薦めたい作品会議

もう一度頑張ると決めたときに薦めたい作品

何度でも舞台に戻る子たちの話か、持っていない側から始まる話か、準備ばかりの自分を閉じる話か。カノン、アカリ、ハルの三人が、二度目の一歩を踏み出す人に渡したい作品をぶつけ合った。三人とも熱いぶん、休む話をするのに少し時間がかかった。

こんな人に
一度やめたことを、もう一度始めると決めた人へ。部屋から出られなかった日を越えて、また外に出ようとしている人にも。
ネタバレの範囲
ネタバレなし どの作品も、第1話の設定と紹介文で分かる範囲まで。物語の展開と結末には触れません
話している人
カノン × アカリ × ハル
主張の種類: 事実 作中の観察 根拠のある推測 解釈 好み
目次 全7節・約6分
  1. カノンは何度でも舞台に戻る
  2. アカリは持っていない側から
  3. ハルは準備ばかりの自分を閉じる
  4. 前向きすぎる三人
  5. ハルがもう一冊足す
  6. 続けるための小さな工夫
  7. 最後に一人一本

昼の公園。ダンスの自主練を終えたカノンとアカリのところへ、ハルが差し入れの袋を提げてやってきた。ハルが言った。「一回やめたことを、もう一回やるって決めた人に、何を薦める?」。カノンが勢いよく手を挙げ、アカリは「先に何巻あるか言ってからね」と釘を刺した。

カノンは何度でも舞台に戻る

カノン

『ゾンビランドサガ』です! ライブで大失敗して、しばらく部屋から出られなかったころに観ました。ダンス教室の仲間が、毎日みたいに声をかけに来てくれて。そのあいだに観たのがこれでした。好み

『ゾンビランドサガ』はMAPPA、エイベックス・ピクチャーズ、Cygamesの共同企画によるテレビアニメで、佐賀県を舞台にアイドルとして活躍する7人の少女たちを描いたゾンビアニメ。ジャンルにはブラック・コメディとも書かれる。第1期は2018年10月から12月に全12話、第2期は2021年に全12話が放送された。事実[1]

アカリ

ゾンビ? もう一回頑張る話に、ゾンビ?

カノン

そうなんです! ゾンビなのに……いえ、ゾンビだからこそ、何回でも立ち上がるんです。転んでも「今のはリハーサル!」って言えばいいんだって、本気で思えました。解釈

ハル

それ、すごくいい。全12話が二期で24話か。週末で一気に行ける長さだね。

アカリ

長さを先に言うの、えらい。

アカリは持っていない側から

アカリ

私は『僕のヒーローアカデミア』。漫画は全42巻。長いけど、最初の一巻で決めていい。高1で読んで、持っていない側から始まる話に背中を押された。新しいクラスで、人見知りを隠して自分から先に話しかけた。好み

『僕のヒーローアカデミア』は堀越耕平の漫画で、『週刊少年ジャンプ』で2014年から2024年まで連載された。全42巻。世界総人口の約8割が超常能力「個性」を持つ社会で、「無個性」だった主人公・緑谷出久が最高のヒーローを目指して成長していく。事実[2]

ハル

もう一回頑張るって、前より何かが足りない状態から始めることが多いもんね。「持ってない」から始まる話は、たしかに効く。解釈

アカリ

でも、無理して読むのはなし。学校を移ったあと、自分で時間割を組むのにくじけかけた。そういう日は休んでいい。休んだ次の日に一歩目を出せれば、それで十分。好み

カノン

アカリさん、熱いのに、休んでいいって言うんですね……!

アカリ

稽古だって休む日があるから続くんだよ。礼が先、勝ち負けはあと。うちの師範の口ぐせ。解釈

ハルは準備ばかりの自分を閉じる

ハル

僕は『宇宙よりも遠い場所』。学び直しの時期に観た。旅の計画ばっかりノートに増えて、準備だけしてる自分に気づいたんだ。観た次の日、そのノートを閉じて、まず近所の山に一人で登った。好み

『宇宙よりも遠い場所』はマッドハウス制作のオリジナルテレビアニメで、2018年1月から3月まで全13話が放送された。群馬県に住む高校2年生の玉木マリ(キマリ)は、ある日、高校に入学したらしたいことを書き出した手帳を見つけ、高2になっても何もできていない自分に気づく。女子高生たちが南極を目指す物語。事実[3]

アカリ

高2で、まだ何もしてないって気づくところから? ……それ、ちょっと分かる。

ハル

でしょ。もう一回頑張るって決めた人って、たぶん一回目のときに作った計画のノートが、まだ机の中にある。それを開くか、閉じて歩き出すか。この作品は、その一歩目の話なんだ。解釈

前向きすぎる三人

ハル

じゃあ、三つとも「何回でも立ち上がれる」ってことで、まとめると……

カノン

待ってください、ハルさん。……私、部屋から出られなかったとき、「何回でも立ち上がれる」って言われるのが、いちばんつらかったんです。立ち上がれない自分が、悪いみたいで。好み

ハル

……そうか。ごめん。僕、また結論を急いでた。

カノン

ゾンビランドサガが効いたのは、みんな一回、完全に止まってるからだと思います。止まったところから、仲間と何とかする話。だから、止まっていた時間ごと持っていける気がしたんです。解釈

アカリ

それ、私も言いたかった。もう一回頑張るのは、止まってた時間をなかったことにすることじゃない。解釈

ハルがもう一冊足す

ハル

だったら、もう一冊。『風が強く吹いている』。運動経験のない人も混じった10人で、箱根駅伝を目指す話。最初から強い人ばっかりじゃないのがいい。好み

『風が強く吹いている』は三浦しをんの小説で、2006年に新潮社から刊行された。箱根駅伝を舞台にした作品で、2018年から2019年にはProduction I.G制作のテレビアニメが全23話で放送された。事実[4]

アカリ

小説なら一冊? じゃあ、私にも読めるかも。

続けるための小さな工夫

アカリ

私が人に薦めるとき、先に何巻あるか言うのは、途中でやめても責めないためでもあるんだよね。全部読まなくていい。最初の一巻で決めていい。好み

ハル

僕は机に白い付箋を一枚だけ貼ってる。昔は「もっと早く」って書いてあった。いまは何も書いてない。急がなくていいっていう印。好み

カノン

白い付箋……かっこいいです! 私は、好きなライブの予定をカレンダーに書いておきます。そこまでは頑張れる日を、先に作っておくんです。お金はいつもぎりぎりですけど。好み

アカリ

ぎりぎりなのは頑張らなくていいから。……でも、先に楽しみを置いておくのは分かる。稽古の帰りの大盛り、とか。好み

ハル

もう一回頑張るときって、一回目より、ゴールより手前に休む場所を作るのが大事なのかもね。僕、前は全部最短で片づけようとして息切れしたから。解釈

カノン

休む場所を先に作る。……それ、次のライブのリハーサルで試してみます!

アカリ

あと、もう一回始めるって決めた人に「前はなんでやめたの?」って聞くのは、なしね。私もまっすぐ聞いて、相手を困らせたことあるから。好み

ハル

……アカリがそれを言うの、ちょっと意外だ。

アカリ

言ったあとで「じゃあいいじゃん」って思えたのは、相手がちゃんと別のことを続けてたから。やめた理由より、いま何を続けてるかを聞けばいいんだよ。解釈

最後に一人一本

カノン

私は『ゾンビランドサガ』! 止まった時間ごと、仲間と舞台に戻る話です。よかろう……じゃなくて、ぜひ観てください!好み

アカリ

私は『僕のヒーローアカデミア』。全42巻。持ってない側から始めていい。疲れた日は休んでいい。好み

ハル

僕は『宇宙よりも遠い場所』。全13話。机の中のノートを、閉じる勇気の話として。……今日、どれくらい残ってる? 残ってない日は、一話目だけでいいから。好み

差し入れの袋の中身は、三人分のおにぎりだった。アカリが一つ目を食べ終えるころには、話はもう、来週の自主練の時間割に移っていた。止まっていた時間をどう扱うかについては、三人とも、さっきより少しだけ言葉を選ぶようになっていた。

もう一度頑張る人には「何回でも立てる」より「止まっていた時間ごと持っていける」話を渡す。

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