わたしの6選

『まどか☆マギカ』とひとりの部屋

大きな家で、目を合わせて話してくれる人がいなかった子どものころ。ひとりの部屋で観た魔法少女のアニメは、思っていたのとぜんぜん違うお話でした。アイドル候補生のカノンが、自分の原点になった6選の最後の一本を語ります。

こんな人に
可愛い絵柄の作品に、思いがけず心を持っていかれたことがある人へ。怖い場面があっても、頑張る女の子の物語なら観たい人にも。
ネタバレの範囲
ネタバレなし 『魔法少女まどか☆マギカ』第1話の始まりの設定(主人公が中学二年生であること)まで。物語の展開・登場人物の運命には触れません
話している人
カノン × テン
主張の種類: 事実 作中の観察 根拠のある推測 解釈 好み
目次 全9節・約5分
  1. 遠巻きにされていた子ども
  2. どんなお話か
  3. 好きな理由その一 誰かのために走る
  4. 好きな理由その二 ふしぎな景色
  5. 好きな理由その三 まどかちゃんのふつうさ
  6. 私の見方 怖くても可愛い
  7. 好きな理由その四 何気ない帰り道
  8. 苦手かもしれない人への入口
  9. ほかの6選と

6選の最後は『魔法少女まどか☆マギカ』です。可愛い魔法少女のお話だと思って観たら、ぜんぜん違いました。怖い場面も多いけれど、私は平気です。可愛い女の子が誰かのために頑張っていれば、それで大満足なんです。お話の行き先は、一つも書きません。

遠巻きにされていた子ども

私は大きな家の一人娘として育ちました。まわりの大人はみんな丁寧に頭を下げてくれるけれど、目を合わせて話してくれる人は一人もいなかった。広い家の中で、私の部屋だけがいつも静かでした。好み

その部屋で、古い録画を見つけて観たのがこのアニメです。タイトルの響きが可愛かったから、可愛い女の子たちが魔法で活躍するお話だと思っていました。ところが、観はじめたら怖い場面がたくさんあって。それなのに、画面から目が離せませんでした。好み

どんなお話か

公式サイトの第1話のあらすじでは、主人公の鹿目まどかは「大好きな家族がいて、親友がいて、時には笑い、時には泣く、そんな平和な日々を送る中学二年生」と紹介されています。事実[1]

公式サイトのスタッフ表では、原作はMagica Quartet、総監督は新房昭之さん、アニメーション制作はシャフトと紹介されています。事実[2]

ひとりの部屋で何度も観たので、オープニングの歌は、いまでも振りをつけて歌えます。……振りは私が勝手に考えたものです。声が低いので、元の高さでは歌えないんですけど、低いまま歌っても、あの曲はちゃんと歌える。それを教えてくれたのも、このアニメでした。好み

好きな理由その一 誰かのために走る

このアニメの女の子たちは、自分のためだけじゃなく、誰かのために走ります。大切な誰かのため。ひとりの部屋にいた私には、それがとてもまぶしかった。誰かと目を合わせて、その人のために何かをする。私が欲しかったものを、画面の中の女の子たちは全部持っているように見えました。解釈

好きな理由その二 ふしぎな景色

このアニメには、切り絵や落書きのような、見たことのない景色が出てきます。可愛いのか怖いのか分からない、ふしぎな色と形。子どもの私は、怖がるより先に「きれい」と思ってしまいました。ホラーや怖い作品が平気なのは、たぶんこのころからです。好み

好きな理由その三 まどかちゃんのふつうさ

まどかちゃんは、どこにでもいるふつうの女の子として描かれています。家族と朝ごはんを食べて、友だちと学校に行く。その「ふつう」が、私にはどんな魔法よりも特別に見えました。ふつうの女の子が、迷いながら一歩を踏み出そうとする。その姿を、私は何度も巻き戻して観ました。解釈

私の見方 怖くても可愛い

怖い場面があると、その作品を可愛いと言っていいのか迷う人もいると思います。でも私は、怖い場面の中で頑張る女の子は、やっぱり可愛いと思うんです。怖さに負けずに立っている姿そのものが、可愛い。私がアイドルとして舞台で転んでも「今のはリハーサル!」と立ち上がるのは、あの部屋で観た女の子たちの影響かもしれません。解釈

この記事を書いていたら、ライブハウスの前でよく昼寝をしている猫のテンちゃんが、いつのまにか足もとに来ていました。好み

テン

にゃ。

カノン

テンちゃん、髪はセットしたばっかりなの……あっ、もう、ツインテールに顔をうずめないで。……しょうがないなあ。あのころの私に、テンちゃんみたいなお客さんがいたらよかったのにね。

好きな理由その四 何気ない帰り道

まどかちゃんと友だちの、学校の行き帰りや教室での何気ない会話も好きです。冗談を言って、笑って、ちょっと心配して。子どものころの私には、そういう会話をする相手がいませんでした。だから、怖い場面よりも、その何気ない時間のほうが、ずっと胸に残っています。いま、ダンス教室の仲間と振りの話をしながら帰る道で、ふとあのアニメの帰り道を思い出すことがあります。やっと私にも、ああいう帰り道ができたんだな、と思います。好み

観終わったあと、しばらくひとりの部屋で、自分にも誰かのためにできることがあるだろうかと考えました。答えは、そのときは出ませんでした。いま、小さな舞台の上から客席の人と目を合わせて笑うとき、あのときの問いに、少しだけ答えられている気がします。好み

苦手かもしれない人への入口

怖い場面が苦手な人は、最初は明るい時間に観てください。そして、物語の行き先を予想するより、女の子たちが「誰のために」動いているかだけを追いかけてみてください。可愛い絵柄の奥にある、一人ひとりのまっすぐさが見えてきます。前情報は、なるべく入れずに観るのがおすすめです。好み

ほかの6選と

怖い始まりから元気な舞台へ向かう『ゾンビランドサガ』とは、怖さの中で頑張る女の子たちでつながっています。キャラを作って舞台に立つ『【推しの子】』とも、可愛さの裏にある覚悟でつながっています。そして、私が初めて「誰かのために頑張る女の子」に憧れたのは、このアニメでした。6選の最後に置いたのは、ここが私の始まりだからです。好み

怖い場面の中で頑張る女の子は、やっぱり可愛い。誰のために走っているかを見てあげてください。

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