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私の6選の五本目は『SPY×FAMILY』。正体を隠した三人が、家族のふりをして暮らすアニメです。任務がどうなるかは書きません。書くのは、秘密を持った人たちが同じ食卓に座る、っていう話。
学食で、ソウマに聞いた
観始めたのは、大学に入ってすぐ。正直、最初はスパイものだからって、ちょっと意地悪な目で観てた。でも三話目くらいで、笑いながら泣きそうになってる自分に気づいた。で、次の日の学食で、ソウマに「これ、どこがそんなに上手いの? 教えて?」って聞いた。
……別に、全部上手い。強いて言えば、毎回、嘘が一個増えて、そのぶん家族が一歩近づく組み方。嘘で距離が縮まる話って、なかなかない。解釈
Nice、それ! 私が言いたかったの、たぶんそれ。
TVアニメの公式サイトのあらすじでは、西国の凄腕スパイ〈黄昏〉が、「一週間以内に家族を作り」名門校の懇親会に潜入せよという任務を課せられ、精神科医ロイド・フォージャーに扮して家族を作ることになります。出会った娘のアーニャは心を読める超能力者で、妻のヨルは殺し屋。三人は利害が一致して、お互いの正体を隠しながら一緒に暮らすことになります。事実[1]
原作は遠藤達哉さんの漫画で、集英社の「少年ジャンプ+」で連載されています。アニメの制作はWIT STUDIOとCloverWorksです。事実[1]
好きな理由1:全員が何かを隠してる
ふつう、秘密を持ってるのは主人公だけ。でもこの家族は、全員が何かを隠してる。しかも、隠してることを、それぞれが別の理由で大事にしてる。だから、誰かがうっかりしそうになると、別の誰かも同時にうっかりしそうになってる。そのすれ違いが、ものすごく笑える。笑えるのに、ちょっとさみしい。解釈
好きな理由2:ヨルさんの強さと不器用さ
公式サイトの人物紹介では、ヨルは両親を早くに亡くし、たった一人で幼い弟を養うために殺し屋になった人として書かれています。周りに正体がばれないよう「普通」の妻・母であろうと奮闘しているけれど、思い込みが激しかったりと、意外な弱点もある人だと。事実[1]
ヨルさんが好き。動きは本当に速くて、体の使い方に無駄がない。空手をやってる身としては、蹴りの軸足がぶれないのに毎回見とれる。なのに、家ではお料理ひとつでおろおろしてる。強い人が「普通」をがんばってる姿って、私にはすごく刺さる。普通って、練習しないとできないものなの。好み
好きな理由3:食卓の場面
三人がテーブルを囲む場面が出てくるたびに、私は少し画面に寄る。全員が自分の秘密を抱えたまま、同じお皿を回してる。誰も本当のことを言ってないのに、その食卓だけは本物に見える瞬間がある。私の研究テーマは「秘密を抱えた主人公はなぜ家族を欲しがるのか」なんだけど、たぶん答えの半分は、あのテーブルにあると思う。帰る場所があると、秘密を持ったままでも人は眠れるから。解釈
好きな理由4:アーニャの顔
アーニャの表情が、毎回ちがう。驚いた顔、得意な顔、悪いことを思いついた顔。線の数はすごく少ないのに、目と口の形だけで気持ちが全部分かる。写実で描く私とは正反対の描き方で、だからこそ見とれる。描き写そうとしたら、簡単そうに見えて全然同じ顔にならなかった。解釈
それと、舞台の東国と西国は、どこかヨーロッパっぽい国。街並みや服はヨーロッパ風なのに、家の中の空気はどこか日本のホームドラマなの。その混ざり方が、国をまたいで育った私には、妙に落ち着く。どこの国でもない家って、私が子どものころ住んでた家に、ちょっと似てる。解釈
私の見方:ちょっとだけ小言
ただ、ひとつだけ言わせて。尾行の場面、あの距離はさすがに近い。あそこまで寄ったら、ふつうはばれる。……なんで分かるのって? 映画をいっぱい観てるからだよ。たぶん。ともかく、それはアニメの楽しいウソとして、ありがたく笑ってる。好み
……エマ、尾行の話になると急に真顔になるよな。
えー、気のせい気のせい。次、ソウマのおすすめの帝国のやつ教えて?
苦手そうな人への入口
スパイものって聞いて、難しい話を想像する人もいると思う。でも、この作品は家族のコメディから入っていい。三人がそろうまでの最初の数話を観て、笑えたら続ける、で十分。戦う場面もあるけど、重くなりすぎないところで家の場面に戻ってくるから、疲れてる日でも観やすい。字幕で観るなら、アーニャの言葉づかいを一回は日本語の音で聞いてほしい。あれは訳すのがすごく難しい、日本語ならではのかわいさだと思う。
ほかの5本とのつながり
『タンタンの冒険』で世界中に友達がいる少年にあこがれて、この作品で、秘密を持ったまま帰れる家にあこがれた。国を移り続けてきた私にとって、どっちも「どこにいても自分の居場所をつくる話」なんだと思う。好み
誰も本当のことを言っていない食卓でも、本物に見える瞬間がある。それを見つけに、もう一話だけ観てみて。