台詞の前の、ほんの短い息。アニメを観ていて、その一瞬に心を持っていかれることがあります。今回は音を集めるイロハと、言わなかった気持ちを読むスイが、声が作品に入るまでの順番を、制作会社の公式の説明でたどります。
ふるさとの幻術だと、絵と声はいっしょに出てくるんです。人間界のアニメは、どちらが先なんですか?
声は映像をつないだあとに
台詞の前に、すっと息を吸う音が入ることがあるでしょう。あれを聞くと、絵の中の人が本当にそこにいる気がするの。あの声って、どの段階で録っているんだろう。
絵が先なのか、声が先なのか。私も、考えたことがなかった。
バンダイナムコフィルムワークスの採用サイトでは、アニメができるまでの工程を、撮影、オフライン編集、アフレコ(編集)、ダビング(BGM・SE)、オンライン編集の順に並べています。撮影した映像の長さや順序を調整しながらカットをつなぎ、そのあとのアフレコで登場人物の声を録音し、さらに映像にBGMや挿入歌、効果音などの音をつけていく、と説明されています。事実[1]
セブン・アークスの採用サイトでも、ポストプロダクションの工程として、撮影した各素材を編集によってつなぎ合わせ、その後に声優によるセリフの吹き込みやBGM・効果音の追加を行う、と紹介しています。事実[2]
映像がつながってから声が入って、そのあとに音楽や効果音が重なる。音は、何段階にも分けて画面に積もっていくんだね。根拠のある推測
それって、ふるさとの吟遊詩人が、先に絵巻を広げておいて、あとから歌をのせるみたいなものですか?
近いけど、ここが違うの。吟遊詩人は、その晩のお客さんを見て歌を長くも短くもできるでしょう。アニメの声は、もっと前に決めた長さに合わせて入るみたい。根拠のある推測
台詞の長さはもっと前に決まっている
同じバンダイナムコフィルムワークスの説明では、絵コンテの段階で、脚本をもとに画面構成、カメラワーク、台詞、効果音、秒数、カット割りなど、話数の構成に必要な要素を視覚化する、と書かれています。事実[3]
台詞と秒数が、絵コンテのときにもう書かれているんだね。じゃあ、声を録るときには、その台詞に使える時間がだいたい決まっている、ってことなのかな。根拠のある推測
そう考えると、決められた長さのなかで、息の一瞬や言いよどむ間を入れているのかもしれない。狭い器に、どれだけ気持ちを注げるか、みたいな。解釈
音の演出は誰が見ている?
東映アニメーションの採用サイトでは、同社は演出の権限・自由度が高く、各話の方向性は演出が中心となって進めると説明したうえで、音響演出(オーディオディレクション)についても演出が担当する、と書いています。事実[4]
絵の流れを決めた人が、音のことまで見ている。だから、絵と声の呼吸がそろって聞こえるのかな。根拠のある推測
私は、声が入らない時間のほうが気になる。誰も話さないあいだも、そこに何を流すか、流さないかを、誰かが選んでいるんだね。解釈
……そうか。私は声と音が「ある」ところばかり聞いていたけれど、スイは「ない」ところを聞いているんだ。
息の音に耳を澄ます
返事をしなかった人がいる場面で、ほんの少しだけ息の音が聞こえたら。私はそれを、その人の返事だと受け取ってしまうかもしれない。解釈
それ、すごくわかる。台詞を追わずに、息と足音だけを聞いてみると、もう一つの場面が見えることがあるよ。好み
息の音まで、誰かが選んで置いているんですね。シオルも次は、目を閉じて聞いてみます。
アニメの声は映像をつないだあとに録られ、そのあとで音楽や効果音が重なる。台詞も秒数も絵コンテの段階で書きこまれていて、声はその時間のなかに息まで注いでいる。