夜中にミコと同じ配信を観ながら、チャットで話した内容をまとめた。『オッドタクシー』TVシリーズを最終話まで観た人向け。まだの人は引き返して第1話へ。中盤と結末に触れるところは、押さないと開かない箱に入れてある。箱の外では、第1話で分かることより先には触れない。
会話でできたアニメ
TVアニメは2021年4月から6月まで放送された。タクシードライバーの小戸川を中心にした群像劇で、現代の東京らしき街が舞台なのに、登場するキャラクターは全員、擬人化した動物の姿をしている。事実[1]
脚本の此元和津也は、小戸川を主人公にして、さまざまな登場人物が車内での会話劇によって事件の本筋にたどり着く話に仕上げた。収録はプレスコ形式で、実写ドラマのような自然な会話を取りたいという監督の木下麦の考えがあった。事実[2]
先に声を録って、あとから絵を合わせる。だからこのアニメの会話は、間がほんとうに会話の間になっている。二周目は、目を閉じて声だけ聞く時間を作ってほしい。誰がいつ、どこで言葉を濁しているか。字幕をオンにすると、さらに見える。解釈
いや、それは賛成。一周目は絵の動物に気を取られて、半分くらい台詞を流してた。二周目は台詞のほうが本体だった。好み
第1話の題名と最終話の題名
第1話のサブタイトルは「変わり者の運転手」。演出は山井紗也香、作画監督に大野美葉の名前がある。事実[3]
結末・正体結末(第13話)押すと開きます
最終話の第13話のサブタイトルは「どちらまで?」。演出は第1話と同じ山井紗也香で、作画監督にも大野美葉の名前がある。
タクシーの運転手が客に最初にかける言葉が、最後の題になっている。そして物語は、小戸川のタクシーに、ある人物が乗り込む場面で幕を閉じる。第1話の題は運転手の紹介で、最終話の題は客への問いかけ。二周目の第1話は、最終話の最後の場面の続きを待ちながら観ることになる。事実[3]
ラジオと落語
小戸川の日課は寝る前に落語を聞くことで、趣味は仕事中のラジオ。乗客や友人との会話では、冷静にツッコミを入れることが多い。事実[4]
どちらも声だけで成り立つもの。絵のない話を毎日聞いている人が、車内で客の話を聞いている。二周目は、小戸川の返しに注目してほしい。相手の長い話に、短いツッコミを一つだけ置いて、話を前に進める。俺は口ではほぼ話さないから、あの短い返しの技術はうらやましい。解釈
クロ、口だと「……ん」と「了解」しか言わないもんね。……いや、悪口じゃない。それで会話が回るのがすごいって話。
ドライブレコーダーの中身
小戸川はタクシーに、車内を撮影できるタイプのドライブレコーダーを付けている。そのデータをめぐって事件に巻き込まれていく。事実[4]
俺の仕事でいちばん大事なのはログ。何が起きたかは、記録が残っていれば後から確かめられる。この作品は、記録がひとつの大きな鍵になっている。二周目は、車内のカメラがどの角度から乗客を見ているかを気にしてほしい。俺は二周目、車内の場面が来るたびに、カメラの位置を確かめていた。解釈
動物の姿で見分ける特技
小戸川には、相手が何の動物なのかをいったん認識できれば、以降は人混みからでもすぐにその人物を見分けられる特技がある。事実[4]
一周目の俺は、これを動物アニメならではの小ネタとして笑って観た。小戸川にとって、他人はまず何の動物か、で認識される。顔ではなく、アイコンで人を見分けている感じがして、俺がチャットで人を覚えるやり方に近いと思った。名前より先に、アイコンの形を覚える。解釈
結末・正体結末と正体(第13話)押すと開きます
小戸川は、目で見えているものを正しく認識できない「視覚失認」を抱えていて、自分を含めた人間がすべて、さまざまな動物に見えていた。最終話、救急車の中で目覚めた小戸川には、自分や周囲が動物ではなく人間に見えるようになっている。
この作品の動物の姿は、絵柄の選択ではなく、小戸川の見ている世界そのものだった。だから二周目は、全編が小戸川の目を通した映像だと思って観ることになる。小戸川がいない場面の動物の姿は、何を意味しているのか。俺はそこを、一時停止しながら考え続けた。事実[5]
そこなんだよ。一周目は「動物かわいい」で観てた自分を殴りたい。……いや、殴らない。かわいいのも本当だから。好み
仮面をつけて歌う人
アイドルグループ「ミステリーキッス」の市村しほと三矢ユキは、アイドルとして活動するときに仮面を着用している。事実[7]
顔を隠して表に立つ人に、俺は甘い。一周目は、仮面はただの衣装だと思っていた。二周目も、ステージの場面になると、つい仮面の目元ばかり見てしまう。素顔より、隠し方のほうにその人が出ることがある。好み
結末・正体結末と正体(第13話)押すと開きます
三矢ユキとして活動していたのは、和田垣さくらという別の人物だった。そして最後に小戸川のタクシーに乗り込むのが、その和田垣さくらだ。
仮面は、顔を隠すための衣装であると同時に、入れ替わりを隠す道具でもあった。二周目に仮面のステージ映像を観ると、同じ衣装の中にいる人の気配が違って見える。顔を隠すことの優しさばかり考えてきた俺には、反対側から刺さる話だった。事実[8]
スマホのゲームと消えたデータ
第4話の主役になる田中一は、ゲーム会社に勤める会社員で、スマートフォンゲーム「ズーロジカルガーデン」、通称ズーデンのヘビーユーザーとして描かれる。事実[6]
中盤まで中盤の展開(第4話〜)押すと開きます
田中は、レアキャラを手に入れたのと同時に小戸川のタクシーと接触し、その拍子にスマホを溝に落としてズーデンのデータが初期化されてしまう。そこから小戸川を恨むようになる。
ゲームのデータが消える、というのは、遊ぶ側には笑いごとではない。積み上げた時間の記録が一瞬でなくなる。二周目に第4話を観ると、田中の怒りがどこから来ているのか、少しだけ分かってしまうのがつらい。もちろん、そのあとの行動は肯定できない。事実[6]
結末・正体結末(第13話)押すと開きます
最終話の田中は、憑き物が落ちたような表情で、ズーデンのアプリを削除する。
消えたデータから始まった人が、自分の手でアプリを消して終わる。二周目は第4話と最終話の田中の顔を、続けて観てほしい。事実[6]
クロ、データ消えたことある? ……いや、答えなくていい。詮索しない決まりだった。
……(猫のスタンプ)。バックアップは三か所に取ってる。それだけ言っとく。
二周目は第1話の題名を読んだら、目を閉じて最初の会話を声だけで聞く。どの会話も、乗った人の行き先から始まる。