アニメ・漫画の豆知識

『生きのびるために』には日本の題名が二つある

日本ではNetflixで『生きのびるために』として配信され、劇場では『ブレッドウィナー』として公開された一本です。翻訳と媒体の間を歩くノアが、週末の喫茶店の窓ぎわで、スイと二つの題名の話をしました。

こんな人に
重い題材だと聞いて、観るのをためらっている人へ。翻訳や題名の違いが気になる人にも。
ネタバレの範囲
ネタバレなし 物語の舞台と出発点(2001年のアフガニスタンで、父親が拘束された少女パヴァーナが主人公)と、日本での題名・配信と公開の経緯まで。その後の展開には触れません
話している人
ノア × スイ
主張の種類: 事実 作中の観察 根拠のある推測 解釈 好み
目次 全5節・約5分
  1. 同じ映画の二つの題名
  2. 本の題名とスタジオの一覧
  3. 物語の出発点
  4. あの海の映画と同じスタジオ
  5. 初めての人への入口

週末の喫茶店。窓ぎわのいつもの席で、ノアは同じ一冊を開いていました。隣の席のスイは、ノアの手帳の端に、二つの題名が並べて書いてあるのに気づきました。片方は日本語、もう片方はカタカナです。コーヒーが冷めるまで、二人は題名の話をしました。

同じ映画の二つの題名

スイ

その二つ、同じ映画?

ノア

うん、同じ映画。日本では、題名が二つあるの。

『生きのびるために』(英題 The Breadwinner)は、カートゥーン・サルーンのノラ・トゥーミー監督による2017年のアニメーション映画です。日本では『生きのびるために』というタイトルで2018年6月1日からNetflixで配信され、2019年12月20日からは『ブレッドウィナー』というタイトルで劇場公開されました。事実[1]

ノア

英語の題は、働いて家族を食べさせる人、くらいの意味の言葉だと私は受け取ってる。言葉の専門家じゃないから、そこは話半分で聞いてね。解釈

スイ

日本語の題のほうが、私には切実に聞こえる。息を止めているみたいな題。解釈

ノア

でしょう。英語の題は、その人の役目を言ってる。日本語の題は、その人がしなきゃいけないことを言ってる。どっちも合ってて、少しずつ違う方向を向いてる。解釈

本の題名とスタジオの一覧

原作はカナダの児童文学作家デボラ・エリスさんの小説です。日本語訳は『生きのびるために』(もりうちすみこ訳、さ・え・ら書房、2002年)。同じ訳者による訳書には、『さすらいの旅 ― 続・生きのびるために』や『希望の学校 : 新・生きのびるために』もあります。事実[2]

ノア

配信のときの題は、本の日本語訳と同じ。劇場のときは、英語の題をそのままカタカナにした。どっちを選ぶかで、映画の入口の形が変わるの。根拠のある推測

スイ

本で知っていた人には、前の題のほうが届く。知らない人には、聞き慣れない言葉のほうが目に留まる。……私は、そう受け取った。解釈

ノア

もう一つ気づいたのは、同じ訳者の別の本の題にも「生きのびるために」が残ってること。続、とか、新、とかがついて。日本語の読者にとっては、この言葉がひとつの看板になってたのかもしれない。……これは推測ね。根拠のある推測

スイ

看板の言葉を、映画の配信のときにもう一度掲げた。そう考えると、二つ目の題を選んだ日のことも、少し知りたくなる。解釈

ノア

そこは、私には分からない。決めた人に聞かないと。分からないことは、分からないまま手帳に置いておく。

制作したカートゥーン・サルーンはアイルランドのアニメーションスタジオで、1999年にポール・ヤングさん、トム・ムーアさん、ノラ・トゥーミーさんによって設立されました。スタジオの作品一覧では、この映画は「生きのびるために」「The Breadwinner」「An Saothraí」と、邦題・英題・原題の三つの名前で並んでいます。事実[3]

スイ

三つ目の名前は、読めない。

ノア

私も読めない。だから手帳には書き写すだけにした。似てるって言う前に、違うところを一行。今日は、その一行が三つ目の名前。好み

物語の出発点

舞台は2001年、ターリバーン政権下のアフガニスタン。主人公は、父親が娘に本を読ませた罪で拘束された少女パヴァーナです。事実[1]

スイ

本を読ませた罪。……その一行だけで、もう重い。

ノア

重いよ。つらい場面もある。私は、観る日を選んだほうがいいと思う。元気のある週末の昼とか。観終わったあとに、誰かと少し話せる日とか。好み

ノア

でもね、スタッフの一覧を見て、私は一つ気になったの。

スタッフ一覧には、「物語パート演出」と「物語パートアニメーションディレクター」という役割が並んでいます。事実[1]

ノア

「物語パート」という言葉があるってことは、この映画の中で、誰かが誰かにお話を語る時間があるのかもしれない。私はそう読んだ。どんな形で出てくるのかは、観て確かめてほしい。根拠のある推測

スイ

お話の係、か。ノアは、そういうところから観るんだね。

ノア

お話を聞く時間そのものが好きな子どもだった私は、その一行だけで観たくなった。好み

あの海の映画と同じスタジオ

ノア

同じスタジオの『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』も観直したの。ああいう映画を観るとき、私は手帳に地図を書きながら観る。好み

スイ

ノアは、地図が好きだね。

ノア

ふふ。知らない駅の名前を地図で探してた子どもだったから。

スイ

私は、誰が話して、誰が黙っているかを観ると思う。黙っている人のほうに、言えないことがある気がするから。好み

初めての人への入口

ノア

入口は、題名を二つとも覚えておくこと。人によって、どっちの名前で覚えているかが違うから、話すときに迷わない。好み

ノア

それから、つらいところで止めてもいい。続きは、また次の週末に。同じ席で、同じ一冊を開くみたいに。好み

スイ

少し考えてから観るね。観たら、また話そう。

スイ

観たあとに話す時間も、先に決めておく。来週の同じ時間、この席で。好み

ノア

うん。手帳に書いておく。今度は、違うところじゃなくて、同じところを一行。好み

『生きのびるために』と『ブレッドウィナー』は同じ映画。日本では配信と劇場で題名が違い、配信のときの題は原作の日本語訳と同じでした。

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