ガクです。今回はTVアニメ『デカダンス』の二周目の話をします。最終話まで観た人向けです。この作品は、早い段階で世界の見え方ががらりと変わるので、その中身と結末は畳んであります。一緒に観直したのはジンさん。娘のバンドのギタリストで、僕の前ではなぜかいつも背筋を伸ばしている人です。
二周目を始める前に
『デカダンス』はNUTが制作したオリジナルのTVアニメで、全12話。2020年の7月から9月にかけて放送されました。監督を務めたのは立川譲さん、シリーズ構成と脚本を担当したのは瀬古浩司さんです。事実[2]
未知の生命体ガドルの脅威にさらされた人類は、身を守るために巨大な移動要塞を造り、その中で暮らしています。要塞の名はデカダンス、高さは3,000mにもなります。中にいる人々は二通りで、ガドル相手に戦うのが戦士のギア、戦えない人々がタンカーです。ひとりは夢を捨てない前向きな少女、もうひとりは夢を手放した現実主義の男。公式サイトは、二人の主人公をそう紹介しています。事実[1]
少女ナツメは、幼いころにガドルに父を殺され、自分も右腕を失いました。戦士に憧れますが適性検査に落ち、装甲修理人として、無気力な先輩カブラギのもとで働くことになります。事実[2]
……検査で落とされた奴が、それでも前に出る話です。一周目、そこだけで十分でした。好み
各話の題名を並べる
各話の題名を並べると、第1話が「ignition」、第3話が「steering」、第4話が「transmission」、第11話が「engine」。そして最終話、第12話の題名は「decadence」です。事実[1]
一周目は、なんとなく機械っぽい題名だと思って流していました。二周目に並べてみると、点火から始まって、ハンドル、変速機と、乗り物の部品の名前が順に置かれ、最後だけが作品の名前になっています。部品が一つずつ組み上がって、最後に一台の機械になる。ばらばらの人たちが、最終話で一つの要塞として動く話の形と重なって見えます。解釈
ギターでいうと、弦とペグとピックアップを全部ばらして並べてから組み直す感じです。……すみません、たとえが自分の楽器になりました。解釈
いや、分かりやすいよ。どの部品が欠けても音が出ない、という話でしょう。
第2話で明かされるもの
第2話について、公式サイトのあらすじは、ナツメたち人類の知らない世界の本当の姿が見えてくる、と書いています。第10話のあらすじのほうは、デカダンスが何なのかを知ってしまったナツメが、大きなショックを受けるという内容です。事実[1]
中盤まで中盤までに明かされる世界の姿押すと開きます
デカダンスは、巨大企業ソリッドクエイク社が運営する人気ゲーム「デカダンス」の舞台でもあります。プレイヤーや運営は「素体」と呼ばれる身体でログインして戦う。そしてガドルは、水中の施設で培養されています。事実[2]
中盤まで中盤までに明かされるカブラギの立場押すと開きます
デカダンスへ「ログイン」する側には、カブラギも含まれています。第6話で彼はゲーム警察に捕まり、施設へ送られます。そこは、バグだと判定されたサイボーグを集めておく場所です。第7話では、ナツメに会うため、カブラギはもう一度デカダンスにログインします。事実[1]
ここが、この作品のいちばん面白い作りだと僕は思います。観ている僕らは第2話で知ってしまうのに、ナツメは第10話まで知らない。その間の8話分、ナツメのまっすぐな台詞は、全部こちらの胸に二重に響く。二周目は、第3話から第9話までのナツメの「夢」という言葉を数えてみてください。解釈
中盤まで公式サイトの一文押すと開きます
公式サイトの最初には「Log out of the Deca-dence. Log in to the Deca-dence.」という一文が置かれています。事実[1]
不具合と呼ばれる人たち
中盤まで中盤の展開(第6話)押すと開きます
フギンはゲーム警察の一員で、デカダンスの中を見張り、不具合を見つけては処分します。合言葉として唱えるのは「世界にバグは不要です」。バグと判定されたサイボーグの行き先は、バグ矯正施設。第6話、カブラギはそこで、昔一緒に働いていたドナテロとターキーに再会します。事実[1]
僕が二周目でいちばん長く考えたのはここです。誰かを「不具合」と呼べるのは、正しい動き方を決めている側だけです。決まりを守っているかどうかではなく、決まりを作った側の都合に合うかどうかで、人が仕分けられていく。町内会でいえば、回覧板を回す順番を決めた人が、順番どおりに回さない家を「困った家」と呼ぶようなものです。解釈
……施設に入れられた連中が、そこで自分たちの順番と仲間を作っていくところ。あそこは、ガクさんの言う決まりの話より、俺……いえ、僕には、はみ出した者同士の話に見えました。解釈
ジンさんはいつも、決まりの外側から見るね。その見方、二周目にはすごく効く。好み
限界を外した者
一周目は、カブラギの過去の一場面として通り過ぎました。二周目は、カブラギが無気力になった理由の一つとして観ます。憧れて規則を越えた若い者が、規則によって壊された。その記憶を持つ人が、夢をあきらめない少女に稽古をつける。そう思って第3話の特訓の場面を観ると、カブラギの厳しさが、少し違う温度に見えてきます。解釈
稽古をつけると決めた時点で、あれは契約です。教える側は、教えた相手が無茶をしたときの責任まで引き受けてる。解釈
パイプという生きもの
パイプは、ペットのガドルです。戦場でカブラギに拾われ、いまは彼の家で飼われています。ほかのガドルとは違って、凶暴なところがありません。第4話では、このパイプが逃げ出し、追いかけて戦場へ飛びこんだナツメが、そこで初めてガドルと戦うことになります。事実[1]
二周目は、パイプが出てくる場面の空気の軽さに注目してください。畳んだ中を知ってから観ると、「敵」として用意された生きものの中に、そうでない一匹がいることの意味が変わります。僕は動物が出てくる場面にはすぐ泣くので、パイプの回は一周目より二周目のほうが危なかった。好み
最終話に集まる人たち
結末・正体終盤の展開(第8話〜最終話)押すと開きます
カブラギはドナテロたちを味方に引き入れ、ガドル工場を壊すため、もう一度デカダンスにログインします。第10話、ガドルがすべて死んでいくなかで、ナツメはデカダンスの正体を知る。そして最終話では、デカダンスと超巨大ガドルの最後の戦いが始まります。火力が足りずに押されるデカダンス。そこへ姿を見せたのが、ドナテロをはじめとするゲームプレイヤーたちでした。事実[1]
畳んだ中を知ってから第1話に戻ると、要塞の中で暮らすタンカーたちの何気ない日常が、とても大事なものに見えてきます。仕組みの中で役を割り振られた人たちが、最後には自分で持ち場を選ぶ。題名が部品の名前だったことも、そこで腑に落ちました。解釈
……別に、泣いてはいません。最終話の音の厚みが、ちょっとすごかっただけです。
二周目は第1話「ignition」の、ナツメがカブラギのもとに配属される場面から。この先の各話の題名を手元に並べておくと、ばらばらの部品が一台の機械になっていく話として観られます。