アニメ『メジャー』の第1シリーズ、保育園編とリトルリーグ編を最後まで観た人向けの、二周目の話です。展開にかかわるところは畳んであるから、まだの人は開かんといてな。聞き手はハル。昼のバッティングセンターで知り合うて、何か挑戦する前には二人で打ちに行く仲です。
今日の気分はどう? 僕は、ちょっと打ちたい気分。
奇遇やな、私は投げたい気分や。ほな今日は、マウンドの話からしよか。
観直す前の確認
アニメはNHK教育テレビで放送され、第1シリーズは2004年11月13日から2005年5月21日までの全26話。監督はカサヰケンイチさん、シリーズ構成は土屋理敬さん、アニメーション制作はスタジオ雲雀。シリーズ全体は全154話、足掛け6年にわたって放送された。事実[1]
第1シリーズは、第1話から第6話が保育園(幼稚園)編、第7話の「本田吾郎、9歳!」からがリトルリーグ編。第1話の題は「吾郎の夢、おとさんの夢」。事実[1]
一周目の私は、この題の「吾郎の夢」のほうしか読んでへんかった。二周目は「おとさんの夢」のほうが気になる。夢が二つ並んでる。一つの物語に、最初から二人ぶんの夢が乗ってるんや。解釈
背番号を覚えておく
吾郎の父・本田茂治は、プロ野球チーム(アニメ版では横浜ブルーオーシャンズ)の選手で背番号は44。茂治の親友でチームのエース、茂野英毅の背番号は17。リトルリーグ編の三船リトルで、吾郎は投手、右投右打、背番号1。事実[2]
数字を覚えるのは苦手やけど、背番号だけは昔から一発で覚えられる。二周目は、この三つの数字を頭の片隅に置いて観てほしい。誰の背中に何番が付いてるか。誰がその番号を見てるか。野球もんの背番号は、ほとんど名前と同じくらいしゃべるねん。好み
保育園の先生
桃子は、アニメ版では吾郎の通う保育園の保育士。茂治が彼女にプロポーズした決め手は、「何になってもいいが、思いやりのある、友達を大事にする人間に育って欲しい」という子育ての基準が、吾郎の亡くなった実母・千秋とまったく同じだったこと、とされている。事実[2]
これ、二周目のいちばんの手がかりやと思う。思いやりのある、友達を大事にする人間。一周目の私は吾郎くんを、とにかく負けず嫌いの暴れん坊として観てた。まねしすぎて監督に叱られたくらいや。二周目は、吾郎が友達を選ぶ場面を探してほしい。暴れん坊の真ん中に、ちゃんとこの基準が通ってる。解釈
僕、二周目は桃子さんばっかり見てた。……うちも母さんが一人で育ててくれたから。決めたことを、決めたまま続ける人の顔って、ちょっと分かるんだ。好み
そうか。ハルがそう言うと、桃子さんの台詞が全部ちがう重さで聞こえてくるな。
結末・正体序盤の出来事(第6話まで)押すと開きます
茂治は、肘を痛めて引退を考えたあと、英毅の勧めで野手に転向する。そしてギブソンとの初めての勝負でホームランを打つものの、次の打席でギブソンの球が頭部を直撃し、帰宅後に亡くなる。桃子は茂治のプロポーズを受けて婚約した矢先のことで、自らの意志で吾郎を引き取って育てる。第6話の題は「さよなら・・・・」。
二周目に第1話から観ると、茂治が吾郎とキャッチボールする時間が、全部数えられる時間に見えてしまう。私はここで一回止めて、外に出て壁当てをした。子どものころ、負けた日にやってたのと同じように。事実[2]
マウンドの後ろの大人たち
リトルリーグ編のサブタイトルには、第11話「おとさんのいたチーム」、第12話「ギブソンからの招待状」、第19話「かーさんの幸せ」が並ぶ。事実[1]
一周目は、試合の回と試合のない回で分けて観てた。試合のない回は、正直ちょっと早送りしたなった。二周目は逆や。試合のない回に、吾郎の後ろにいる大人たちの事情が全部詰まってる。マウンドに立つのは一人やけど、その一人を立たせてる人が何人もおる。私の研究テーマの「エースは負けた日にどうやってマウンドに戻るのか」の答えは、たぶん試合のない回のほうにある。解釈
中盤まで中盤の展開(第19話まで)押すと開きます
英毅は、引退寸前だった茂治に打者への転向を勧めたことが、結果として彼を死に追いやったと自分を責めていて、その息子の吾郎を何かと気にかけている。吾郎が三船リトルの仲間と別れてまで、茂治がいた横浜リトルに入ろうとしたときには、桃子から相談を受けて吾郎を諭す。ギブソンもまた、贖罪として吾郎の成長を見守る。そして英毅は、吾郎が小学4年のときに桃子と再婚し、吾郎の義父になる。
二周目は、英毅が画面の端に立ってるときの顔を見てほしい。一周目はただの優しいおじさんやった。事情を知ってから観ると、優しさの一つ一つに遠慮がまじってる。そして吾郎が三船を選ぶ場面。おとさんのチームより、いまの仲間を選ぶ。桃子さんの子育ての基準が、ここで吾郎の選び方に出てるように私には見える。事実[2]
主人公って、自分の力で立ってるように見えるけど、後ろに立ってる人の数を数えると全然違うね。解釈
せやろ。バッターボックスから見えるのはピッチャーだけやけど、ベンチには全員おるんよ。
小さなチームと捕手
三船リトルは、リトルリーグ編では野球人口の減少で存続が危ぶまれるほどのチームとして描かれる。捕手の小森は、小柄ながら抜群の野球センスを持ち、吾郎の速球を受けられる選手。事実[2]
エースで4番やった私が言うのもなんやけど、ピッチャーは捕ってくれる人がおらんと、ただの壁当てや。二周目は小森くんのミットの位置を見てほしい。吾郎くんが荒れてるとき、ミットがどう動くか。一周目には見えへんかった会話が、そこにある。解釈
結末・正体結末(第26話まで)押すと開きます
最後の大きな試合は、県内屈指の強豪・横浜リトルとの対戦で、第23話から描かれる。横浜リトルの捕手は、吾郎の最初の友達でもある佐藤寿也。小森は戸塚西リトル戦で左手を痛めていて、横浜リトル戦では、自分の怪我でチームに迷惑をかけていると負い目を感じながら、勝利を捧げたい一心で同点の適時打を放つ。三船リトルは、その横浜リトルを打ち破る。第26話の題は「さよならは言わない」。
二周目に観ると、いちばん泣けるのは、捕手どうしの話やった。マウンドの吾郎を、両側から捕手が見てる。私はこの試合を、ピッチャーの話やなくて、受ける人の話として観直した。事実[2]
元ピッチャーとしての一言
最後に、元ピッチャーとしてどうしても言いたいのが、第1シリーズの吾郎が右投げやということ。二周目は、吾郎がどんなふうに右腕を使ってるか、どれだけ投げてるか、数えながら観てほしい。解釈
結末・正体その後のシリーズの設定押すと開きます
のちに吾郎は右肩を壊し、英毅に左投げへの転向を勧められる。
これを知ってから第1シリーズを観ると、少年の吾郎が無茶をするたびに、私の肩まで痛なってくる。負けず嫌いは武器やけど、使い方を間違えたら自分を削る。子どものころの私に、誰か言うといてほしかったわ。……まあ、言われても聞かんかったやろけど。事実[2]
二周目は第1話の題を最後まで読んでから再生する。吾郎の夢の横に、もう一つの夢がずっと並んで走ってる。