わたしの6選

『GATE』で見ていたのは帰り道だった

自衛隊が異世界への門をくぐるアニメを、同僚に勧められて観た。題名で身構えたトウゴの目が止まったのは、知らない土地で村の避難に付き添い、行くあてのない人を、自分たちの拠点まで連れて帰る所でした。

こんな人に
題名から勇ましいだけの話だと思って、手が止まっている人へ。人を助ける話、知らない土地で暮らしを立て直す話が好きな人にも。
ネタバレの範囲
ネタバレなし テレビアニメ『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の序盤(銀座に門が開き、偵察隊が村の避難に手を貸して、行くあてのない人たちを拠点へ連れて帰るところ)まで。龍との場面の中身と、その先の展開には触れません
話している人
トウゴ × ハヤテ
主張の種類: 事実 作中の観察 根拠のある推測 解釈 好み
目次 全6節・約5分
  1. 題名で身構えた
  2. 避難を決めた村に手を貸す
  3. 行くあてのない人を連れて帰る
  4. 俺の帰り道
  5. 序盤の村の場面から入った
  6. 全員で運ぶ話へ

6選の二本目は『GATE』。正式な題名は長くて、勇ましい言葉で終わる。題名だけ見ると、勇ましい話に見えると思う。俺が観ているのは、そこじゃない。知らない土地で人を助けて、全員で帰ろうとする所だ。話すのは序盤、助けた人たちを拠点に迎えるところまでにする。

題名で身構えた

自衛隊のころを知っている同僚に、ある日こう言われた。「お前の昔の職場が出てくるぞ」。題名を聞いて、正直、少し身構えた。勇ましいだけの話は、俺は苦手だ。それでも、観ると言った以上は観る。休みの日の朝、走ってから一話目を再生した。好み

原作は柳内たくみさんの小説だ。ある日、東京の銀座に、別の世界へつながる「門」が開く。その門の向こうへ、自衛隊が送り込まれる。事実[1]

主人公の伊丹耀司は、ファンタジーの物語に詳しい自衛官だ。門の向こうの土地を調べる偵察隊を、この男が率いることになる。事実[1]

最初の数話で、身構えていた肩が下りた。偵察隊がやるのは、知らない土地を歩いて、そこに住む人の顔を見て回ることだった。村に寄り、人に会い、話を聞く。俺の知っている仕事の、いちばん地味な所に近かった。好み

伊丹は、読んできた物語の知識を手がかりにして、見たことのない土地を読み解いていく。俺はそこが気に入った。俺にとっては、それが山の知識だ。雪の締まり方、沢の音、獣の通り道。知らない土地では、自分が持っている知識が、どんなものでも全部道具になる。好きで覚えたことが人を助ける場面は、観ていて気持ちがいい。解釈

避難を決めた村に手を貸す

森の中の集落を見に行った偵察隊は、生き残りを探して、エルフの娘を一人助け出す。巨大な龍が出たと知った近くの村の人たちは、村を離れることを決め、偵察隊はその避難に手を貸す。事実[1]

この流れを観て、いいな、と思った。危ないと分かった時点で、村ごと動く。助ける側は、その決断を急かさず、横について一緒に歩く。救助の現場でも、いちばん難しいのは、人が自分の家を離れると決めるまでの時間だ。そこに付き合える隊は、強い。解釈

それと、荷物だ。家を離れる人は、どうしても多く持とうとする。何を持って、何を置いていくか。俺は避難の場面になると、つい人の背中と荷台ばかり見てしまう。このアニメでも、そこばかり見ていた。好み

行くあてのない人を連れて帰る

避難のあと、行くあてのない人たちを、伊丹は自分たちの拠点のアルヌスへ連れて帰る。事実[1]

俺がこの作品でいちばん好きなのは、ここだ。助けて終わりにしない。連れて帰った人たちの、その先の暮らしまで引き受けようとする。避難の現場を知っている人間には、それがどれだけ重い決断か分かる。寝る場所、食べる物、明日の仕事。運ぶより、そっちのほうがずっと長い。伊丹は、その長いほうを引き受ける顔をしていた。俺には、そこがいちばん頼もしく見えた。派手な場面より、ああいう顔のほうが、ずっと記憶に残る。俺がずっと考えているのは、人はどこまで自分の足で帰ってこられるのか、ということだ。連れて帰るのは助ける側の仕事だが、その先の一歩は、本人の足で踏んでもらうしかない。その一歩が出るまで待てる隊を、俺はいい隊だと思う。解釈

ハヤテ

トウゴさんが観ているのは、運ぶところと、そのあとなんですね。僕は題名で、もっと激しい話だと思っていました。

トウゴ

激しい場面も、ちゃんとある。そこは先に言っておく。けど、俺の目が止まるのは、帰り道のほうだ。誰が遅れていて、誰が荷を持ちすぎているか。帰るまでが救助だ。全員でな。好み

ハヤテ

……帰り道、ですか。走り込みのときも、トウゴさん、帰りのほうが速いです。

トウゴ

ははっ、よく見てるな。帰りは、待ってる人の顔が浮かぶんだ。好み

俺の帰り道

自衛隊のあと、海の向こうで過ごした二年半のことは話さない。人を助ける側に立つと決めて帰ってきた、とだけ言っておく。好み

だから、この作品の自衛隊の描き方を、本物と比べて点をつける気はない。俺が受け取ったのは、知らない土地に入っていく人間が、何を頼りにするかという所だ。地図と、段取りと、隣を歩く仲間。それから、出会った人の顔を一人ずつ覚えようとする気持ち。それがあれば、どこへ行っても帰り道は作れる。解釈

序盤の村の場面から入った

人が傷つく場面も出てくる作品だ。苦手な人は、そこは先に知っておいたほうがいい。俺は、偵察隊が村に寄って人と話す序盤を軸にして観た。そこを軸にすると、派手な場面があっても、ずっと「誰を連れて帰るか」の話として観られた。俺にはそれが合っていた。二周目を観るなら、今度は村の人たちの顔を一人ずつ覚えながら観たい。好み

観終わった次の朝、ハヤテと走った。いつもの坂の上で振り返って、あいつが上がってくるのを待った。待つのは嫌いじゃない。息が整うまで、黙って横に立つ。全員がそろってから、また走り出す。それだけのことだが、あのアニメを観たあとだと、少しだけ意味が違って見えた。好み

全員で運ぶ話へ

四本目の『弱虫ペダル』は、チームのために脚を使い切る話だ。救助も同じで、一人じゃ誰も運べない。『GATE』で好きになったのは、運んだあとの話のほうだった。運ぶ前と、運ぶ途中と、運んだあと。6選を並べると、俺はどうやら、その三つを順番に観ているらしい。好み

助けて終わりにしない。連れて帰った人が、自分の足で一歩を踏むまで待つ。そこまでが、俺の思う帰り道だ。

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