四本目は『爆転シュートベイブレード』。オレの旅のカバンには、いまも必ずベイが入ってる。子どものころのカードも箱も、全部きれいなまま棚にしまってあるのに、ベイだけは傷だらけだ。その理由を、このアニメの話と一緒にしたい。
放課後の公園の音
そのころは、カードの大会に出はじめて、少しずつ外に出られるようになった時期だった。公園に行くと、だれかが必ずベイを回してた。金属がぶつかる、かちん、という高い音。その音が聞こえると、話しかけるのが苦手なオレでも、輪の中に入れた。回して見せれば、それがあいさつになったから。好み
家に帰ってアニメを観ると、画面の中の子たちも、同じ音を鳴らしてる。公園の続きを、テレビで観てるような感じだった。放送の次の日の公園には、必ず画面の中の掛け声をまねするやつがいた。オレもまねする側だ。うまく回らなくても、声に出すだけで少し強くなれた気がした。好み
原作は青木たかおさんの漫画。おもちゃのベイブレードがもとになった作品で、回るコマで勝負する遊びが、物語の真ん中にある。事実[1]
一度壊れるところから
主人公は木ノ宮タカオ。ベイバトルに夢中な、まっすぐな少年だ。
物語の早いうちに、タカオの最初のベイは、ライバルのカイとぶつかった最初の勝負で壊れてしまう。タカオは仲間と一緒に、自分のベイを一から組み直す。事実[1]
そして組み直したベイに、龍の力が宿る。事実[1]
この話でオレが一番好きなのは、ここなんだ。大事なものが壊れて終わりじゃない。仲間と一緒に部品を見直して、前より自分らしい形に組み直す。そうしたら、中に相棒が宿る。オレは物を捨てられない性分で、家の何部屋かが箱で埋まってる。でも、ベイだけは傷がついても平気になった。傷は、ちゃんと回した証拠だから。解釈
コマの中にいる相棒
このアニメでは、ベイの中に聖獣と呼ばれる生き物が宿っている。手のひらに乗る小さなコマの中に、龍や鳥や獣がいる。オレにとって、それは『デジモンアドベンチャー』の相棒と同じだった。見えないけど、確かにいる。回っているあいだだけ、姿を見せてくれる。子どものころ、オレは自分のベイにも何かが宿ってると本気で信じて、寝る前に話しかけてた。解釈
ギアドラにベイの話をすると、「ボクは回りません」と少しすねる。プロペラは回ってるだろ、と言うと、それは別です、と返ってくる。好み
カバンの底のベイ
旅のカバンの底には、ベイが何個か入ってる。どれも角がすり減って、塗装が少しはげてる。オレの棚の箱は全部きれいなままなのに、ここだけは別だ。旅先で子どもに貸すと、思いきり床に叩きつけるように回すやつがいる。オレは止めない。オレもそうやって回してたからな。好み
しまっておく好きは、時間を止めておく好きだ。回す好きは、時間を一緒に進める好きだ。オレの見方で言えば、ずっと好きでいるってことは、きれいに取っておくことだけじゃない。毎回すり減らしながら、また次の町で回すことでもある。このアニメのタカオが壊れたベイを組み直す姿を観て、オレはそっちの好き方も大事にしようと決めた。解釈
国ごとのチーム
タカオたちは、ベイブレードで世界一を目指す。その道の途中で、中国、アメリカ、ヨーロッパ、ロシアと、国ごとのチームとぶつかっていく。事実[1]
子どものオレは、世界地図を広げて、次はどこの国だろうってわくわくしてた。外に出られずにいた時期を抜けたばかりのオレには、遠い国の子どもが同じコマを回してるってだけで、胸が熱くなった。いまオレが本当に国から国へ歩いてるのは、あのころの地図の続きを歩いてるようなものなんだぜ。好み
市場で回したベイ
ルールは、回して、ぶつけて、最後まで回ってたほうが勝ち。それだけだ。だから言葉が通じない相手とも、すぐ遊べる。旅先の市場で、店先の台を借りて回したら、通りがかりの子どもたちがあっという間に集まってきた。好み
あのとき、私は手帳に書いてた。最初の一回で、子どもたちがもう同じ掛け声を覚えてたこと。言葉より先に、数え方がそろっていくんだね。作中の観察
ノアはいつも、オレが説明に詰まったときだけひとこと入れて、あとはずっと書いてるよな。何をそんなに書くことがあるんだ? オレのほうが聞きたいぜ。
勝ったのは、髪に寝ぐせのついた小さな男の子だった。オレは本気で悔しがって、もう一回と頼んで、また負ける。周りの大人まで笑ってた。勝ち負けの外で、遊びが人と人をつなぐ瞬間。オレが探してるのは、たぶんああいう夕方なんだ。帰り道にノアの手帳をのぞいたら、その子が最初に覚えた言葉の横に、オレの負けた回数まで書いてあった。好み
初めて観る人へ
オープニングは、SYSTEM-Bの「Fighting Spirits -Song for Beyblade-」。始まりの勢いで、だいたいの気分はつかめる。ベイを持ってない人も、まずは一話だけ観てくれ。ルールの説明がいらないくらい、どっちが勝ったかは画面を見れば分かる。オレは、タカオがベイを組み直す回まで観ると、もう止まらなかった。事実[1]
回る話と旅の話
相棒が宿るところは『デジモンアドベンチャー』と、町から町へ広がっていくところは『ポケットモンスター』と、ライバルとの本気の勝負は『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』とつながってる。オレの6選の少年たちは、みんな何かを手に持って、外へ出ていく。好み
壊れても、組み直せばまた回る。傷だらけのベイは、ちゃんと遊んだ日の数だけ強くなってる。