テンの6選の一本目は『ライオンと魔女』にゃ。テンが最初に出会った物語。ずっと昔からの幼なじみのルカが、横で聞いてくれているにゃ。物語の行き先には触れないにゃ。
とても高い場所で読んだ本
テンがまだ、とても高くて明るい場所にいたころの話にゃ。そこでは毎日、決まった仕事があったにゃ。テンは仕事が遅くて、よく叱られてたにゃ。となりで同じくらい遅かったのが、ルカ。二人そろって、よく居残りしてたにゃ。その居残りの合間に、こっそり読んだのがこの本にゃ。好み
……居残りの最中に本を読んでいたから、さらに仕事が遅くなっていたのでは、と申し上げるのは、いまさら失礼でしょうか。
失礼にゃ。でも正しいにゃ。ルカも横からのぞいてたにゃ。
岩波書店の紹介では、戦争をさけて地方の屋敷に疎開した4人のきょうだいが、ある日大きな衣装だんすに入ると、雪のつもる別世界へつづいていた、とあるにゃ。そのナルニア国で、子どもたちは正義のライオンとともに魔女の軍と戦うにゃ。作はC.S.ルイス、訳は瀬田貞二、絵はポーリン・ベインズ。この版の刊行日は1966年5月28日にゃ。事実[1]
いまは岩波少年文庫にも入っていて、そちらの刊行日は2000年6月16日にゃ。対象年齢は、小学4・5年からと書いてあるにゃ。事実[2]
好きな理由1:衣装だんすという入口
別の世界への入口が、ふつうの家具なのがいいにゃ。毛皮のコートが何着も吊るしてあって、それをかき分けて奥へ進むと、足もとが雪になる。毛皮をかき分ける手ざわりから物語が始まるなんて、もふもふ好きにはたまらないにゃ。テンはこの場面を読むたびに、しっぽが勝手にふくらむにゃ。解釈
だれの家にもありそうな場所が、遠い国とつながってる。だから読み終えたあと、自分の部屋のたんすも、ちょっとだけ開けてみたくなるにゃ。テンはいまでも、スイの部屋のクローゼットにもぐりこむにゃ。奥は壁だったにゃ。好み
好きな理由2:たてがみの描写
大きなライオンのアスランが出てくるところは、文章がぜんぶ金色に見えるにゃ。たてがみの重さ、あたたかさ、近くに立ったときの大きさ。毛並みの描き方にはうるさいテンでも、文句のつけようがないにゃ。もふもふは世界を救うにゃ……! いや、この本ではほんとうに、そういう気持ちになるにゃ。好み
おもしろいのは、こわさとやさしさが同じ毛並みの中にあることにゃ。近くにいると安心する。でも、なれなれしく飛びつける相手でもない。テンはふだん、もふもふを見ると我慢がきかないけど、アスランにだけは、飛びつく前にきちんと座りなおしたくなるにゃ。解釈
テンが座りなおすところは、私はほとんど見たことがありません。それだけでも、この本の力が分かる気がいたします。
好きな理由3:見守るという役目
アスランは、子どもたちをそばで見守って、ときに導いてくれる存在にゃ。テンは、この見守る役目がとても誇らしいものに見えたにゃ。小さい生きものでも、大きい生きものでも、だれかのそばにいて見ている、ということには意味があるにゃ。解釈
テンの研究テーマは、人のそばにいる小さな生きものは何を見守っているのか、にゃ。その問いの最初の種は、たぶんこの本でまかれたにゃ。大きなライオンと、膝の上の猫。大きさはぜんぜん違うけど、やってることは少し似てると、テンは思ってるにゃ。……神のご加護にゃ。解釈
それから、雪にゃ。この本の雪は、冷たいだけじゃなくて、静かにゃ。足あとの音まで聞こえそうな静けさにゃ。テンは寒いのが苦手な猫だけど、この本の雪の中なら、ずっと歩いていたいにゃ。たぶん、どこかにもふもふのだれかが待っている気がするからにゃ。好み
テンがいまスイの膝の上で本をのぞきこむのが好きなのも、たぶんこの本のせいにゃ。ページの向こうに、別の世界への入口があるかもしれない。そう思うと、本を開く音だけで、耳がぴんと立つにゃ。好み
はじめての人へ
古い翻訳の言葉づかいが、最初は少しむずかしく感じるかもしれないにゃ。そういう人は、声に出して読んでみるといいにゃ。瀬田貞二さんの訳は、耳で聞くとすうっと入ってくるにゃ。一日一章ずつ、寝る前に読むのもおすすめにゃ。物語の時間と、自分の夜の時間が、ちょうどよく重なるにゃ。
それと、いろんな動物が出てくるので、動物好きは出てくるたびに名前をメモしておくと楽しいにゃ。テンのメモは、毛の色と手ざわりの想像まで書いてあるので、ちょっと長いにゃ。好み
ほかの5本とのつながり
この本から、テンの6選は始まるにゃ。黒猫が魔女のそばにいる話、ただの猫のふりをした強い存在の話、服を着て歩くキツネの話、ウサギとキツネが組む話、動物が人の姿になって旅する話。並べてみると、ぜんぶ、だれかのそばにいる生きものの話になってたにゃ。そのいちばん最初に、金色のたてがみがあるにゃ。好み
あのころ二人で居残りしていた時間も、無駄ではなかったのですね。……と、まとめてよろしいでしょうか。
よろしいにゃ。ルカは、いまでもまとめるのに時間がかかりすぎにゃ。
見守ることは、何もしないことじゃないにゃ。そばにいて、見ていることも、立派な役目にゃ。