ゴウだ。TVアニメ『進撃の巨人』第1期の二周目の話をする。第25話まで観た人向けだ。展開にかかわるところは畳んである。第2期より先の話は、この記事ではしない。聞き手はジン。
二周目を始める前に
第1期は2013年4月から9月まで放送された。物語は原作の冒頭から、ストヘス区での女型の身柄拘束作戦の完了までを描く。事実[1]
お、押忍。今日はよろしくお願いします。……俺、これ戦争ものとして観てました。兵団って、軍隊っすよね。……です。
……楽にしろ。そうだ。お前の見立ては合っている。巨人の話の皮をかぶった、軍の話だ。誰が命令し、誰がそれを背負うか。二周目はそこを観る。解釈
格闘訓練の足運び
第104期訓練兵団で4席のアニ・レオンハートは、小柄だが、蹴り技主体の対人格闘術に優れた能力を持つと紹介されている。訓練兵時代の回想では、アニとの対人格闘訓練の様子も語られる。事実[2]
格闘訓練の場面で、俺は手を止めた。重心が低い。蹴りの戻りが速い。空手をやっていると、どうしてもそこに目が行く。一周目は、うまい奴がいる、で終わった。作中の観察
結末・正体結末(第23話から第25話)押すと開きます
第1期の終盤、アルミンの作戦で誘い出された疑惑の人物はアニだった。追いつめられたアニは女型の巨人となって逃れようとするが、巨人化したエレンに阻まれ、硬化能力で作った水晶体に自らを封じる。二周目に訓練の回想へ戻ると、あの蹴り技が、壁外調査で調査兵団を蹂躙した巨人の戦い方と同じ型に見えてくる。型は嘘をつかない。顔を変えても、足運びは変えられない。俺はそこで鳥肌が立った。事実[2]
うわ……。俺、二周目もそこ気づいてなかったっす。……です。
……道場では、足しか見ていない。
解散式の夜の顔ぶれ
第4話の題名は「解散式の夜」。事実[1]
訓練を終えた同期が、それぞれの行き先を決める夜がある。マルコは指揮役として優れた資質を持つと紹介されている。事実[2]
二周目は、この夜にだれが何を言ったかを、帳面につけるつもりで観た。憲兵団を望む者、調査兵団を望む者。望みを口にするとき、その人の顔は、まだ何も背負っていない。作中の観察
中盤まで中盤の展開(トロスト区の後)押すと開きます
同期から理想の指揮官として慕われ、自分の資質を見出してくれたマルコの遺体を確認したジャンは、調査兵団への志願を決意する。二周目に第4話を観ると、マルコがジャンに向ける言葉が、ジャンのその後の進路を決めた言葉として聞こえてくる。指揮官は、生きているあいだだけ指揮するのではない。事実[2]
……それ、ちょっと分かります。バンドでも、誰かの何気ない一言で、そいつの音が決まることがあるんで。好み
……そうか。お前の音にも、誰かの一言が入っているのか。
……別に。昔の話っす。いや、昔の話です。
トロスト区で策を採る者
トロスト区の攻防は、第1期の前半を占める長い戦いだ。一周目は、誰が生き残るかばかり追っていた。二周目は、策を出す者と、その策を採る者を分けて観た。作中の観察
中盤まで中盤の展開(トロスト区攻防戦)押すと開きます
駐屯兵団に抹殺されかけたエレンたちは、兵団を説得するアルミンの弁論がピクシス司令の関心を引いたことで救われる。ピクシス司令は、エレンの力で大岩を運んで破壊された扉を塞ぐというアルミンの発想を採用し、全軍にエレンの支援を命じる。二周目に観ると、策を出したのは訓練を終えたばかりの若い兵で、それを採ったのは司令だ。採ると決めた瞬間から、失敗の責は司令のものになる。策を出す勇気と、他人の策に乗る勇気は、別のものだ。事実[2]
他人の策に乗るほうが怖いっすね。自分で考えたことなら、失敗しても納得できるけど。……です。好み
……ああ。だから、乗ると決めた者は、決めた後に迷わない。迷う顔を部下に見せない。それも指揮の型だ。解釈
団長の決断
調査兵団第13代団長エルヴィン・スミスは、くせ者ぞろいの兵団を取りまとめる、卓越した統率力と決断力の持ち主とされる。事実[2]
第20話の題名には、その名前がそのまま付いている。事実[1]
中盤まで中盤の展開(第17話から第22話)押すと開きます
壁の破壊を企む者の存在が疑われるなか、エルヴィンは第57回壁外調査を強行する。調査兵団は女型を一度捕獲するが、作戦は結果として失敗し、撤退を余儀なくされる。エルヴィンは失敗の責を問われる。第22話の題名は「敗者達」。二周目は、壁外調査の出発前のエルヴィンの言葉を、作戦の中身を知ったうえで聞き直してほしい。何を部下に言い、何を言わずに出たのか。言わずにおいたことの重さは、すべて指揮官が一人で背負っている。事実[2]
団長って、部下にどこまで話すもんなんすかね。……です。俺だったら、全部言ってほしい。好み
……全部は話さない。話さずにおいたことの結果を、自分で背負う。そこまでやるなら、筋は通っている。言ってほしいと思う部下の気持ちも、筋だ。解釈
今何をすべきかという題名
第16話の題名は「今、何をすべきか」。事実[1]
特別作戦班に入ったエレンが、仲間を信じて任せるか、自分で戦うかを選ぶ場面が、第1期の後半にはいくつも出てくる。題名の問いは、そのまま後半のエレンに向けられているように読める。解釈
二周目は、エレンが選ぶ前の、短い沈黙を見ろ。答えを出すのは一瞬だ。だが、迷う時間が描かれているから、選んだ答えに重さが出る。どちらが正しかったかは、作品も言い切らない。解釈
第1話と第25話の壁
第1話で、人類は三重の巨大な壁の内側に暮らしている。一周目、壁はただの背景だった。二周目は、壁が画面に映るたびに、その表面と、壁の上に立つ人の小ささを見た。壁を見上げる者と、壁の上から外を見る者とで、同じ壁がまるで違うものに見える。作中の観察
結末・正体結末(第25話)押すと開きます
第1期の最後、女型が崩した壁からは、大型巨人が顔をのぞかせていた。最後まで観てから第1話に戻ると、人々が守られていると信じていた壁そのものが、第1期の最後の問いになっている。何に守られているのかを知らないまま守られている。二周目の俺は、そこがいちばん恐ろしかった。答えは第1期の中にはない。だから第1期の二周目は、問いを問いのまま持ち帰るつもりで観るといい。事実[2]
……ゴウさん、二周目でそこまで観てるの、正直ちょっと怖いっす。いや、いい意味で。です。
……別に、怖くはない。三周目は、お前が気づいたところを俺に教えろ。俺も、まだ見落としている。
二周目は第4話「解散式の夜」から。それぞれが望みを口にした顔を覚えておくと、第1期の後半がまるで違って見える。