二周目

『デジモンアドベンチャー』二周目は曲を数える

一周目は進化の場面で拳を握ってた。二周目、俺が数えたのは、どの回で何の曲が鳴って、どの回で鳴らなかったかだ。日付と紋章と、ずっと置きっぱなしの乗り物。知らない世界を進む七人の夏を、耳と目で読み直す。聞き役はアカリ。

この記事は結末までのネタバレを含みます

範囲TVアニメ『デジモンアドベンチャー』(1999〜2000年・全54話)の最終話まで(畳んだ部分のみ)

観終えた人が二周目をもっと楽しむための記事です。中盤の展開と、結末・正体のくわしいところは、押すと開く部分に分けてあります。

こんな人に
『デジモンアドベンチャー』を最終話まで観た人へ。二周目は、日付と、紋章の光と、鳴る曲と鳴らない曲を追ってほしい。
ネタバレの範囲
結末まで触れます TVアニメ『デジモンアドベンチャー』(1999〜2000年・全54話)の最終話まで(畳んだ部分のみ)
話している人
ジン × アカリ
主張の種類: 事実 作中の観察 根拠のある推測 解釈 好み
目次 全5節・約7分
  1. 8月1日という日付
  2. 紋章が光らないとき
  3. 鳴る曲と鳴らない曲
  4. 二つの世界の時計
  5. 放っておかれた乗り物

ジンだ。『デジモンアドベンチャー』を最終話まで観た奴向けの、二周目の話をする。展開に触れるところは、押さないと開かない箱に畳んである。聞き役はアカリ。不良漫画の話ができる数少ない相手だが、今日は相棒の話だ。

8月1日という日付

1999年3月7日から2000年3月26日まで放送された、デジモンシリーズのテレビアニメ第1作。全54話で、シリーズディレクターは角銅博之。事実[1]

物語は1999年8月1日に始まる。子供会のサマーキャンプに来ていた八神太一、武之内空、石田ヤマト、泉光子郎、太刀川ミミ、城戸丈、高石タケルの7人が、謎の機械の力で未知の場所に吸い込まれ、デジモンたちと出会う。長くて短いひと夏の冒険の始まりだ。事実[2]

二周目に放送の記録を見て、俺は手が止まった。第21話「コロモン東京大激突!」の放送日が、ちょうど8月1日。演出は細田守だ。作品の解説でも、子どもたちの過去や選ばれた理由、光が丘の謎といった伏線が随所に張られていたとされている。事実[3]

二周目の入り口は、第1話と第21話を並べて観ることだ。8月1日に始まった夏と、放送日がちょうど8月1日の回。始まりの日と、真ん中の日。それ以上の意味づけは、解説に書いてある範囲を超えて言う気はねえ。ただ、並べると目盛りが見える。俺は目盛りが見えると、曲のテンポを数えるみたいに安心する。解釈

アカリ

物語の中の日付と、放送された日付が重なってたってこと? それ、一周目で気づいた人いるのかな。

ジン

狙ったかどうかは知らねえ。ただ、二周目は第21話を夏休みの真ん中に観るといい。光が丘って地名が出てきたら、耳を立てろ。解釈

紋章が光らないとき

一周目の俺は、強くなる話だと思って観てた。二周目は、強くなりたがる気持ちそのものが試される話に見える。勢いで突っ込んで派手に転ぶのは、俺もよくやる。だから太一の焦りは他人事じゃねえ。解釈

一周目は、紋章が光らない場面を、ただ待たされる時間だと思って観てた。二周目は、光らない場面と、光りかけた場面で、子どもたちがどんな顔をしてるかを見る。ギターで言えば、音が出ねえときは腕のせいじゃなく、合わせ方が違うことが多い。紋章も、そういうものに見える。解釈

中盤まで紋章と暗黒進化のこと押すと開きます

紋章は、子どもたちそれぞれの心の特質を元に作られたアイテムで、心が未熟なうちは輝かない。心の特質に反する使い方をすると、暗黒進化へと導かれてしまう。第16話の題名は「暗黒進化! スカルグレイモン」。事実[4]

結末・正体最終話で語られること押すと開きます

最終話で、ゲンナイは暗黒進化について「進化に正しいも間違いもない」と語り、間違った目的で進化させたのは子どもたちの側だったと言う。

二周目に第16話へ戻ると、あの場面はデジモンの暴走じゃなくて、相棒を信じる前に力を欲しがった人間の側の失敗に見えてくる。強くなる理由は、仲間であってほしい。俺はそう読んだ。

二周目の見どころは、進化の瞬間より、その直前の子どもの顔だ。何を欲しがってるかが、あそこにいちばん出る。俺は音を出す前の指の止まり方を見る癖があるから、余計にそう思うのかもしれねえ。事実[4]

鳴る曲と鳴らない曲

挿入歌「brave heart」の使われ方を話数ごとに記録で追うと、ある回だけ名前が抜けている。どの回かは畳んである。先に自分の耳で当てたい奴は、開けずに、曲が鳴る場面を気にして聴いてみてくれ。作中の観察

ジン

客席が静かになると、逆に前のめりになるだろ。ライブでギターが抜ける瞬間と同じだ。曲が鳴らない回があるなら、そういう聴き方ができるかもしれねえ。これは比喩だ。……うまいこと言ったつもりはねえ。解釈

アカリ

静かな方が、次に鳴る音を待っちゃうってこと? それなら曲が鳴らない回の前後も、聴き比べたくなる。解釈

アカリ

曲が鳴らないのが演出、って考えたことなかった。試合で応援が止まる瞬間みたいなものかな。解釈

中盤まで挿入歌の記録押すと開きます

挿入歌「brave heart」が使われたのは第1話から第44話と、第46話から第54話。第45話の題名は「究極体激突! ウォーグレイモンVSメタルガルルモン」。「Seven」は第14・28・44話で使われ、第44話はアコースティックバージョンだった。

記録の上で、第45話だけ「brave heart」の名前がない。題名どおり、相棒どうしがぶつかる回だ。「brave heart」が鳴らないことで、あの回が何の回なのかを音で言ってる。……と、俺には聴こえる。理由が書いてあるわけじゃねえ。だから二周目は自分の耳で確かめてくれ。事実[5]

結末・正体最後の二話の音押すと開きます

オープニングの「Butter-Fly」は、第54話では挿入歌として使われた。第53話と第54話にはピアノ・バージョンも使われ、第54話ではインストのみだった。

毎週聴いてた曲が、最後の二話ではピアノの音で鳴る。第54話では、インストだけになる。俺はギターでこの曲を弾くが、ピアノで鳴らされると、別れの曲にしか聴こえねえ。……別に、泣いてはいない。

二周目は、第53話と第54話を続けて観て、音がどこで薄くなるかを耳で追ってほしい。第54話で、歌のないまま曲が鳴ってるあいだ、画面の子どもたちは何を見てるか。そこまで見て、やっと一曲分だ。事実[5]

二つの世界の時計

一周目は、冒険が長いのに夏休みが終わらないのが不思議だった。二周目は、時計の話をずっと頭に置いて観てほしい。作中の観察

具体的には、冒険の途中で出てくる日付や時間の言い方を拾っていく。一周目は流した台詞が、二周目は目盛りに見える。起点は、さっきの第21話の8月1日にするといい。数えるのが面倒なら、夏の暑さが画面にどれだけ残ってるかだけでも構わねえ。作中の観察

中盤まで中盤で明かされる仲間のこと押すと開きます

ヒカリのパートナー・テイルモンは、元々はヴァンデモンの手下だった。第34話の題名は「運命の絆! テイルモン」。

敵の側にいた奴が相棒になる。俺はこういう筋の通し方に弱い。二周目は、テイルモンが初めて出てくる回から、誰の顔を見てるかを追ってくれ。

二周目に楽しいのは、パートナーの顔つきだ。あいつが誰の隣で、どの向きに立ってるかを見てると、言葉より先に答えが出てる。俺は台詞より立ち位置を信じる。事実[8]

結末・正体最後の敵と時間押すと開きます

デジタルワールドは現実世界より時間の流れが速く、現実の数分の間に何日も過ぎる。それがアポカリモンを倒したことで、現実世界と同じ時間の流れになる。アポカリモンの呪文は、逆さまから読むと「お前たちはデータ皆」になっている。

時計が同じ速さになるってのは、二つの世界が別れる準備ができたってことにも読める。二周目は、呪文の場面で一度止めて、逆から読んでみろ。

一周目は敵の台詞として聞き流した。二周目は、あの呪文が呪文として読まれる前後で、画面の音がどう変わるかも聴いてみろ。逆から読む作業は、曲を逆再生するのに少し似てる。事実[6]

放っておかれた乗り物

結末・正体最終話の乗り物押すと開きます

作中に置かれていた都電は、最終話で子どもたちが現実世界に戻るために使われた。それまでは、ただ放置されているだけだった。

ずっと放置されていた乗り物が、最後に帰り道になった。二周目は、都電が映る場面を全部数えてみてくれ。

都電が映る場面は、最初のうちは背景として観ていい。最終話から振り返ったときに、あれが背景じゃなかったと分かる。数えた数は、自分だけの記録にしておけ。事実[7]

アカリ

ずっとそこにあったのに、使うのは最後なんだ。……ちょっと分かる。帰る場所って、そういうものかも。解釈

ジン

……真似すんなよ。俺みたいに、二周目で夜明かしすんのは。

二周目は、「brave heart」が鳴らない回があることを頭に置いて聴く。この作品は、鳴らさない音で相棒の話をしている。

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