アニメ・漫画の豆知識

『リメンバー・ミー』と死者の日の食卓

年に一度、亡くなった家族が会いに来る日。メキシコでは祭壇に故人の好物を供え、魂はその匂いを楽しむと考えられてきました。大家族の台所番シズカが、旅の途中で立ち寄った竜山と、ピクサーの映画と祭壇のごちそうの話をしました。

こんな人に
家族で観られるアニメ映画を探している人へ。死者が出てくる話は少し苦手、という人にも。
ネタバレの範囲
ネタバレなし 物語の出発点(遠い昔に夫が音楽家を目指して家を出たことから音楽禁止の掟ができ、靴屋になった一家の12歳のミゲルが死者の日を迎える)と、メキシコの死者の日の祭壇の習わしまで。死者の国での出来事と結末には触れません
話している人
シズカ × 竜山
主張の種類: 事実 作中の観察 根拠のある推測 解釈 好み
目次 全4節・約5分
  1. 音楽を禁じた靴屋の一家
  2. 年に一度の迎える日
  3. 匂いを届けるごちそう
  4. 台所番の観どころ

秋の夜、旅の途中の竜山さんがゲンさんの家に寄りました。夕ごはんのあと、子どもたちが選んだのはピクサーの映画。子どもたちが寝たあと、シズカは縁側にお茶を運び、竜山さんと映画の話の続きをしました。

音楽を禁じた靴屋の一家

『リメンバー・ミー』(原題:Coco)は、ピクサー・アニメーション・スタジオが製作したアメリカのコンピュータアニメーション映画です。監督はリー・アンクリッチさん。全米で2017年11月22日、日本で2018年3月16日に公開されました。原題の「Coco」は、主人公ミゲルの曽祖母ママ・ココの名前から取られています。事実[1]

遠い昔、メキシコのサンタ・セシリアに住むリヴェラ家の夫が、音楽家になる夢を追って家を出てしまいます。残された妻ママ・イメルダは音楽を嫌うようになり、家に「音楽禁止の掟」を立て、身につけた靴づくりで一人娘のママ・ココを育てました。靴づくりは掟とともに代々受け継がれ、一族は靴屋として栄えます。数十年後、ママ・ココのひ孫で12歳のミゲルは、靴屋を継ぐことを期待され、音楽は聴くことさえ禁じられていましたが、ひそかにミュージシャンを目指していました。事実[1]

竜山

家の掟か。ははは、奥方の家にもあったのう。

シズカ

ええ。お正月には、いまも家訓を読み上げます。そのときだけは、ゲンさんも子どもたちも正座です。だから、掟のある家の子の気持ちは、少しだけ分かる気がするんです。守ってきた人の気持ちも。好み

竜山

掟には、それを立てた人の事情がある。破る者にも事情がある。善し悪しは、そう簡単には決まらん。……と、これは先の話になるから、やめておこうかのう。解釈

シズカ

それに、音楽を禁じられた家で、歌に憧れる子の話でもあります。好きなものを隠して持っている子の顔は、親にはだいたい分かるものです。言わないでいてあげるのも、台所番の仕事のうちですけれど。解釈

竜山

俺も若いころは、好きな歌を口ずさみながら稽古をして、師匠によう叱られた。好きなものは、隠しても口から出るんじゃ。好み

年に一度の迎える日

物語は、年に一度、亡くなった先祖が家族に会いに来るという「死者の日」に動き出します。リヴェラ家でも先祖を迎える準備をしていて、家の祭壇には先祖の写真が飾られています。舞台の一つは、骸骨になった死者たちが陽気に暮らす、テーマパークのような死者の国。音楽も重要な役割を果たしていて、劇中に音楽が多く登場します。事実[1]

メキシコの死者の日は、死者を偲んで11月1日と2日に催される伝統行事です。家族や友人が集まり、故人への思いを語り合います。オフレンダと呼ばれる祭壇には、食べ物や飲み物、花、ろうそくなどが飾られ、故人の写真も置かれます。事実[2]

竜山

俺の郷里では、夏のお盆に迎え火を焚いた。海の向こうでも、帰ってくる家族のために家を整えるんじゃのう。解釈

シズカ

骸骨がたくさん出てくるので、末の子は最初こわがるかしらと思っていたんです。でも、みんなにぎやかで、色がきれいで。気がついたら、いちばん前で観ていました。作中の観察

匂いを届けるごちそう

祭壇には、故人が生前好きだった食べ物や飲み物を供えて、戻ってきた魂を歓迎します。死者の魂はその匂いだけを楽しみ、生きている人と再会できる喜びを分かち合う、と考えられています。供えるパン・デ・ムエルト(死者のパン)は、もてなしの心と大地の恵みを表し、形は頭蓋骨や骨をかたどったもの。マリーゴールドの一種の花センパスチトルは、その香りと華やかな色で、死者の魂を導く道しるべになるとされています。事実[2]

シズカ

匂いだけを楽しむ、というところで、思わず手が止まりました。台所に立つ者としては、食べてもらえない料理を作るのは、少しさびしい気がしていたんです。でも、匂いを届けるための料理だと思えば、話が変わります。湯気の立つうちに、いちばん好きだったものを。解釈

竜山

奥方なら、いつか自分には何を供えてほしい。

シズカ

あらあら、ずいぶん先の話を。……ゲンさんに、自分で釣った魚を焼いてもらいたいですね。さばくのは私のほうが速いので、少し時間はかかるでしょうけれど。焼き魚の匂いなら、どこにいても分かりますから。好み

台所番の観どころ

シズカ

初めて観る人には、祭壇の場面を少しゆっくり観てほしいです。何が並んでいるか、誰の写真がどこにあるか。家族の誰が、どんな顔で支度をしているか。食卓と同じで、並べ方にその家の歴史が出ます。好み

竜山

道場の神棚も同じじゃ。毎朝の水の替え方で、その日の稽古の気合いが分かる。解釈

シズカ

それから、靴屋さんの家だということも覚えておいてください。手を動かして家族を食べさせてきた家です。うちも、ゲンさんが海で獲って、私が台所でさばいて、それでずっとやってきました。仕事の手つきが家の誇りになるのは、どこの国でも同じなんですね。解釈

竜山

ははは、ええじゃないか。……ところで奥方、この映画は何度目じゃ。

シズカ

あらあら。……数えていません。観るたびに中身を忘れてしまうので、毎回、初めてのように観ています。それでも、祭壇の支度の場面だけは、ちゃんと覚えているんです。好み

メキシコの死者の日の祭壇には、故人の好物を供える。魂は、その匂いを楽しみに帰ってくると考えられている。

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