『チェンソーマン』TVアニメ全12話の二周目。一周目は、デンジの暴れっぷりを観てた。二周目は、誰がどこで代金を払ってるかを数える。相手はガク。制度や仕組みの話になると止まらない人。中盤と結末は畳んであるから、最終話まで観てない人は開かないで。
借金の明細から始まる
TVアニメは2022年10月から12月まで放送された。製作委員会方式を使わず、MAPPA一社の出資で作られている。監督は中山竜さん、シリーズ構成・脚本は瀬古浩司さん。事実[1]
デンジは、死んだ父親が遺した借金の返済に追われていた。素直で単純な欲は、過酷な子ども時代と、普通に生きて普通に死ぬという、人並みの暮らしへの憧れから来ている。事実[7]
デンジが欲しがるもの、全部小さいんだよ。人並みの暮らしの範囲に収まってる。二周目はそこが痛い。欲が小さいのは、欲しがり方を教わってないから。解釈
食堂で皿を洗ってたころ、まかないの量で一日の機嫌が決まる人がいた。足りない職場では、望みが皿の大きさまで縮むんだ。解釈
中盤まで第1話の終わり押すと開きます
ゾンビの悪魔に殺されたデンジに、ポチタは自分の心臓を与える。代わりにデンジの夢を見せてほしい、と言って。この契約の値段は、夢。二周目の第1話は、借金で命を取られた子が、夢で命を買い戻す話に見える。事実[8]
第1話の題名
第1話の題は「犬とチェンソー」。事実[6]
題名の「犬」は、ポチタのことでもあり、これからのデンジのことでもあるんだと思う。解釈
マキマ役の楠木ともりさんは、最初は謎めいた雰囲気を演技に含ませようとしたが、監督からそのニュアンスは不要だと言われたという。楠木さん自身は、序盤ではデンジから見たマキマが多く描かれているからだと推測している。事実[3]
だから二周目は、マキマの声を平らなまま聞く。怪しさを足していないのに、怖い。解釈
中盤まで中盤の展開押すと開きます
マキマは内閣総理大臣と契約していて、何度殺されても死なず、彼女への攻撃は、無作為に選ばれた日本国民の誰かの病気や事故に変換される。事実[9]
これは僕の担当だね。制度というのは、代金をどこか見えない場所に回すものなんだ。町内会で言えば、誰が払ったか見えない決まりほど、誰も責任を取らない。決まりを作った人も、守られている人も……ごめん、またやった。解釈
いや、それでいい。見えないところで誰かが払ってる。そこなんだよ。解釈
福利厚生のある職場
公安所属のデビルハンターは、福利厚生や給与の面で充実している。そのかわり、民間では手に負えない事例を受け持つことが多く、負傷や殉職も多い。悪魔との契約には代償が要り、それは寿命や体の一部であることが多い。事実[10]
条件のいい職場ほど、危ない仕事が回ってくる。待遇は、その危なさの前払いなんだ。解釈
で、二周目は、その前払いを受け取った人たちの顔を見る。新人で小心者のコベニは、私には震えてるように見える。一周目は笑って観てた。解釈
結末・正体特異課襲撃押すと開きます
コベニは本当は大学に行きたかったが、優秀な兄を大学に行かせるために、嫌々デビルハンターになった。特異課襲撃で、同じ新人でバディの荒井は、コベニをかばって撃たれる。福利厚生の中身は、こういう人たちでできてる。事実[11]
その人が弱いことと、雑に扱っていいことは、別。コベニが震えて見えるのは、弱いからじゃなくて、この職場に対していちばん正しい反応をしてるからだと思う。解釈
……そうだね。震えない人のほうが、仕組みにとっては都合がいい。だから震える人の声は、記録に残りにくい。解釈
寿命で払う先輩
早川アキは、家族を銃の悪魔に殺され、復讐のためにデビルハンターになった。悪魔の力を何度も使ったせいで、残りの寿命が大きく削られている。事実[12]
第2話から第3話のアキとマキマのやりとりには、アニメ独自の表現が加えられている。批評では、その最たる例としてアキの日常の場面が挙げられている。事実[5]
アキの日常の場面。一周目は飛ばしかけた。二周目は、寿命を切り売りしてる人が、毎日ちゃんと暮らしてるのを観ることになる。解釈
仕組みの側から見ると、彼はいちばん使い勝手のいい職員だ。目的がはっきりしていて、自分の寿命を経費だと思っている。だから、止める人がいない。解釈
結末・正体終盤の展開押すと開きます
人物紹介では、アキはサムライソードとの戦いで狐の悪魔に見限られ、呪いの悪魔の力も寿命が減りすぎて使えなくなる、とされている。払えるものが減るほど、戦う手段が細っていく。借金を返すために働き続けるデンジの第1話と、同じ形をしてる。事実[13]
眼帯の先輩
姫野は、自分の右目を代償に幽霊の悪魔と契約している。これまでのバディ5人はみんな殉職していて、内心ではアキが公安を辞めて穏やかに生きることを望んでいる。もともと煙草が嫌いだったアキを、なし崩しに喫煙者にしたのも姫野。事実[14]
二周目は、アキが煙草をくわえるたびに姫野を思い出してほしい。辞めてほしい人に、自分の癖だけ残してる。筋が通ってないのが、人間っぽい。解釈
結末・正体特異課襲撃押すと開きます
特異課襲撃で、姫野はアキを守るために、幽霊の悪魔に自分のすべてを差し出して戦う。右目から始まった代償が、最後は全部になる。仕組みが付けた値札じゃなく、自分で決めた値段で払ってる。私はそこを、雑に扱われた死だとは思いたくない。事実[14]
同じ代償でも、払わされるのと、自分で払うのは違う。制度の帳簿には、どっちも同じ一行で書かれてしまうけどね。解釈
毎週ちがう終わり方
シリーズ構成の瀬古さんは、各話にテーマがあるかと、最後の引きをどうするかを重視したという。海外ドラマの影響だそうだ。事実[2]
エンディングテーマは全12話ですべて異なり、週替わりで使われた。週替わりのエンディングは監督の中山さんの提案で、エンディング映像も毎週ちがう。事実[4]
二周目は、各話の最後の一分とエンディングを、ひとまとまりで観てほしい。その回で誰が何を払ったかを知ってから観ると、映像の意味が変わる。解釈
第12話の題名は「日本刀VSチェンソー」。事実[6]
結末・正体結末(第12話)押すと開きます
この題を、一周目は笑った。二周目は、仕組みがまだ取ってくれない落とし前の話として、私には見えた。解釈
食堂でも、帳簿に載らない貸し借りがいちばん長く残った。……いや、今日は短く終わらせる。好み
えらい。
二周目は、デンジが借金に追われている日々から。望みの小ささが、この仕組みの値段表になってる。