ゴウだ。『Ghost of Tsushima』の二周目の話をする。本編「仁之道」をクリアした人向けだ。結末にかかわるところは畳んである。壹岐の追加ストーリーには触れない。聞き手はエマ。同じ空手教室の黒帯だ。
二周目を始める前に
Sucker Punch Productionsが開発し、2020年7月17日に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。文永11年(1274年)の元と高麗の連合軍による日本侵攻、文永の役を物語の題材にしている。メインストーリーには「仁之道」という題名が付いている。事実[1]
ゴウがこのゲームの話するの、初めて聞く。Nice. 私はこっそり忍び込むのが好きなタイプ。ゴウは絶対、正面から名乗るでしょ。
……一周目は、そうだった。二周目は、正面から行く前と、行けなくなった後を見て歩いた。好み
小茂田浜の八十騎
物語は、対馬の小茂田浜に押し寄せた元の大船団を、わずか八十の武士団が迎え撃つところから始まる。対馬の地頭・志村の指揮の下で戦うが、絶望的な兵力差に圧倒され、志村と主人公の境井仁の二人を残して全滅する。事実[1]
一周目は、負け戦の始まりとしてしか見ていなかった。二周目は、浜に並んだ武士たちの横顔と、その中にいる伯父と甥の位置を見た。最初の場面で、二人は並んで同じ敵の方を向いている。作中の観察
立ち位置まで見るの? それ、何か意味があるの?
……それは、畳んだ中で話す。
境という一字
主人公の名字の漢字は、日本語ローカライズのスタッフが選んだという。国境を守るという立ち位置と、武士と冥人とのあいだで揺れているという心情から「境」の字が選ばれた。伯父の志村の名前のモチーフは、『七人の侍』に出演した俳優の志村喬だという。事実[1]
志村喬は『七人の侍』で、侍たちを率いる島田勘兵衛を演じた。事実[2]
これを知ってから二周目を始めた。侍たちを率いた男の名前を負った伯父と、二つの道の境に立つ甥。名前を知っているだけで、最初の浜辺の重さが変わる。解釈
名前に意味を入れておくの、私けっこう好き。Nice choice. 一周目で知りたかったな。
橋の上の一騎討ち
目を覚ました仁は、伯父を救うため単身で金田城に乗り込み、大手門の橋の上で敵将コトゥン・ハーンに挑むが敗れ、橋から突き落とされる。仁は、侍の道に則った正攻法では強大な元軍に勝てないことを悟る。事実[1]
あそこ、一周目は普通に悔しかった。チュートリアルで負けるやつだと思ってた。好み
……二周目は、負ける前の構えを見ろ。正面から向かい、正面から斬りかかる。あれが、迷いのないころの仁の型だ。あの橋から先、仁の戦い方は少しずつ変わっていく。最初の型を覚えておかないと、何が変わったのかが分からない。解釈
……ゴウって、負ける場面のほうをよく覚えてるよね。組手でも。
……勝った組手は、すぐ忘れる。
伯父の教えと父の記憶
仁は伯父から「虚に乗ずるは臆病の印」と教わっていて、敵の不意を突く戦い方に強い抵抗感を持っている。事実[1]
中盤まで中盤で明かされること押すと開きます
仁には、父が賊に殺されたとき、直前に手助けを求められていたのに、恐怖から見殺しにしてしまった過去がある。その後悔から、物怖じすることを強く嫌うようになった。二周目は、仁が正面から斬り込む場面ほど、何かを振り払っているように見えた。臆病を嫌う理由が、自分の中の臆病にある。事実[1]
一周目の序盤、仁が闇討ちをためらう場面を、俺は当然だと思って観た。二周目は、ためらう時間の長さを数えた。伯父の教えを守る時間でもあり、自分と戦う時間でもある。解釈
中盤まで中盤の展開押すと開きます
仁の乳母・百合は、仁と父親を時々取り違えて昔語りをする。仁はそのやり取りを通して、厳しく思い出される父の親としての素顔や、志村の厳格さに父が意外にもやや批判的だったことを知る。二周目は、境井家の屋形で百合と過ごす場面を、急がずに歩いてほしい。伯父の教えだけで育った男が、ここで初めて、別の大人の目を知る。事実[1]
手渡された道具
島で出会う仲間たちは、それぞれ何かを仁に手渡していく。一周目は、強くなるための道具として受け取っていた。二周目は、それを誰が作り、誰が渡したかを覚えて歩いた。作中の観察
中盤まで中盤の展開押すと開きます
ゆなの弟で鍛冶職人のたかは、仁のために鉤縄や冥人の鎧を作って戦いを支える。のちにたかは元兵に捕らえられ、仁の目の前で元の首領コトゥン・ハーンに斬られる。たかの遺作となった冥人の鎧は、ゆなから仁の手に渡る。二周目に、鉤縄で初めて城壁を越える場面を迎えると、その縄を誰が編んだかを知っている。足をかけるたびに、重さが違う。事実[1]
……道具に人がいるの、分かる。私も古い工具、捨てられないもん。誰からもらったかは、聞かないで。好み
……聞かない。
幼なじみとの最初の再会
仁の幼なじみで牢人の竜三は、菅笠衆の頭として、手下の牢人たちを飢えから救うために奔走している。二人はかつて長尾家の刀比べで手合わせしている。事実[1]
中盤まで中盤の展開押すと開きます
竜三は食料の保証と引き換えにコトゥンに寝返る。刀比べで仁に敗れたことで仕官の夢を断念し、牢人になったという過去もある。二周目に最初の再会の場面を観ると、軽口を叩く竜三の顔の奥に、自分に勝った男への複雑な思いと、飢えた手下を背負う頭としての計算が同時に見える。俺は、どちらの立場にも筋があると思った。だから、余計にこたえた。事実[1]
菅笠衆の頭って、仲間のご飯の心配ばっかりしてるよね。ゴウはああいう頭、どう見る?
……頭としては、筋が通っている。飢えた手下を背負う者の顔だ。だから二周目は、あいつの顔から目を離せなかった。解釈
二周目の終わりに
結末・正体結末押すと開きます
元の首領を討った後、仁は青海の湖畔の試合場で志村と再会する。二人は境井家の墓に参り、仁は失われたものに思いを馳せて歌を詠む。仁は愛刀を手に志村との勝負に臨み、志村を制する。志村は仁に、誉ある最期を遂げたいと頼む。彼の命を守るか、彼の誉を守るか、仁は選択を迫られる。小茂田浜で同じ方を向いて立っていた二人が、最後には向かい合って立つ。二周目の俺は、選ぶ前に、しばらくコントローラーを置いた。どちらを選んだかは書かない。どちらにも、筋がある。事実[1]
……私は、二周目のほうが手が重かった。好み
……ああ。二周目は、手が重くなる。それでいい。解釈
二周目は小茂田浜の最初の場面から。伯父と甥が並んで同じ敵を見ている数秒に、この物語の出発点がある。