。……あ、ごめんなさい。続けていいですか。根拠のある推測

ルカーノ

どうぞ、どうぞ。いまのノートの取り方、とてもいいね。「分かったこと」と「こうだったらいいな」で色を分けてる。職人の手帳みたいだ。

リリィ

……ありがとうございます。賞が9歳から11歳の部なので、3年生は入口の年なんです。「早い」じゃなくて「ちょうど扉の前」だと、私は考えています。解釈

シズカ

扉の前。いい言い方ね。では、うちでは寝る前に一章ずつ、私が読む係をやってみます。

ルカーノの色の洪水

ルカーノ

僕は映画を一本。『リメンバー・ミー』。画面の色が、とにかくすごいんだ。オレンジの花びら、夜の街の灯り。3年生の目に、一度この色を浴びせてあげたい。好み

『リメンバー・ミー』はピクサーの長編映画で、日本では2018年3月に公開された。死者の日の間、骸骨になった死者たちが陽気に暮らす死者の国を舞台に、ミュージシャンを夢見る12歳の少年ミゲルが、音楽を聴くことすら禁じられた家で育つところから物語が始まる。事実[4]

シズカ

骸骨……。うちの下の子は、怖がるかもしれません。

ルカーノ

そこはね、僕も甥っ子と観る前に心配した。でも骸骨たちは、陽気で、おしゃれなんだ。帽子の角度までこだわってる。怖いより先に「この人たち、服のセンスがいい」ってなる子もいるよ。解釈

リリィ

それと、亡くなった家族の話を、怖がらずにできるきっかけになるかもしれません。3年生くらいだと、おじいちゃんやおばあちゃんのことを急に聞いてくる時期なので。根拠のある推測

シズカ

……そうね。祖母に箸づかいを仕込まれた話、まだ子どもたちにちゃんとしていなかったわ。観たあとに、ごはんを食べながら話してみようかしら。

知らない町で働く13歳

リリィ

もう一本だけ。『魔女の宅急便』も入れたいです。魔法が使えても、知らない町で暮らすのは大変なんだって、この映画で知りました。好み

映画『魔女の宅急便』は角野栄子の同名の児童文学を原作にしたスタジオジブリ制作のアニメーション映画で、1989年に公開された。魔女の血を受け継ぐ13歳の女の子キキが、しきたりに従って黒猫のジジと旅立つ。事実[5]

ルカーノ

主人公が13歳なのがいいね。3年生から見ると、ちょうど「少し先のお姉さん」だ。解釈

読んだあとに何を話すか

リリィ

一つだけ、大人の方にお願いしたいことがあります。読み終わった子に、最初に「どこが好きだった?」と聞いてほしいんです。好み

シズカ

あら、内容を確かめるより先に?

リリィ

はい。……13歳のとき、友達が好きな映画の話をしているのを、原作との違いばかり言って遮ってしまったことがあって。詳しいことが、相手の楽しみを守るとは限らないって、そのとき知りました。3年生はとくに、正しく読めたかより、好きな場面を言えたかのほうが大事だと思います。解釈

ルカーノ

僕は、好きな場面の絵を一枚描いてもらうのもいいと思う。言葉にならなくても、色で残せば十分。甥っ子は映画のあと、好きだった服の形を夢中で説明してくれて、僕がそれをスケッチに起こした。好み

シズカ

うちでは、ごはんのときに話すのがいちばんでした。向かい合うより、並んでお茶碗を持っているほうが、子どもは話してくれるんです。まずは、ごはんにしましょう、ですね。好み

リリィ

……並んで、ですか。ノートに書いておきます。「調べて分かったこと」の色で。

最後に一人一本

シズカ

私は『ちびまる子ちゃん』です。同じ3年生の子が、うまくいかない日をそのまま笑って過ごしている。それを家族で一緒に観る時間ごと薦めたいです。好み

リリィ

私は『ハリー・ポッターと賢者の石』。最初の数章は誰かに読んでもらって、扉の前まで一緒に来てもらう。そこから先は、自分の足で。好み

ルカーノ

僕は『リメンバー・ミー』。観終わったら、家族のアルバムを一冊出してきてほしい。La vita è bella。好み

長さについては、最後まで少し意見が分かれた。シズカは「一人で読み切れる喜びを先に」と言い、リリィは「読んでもらえる時間があるうちに、長い一冊を」と言った。3年生は、そのどちらも選べる年なのかもしれない。解釈

3年生は「一人で読める」と「読んでもらえる」の両方がある最後のころ。短い一冊と長い一冊を、両方棚に置いておく。

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