私の20本は、国や言葉や媒体の境目を越えてきた作品から選んだ。並べ方は、境目の種類ごと。最初は、小説や漫画やゲームからアニメへ渡ってきた物語。次に、手紙や辞書、言葉を持たない相手との「訳」の物語。そのあと、食卓や町や仮想空間で、違う世界の人どうしが出会う作品。後半は、私のいつもの棚の外から来たアニメと、紙の上で異文化に触れる漫画。どれが元で、どれが上、という順番は置いていない。違いを見つけたら、どちらが正しいかではなく、何を選び直したのかを考えてみる。そうすると、同じ物語が二倍楽しい。私はつい共通点を喜びすぎるので、今回は違いも一つずつ書くようにした。
媒体を渡ってきた物語
1番目のおすすめ: Arcane/アーケイン
- 選んだ理由
- 対戦ゲームの世界をもとにした連続アニメ。ゲームを知らなくても、二つの街の格差と、引き裂かれる姉妹の話として観られる。「同じ物語が別の媒体で何を選び直したか」を考えるのに、いま真っ先に話したい作品。
- こんな時に
- ゲームが好きな友人と、ゲームを知らない私とで、同じ回の感想がまったく違った。その食い違いが楽しくて、いつもの喫茶店で長く話し込んだ。
- 好きなところ
- 絵画のような質感の画面に、立体的な動きが重なる。違う技法の境目が、見えるままにされている気がする。上の街と下の街で、光の色がまったく違う。ゲームでは操作する側だった人物が、ここでは「なぜこうなったか」を背負わされている。そこに媒体の違いを感じる。
- ハマるワンポイント
- ゲームの知識はいらない。最初の数話は、上の街と下の街の光の色の違いを覚えておいて。
2番目のおすすめ: 寄生獣セイの格率
- 選んだ理由
- 右手に寄生生物が宿った高校生の物語。原作は漫画で、同じ物語がアニメになると何が残り、何が選び直されるのか。翻案を考える最初の一本として、私はこの作品を真っ先に挙げたくなる。
- こんな時に
- 原作を先に読んでいた友人と、アニメから入った私とで、好きな場面がきれいに分かれた。どちらの入口も、ちゃんと正しかった。それを確かめ合うのが楽しかった。
- 好きなところ
- 主人公と右手の会話のテンポが好き。人間の言葉を覚えたばかりの存在が、理屈で人間を問い詰める。その言葉が、訳される前の直訳みたいに硬くて、可笑しくて、怖い。人間の側の「当たり前」が、何度も外から見直される。血の場面が多いので、苦手な人は気をつけて。
- ハマるワンポイント
- 原作を知っている人は、何を残して何を変えたかを探しながら。知らない人は、右手との会話だけ追えば大丈夫。
3番目のおすすめ: BANANAFISH
- 選んだ理由
- 海の向こうの大都市の裏社会で生きる少年と、日本から来た青年の物語。原作は漫画で、アニメは同じ物語を映像で語り直している。二人の言葉と育ちの違いが、そのまま関係の深さになっていく。
- こんな時に
- 字幕と吹き替えを見比べていた時期、二人が互いをどう呼ぶかが訳によって変わるのが気になって、ノートの印がたくさんついた作品。
- 好きなところ
- 言葉が通じきらない街で、それでも相手を見捨てない青年。言葉より先に、しぐさや視線で気持ちが渡される場面が好き。違う場所で育った二人の世界の見え方を、どちらが正しいとも言わずに並べている。暴力の場面が多く重い作品なので、体調のいい日に。
- ハマるワンポイント
- 重さには身構えて。でも、二人が並んで話す静かな場面を待つつもりで観ると、ぐっと入れる。
4番目のおすすめ: 時を かける 少女
- 選んだ理由
- 昔から何度も映像になってきた小説を、そのままなぞらず、別の主人公の物語として描いた映画。翻案はここまで自由でいいんだ、ということを、明るい夏の空と一緒に教えてくれる。
- こんな時に
- 高校生のころ、言葉の違う友人と一緒に観た。主人公が全力で走る場面だけは、どちらも説明がいらなかった。それがうれしかった。
- 好きなところ
- 入道雲、野球の打球音、自転車のブレーキ。くり返される時間の中で、同じ場面が少しずつ違って見える。原作の小説を知っている人と知らない人とで、同じ場面の受け取り方が変わるのも面白い。同じ映画を観ても、入口によって見えるものが違う。
- ハマるワンポイント
- 原作は知らなくても大丈夫。主人公が走る場面と、くり返される夏の一日に注目して。そこから入れる。
5番目のおすすめ: アルスラーン 戦記 THE HEROIC LEGEND OF ARSLAN
- 選んだ理由
- 原作の物語がマンガになり、そのマンガがアニメになった。同じ王子の旅が、媒体ごとにどんな顔を見せるのか。いくつもの国と宗教が行き交う、王国の広さも私の好み。渡り歩くほど楽しい作品。
- こんな時に
- 旅先の本屋で原作の本を一冊だけ買って、帰りの列車で読みながら、アニメの場面と比べた。荷物は少ないのに、また本が増えた。旅の楽しみが、一つ増えた。
- 好きなところ
- 王子のまわりには、それぞれ違う出自と考え方を持つ人たちがいる。戦の場面より、軍議や、立場の違う人どうしの会話が好き。違いを小さく扱わずに、違いのまま並べているところがいい。私はつい共通点を探しがちだから、なおさら。
- ハマるワンポイント
- 最初は、王子のまわりの人たちの出自と立場の違いに注目してみて。急がずに、会話を味わって。
手紙と辞書と、言葉のない相手
6番目のおすすめ: ヴァイオレット・エヴァーガーデン
- 選んだ理由
- 依頼人の思いを聞いて、手紙を代わりに書く仕事をする少女の物語。言葉にならない気持ちを、別の誰かが言葉に置き換える。それは私にとって、翻訳にいちばん近いところにある仕事。
- こんな時に
- 外国語の授業で、同じ文にも訳し方がいくつもあると知った中学生のころの驚きを、大人になってこの作品で思い出した。あのころのノートを、久しぶりに開いた。
- 好きなところ
- 手紙を書く場面の、指の音や紙の色。依頼人の話を聞きながら、主人公が「本当に言いたいこと」を探す時間が、丁寧に描かれる。立場も暮らしも違う人たちの言葉が、手紙になっていく。どの訳が正しいかではなく、どの言葉を選ぶか、の物語。
- ハマるワンポイント
- 手紙が書き上がる瞬間の、主人公の表情と手の動きに注目して。依頼人の話に耳を傾ける時間も、ゆっくり味わって。
7番目のおすすめ: 舟を編む
- 選んだ理由
- 長い時間をかけて一冊の辞書を作る人たちの物語。言葉の意味を一つずつ確かめる仕事が、こんなにも静かで熱いなんて。翻訳が好きな人なら、きっと他人事に思えない。言葉の旅の物語。
- こんな時に
- 同じ一冊を持って、同じ喫茶店に何年も通っている私にとって、一つのことに長く付き合う人たちの話は、他人事ではなかった。観たあと、その一冊の好きな言葉に線を引いた。
- 好きなところ
- ありふれた言葉の説明を、何度も書き直す場面が好き。誰でも知っている言葉ほど、説明するのが難しい。言葉の意味を一つずつ確かめていく手つきが、静かで熱い。言葉はいつも、選ばなかったもう一つの言葉と一緒にある、と気づかされる。
- ハマるワンポイント
- 辞書づくりの人たちの顔ぶれを覚えておくと、あとでぐっと深く響く。静かな場面を、急がずに。
8番目のおすすめ: 獣の奏者エリン
- 選んだ理由
- 獣と心を通わせる少女の物語。人の言葉が通じない相手と、どうやってわかり合うのか。獣を使う国の決まりごとと、目の前の獣を見つめる少女の目線が、静かにぶつかる。私はその静けさが好き。
- こんな時に
- 字幕と吹き替えの訳が分かれる場所に印をつけていたころ、言葉を持たない相手との「訳」もあるのだと、この作品で考えた。印のつけようがない訳もある。
- 好きなところ
- 少女が獣の仕草や鳴き声をじっと観察していく場面が好き。決まりより、目の前の相手を見ることを選ぶ。獣と向き合う場面の、静かな緊張。国の側の事情も、きちんと描かれている。どちらか一方だけを悪者にしないところがいい。
- ハマるワンポイント
- 序盤の、少女が獣をじっと観察する場面に注目してみて。そこに物語の芯が見えてくる。獣の目も、見てあげて。
9番目のおすすめ: 夏目友人帳
- 選んだ理由
- 妖怪が見える少年が、祖母の残した帳面に書かれた名前を、妖怪たちに返していく。人と妖、二つの世界のあいだに立つ物語。どちらの側にもなりきらず、橋のように立つ主人公が好き。
- こんな時に
- 旅先の宿で、眠れない夜に一話ずつ観た。知らない土地の夜の静けさと、作品の静けさが重なって、いつの間にか眠っていた。宿の名前はもう忘れた。
- 好きなところ
- 名前を返す場面の、静かで澄んだ演出。妖怪たちは、怖さと寂しさを両方持っている。相手の世界の決まりごとを尊重しながら、自分の気持ちも手放さない主人公の態度に、違う文化と向き合うときのヒントがある気がする。自称用心棒のニャンコ先生との掛け合いも楽しい。
- ハマるワンポイント
- どこから観ても入りやすいと思う。名前を返す場面を、待つつもりで観てほしい。その瞬間の音にも注目して。
食卓と町で出会う
10番目のおすすめ: 異世界食堂
- 選んだ理由
- 町の洋食屋の扉が、異世界とつながる。向こうの世界の客たちが、こちらでは当たり前の料理を初めて食べる。食べものを通して、文化と文化が出会う物語。おなかがすく翻訳の話。
- こんな時に
- 旅先で、知らない料理の名前を辞書で引きながら注文した日を思い出した。観たあとは無性に洋食が食べたくなって、いつもの喫茶店のメニューを端から読んだ。
- 好きなところ
- 異世界の客にとって、初めて口にする料理は、自分の世界の言葉では言い表しきれないもの。その戸惑いが、翻訳の話にも見えてくる。種族も立場も違う客たちが、同じ店で並んで食べる。そのささやかな共存が、観ていてとてもいい。
- ハマるワンポイント
- 回ごとに客と料理が変わる。客が初めての料理にどう反応するか、その表情や言葉に注目してみて。
11番目のおすすめ: 鬼灯の冷徹
- 選んだ理由
- あの世の役所で、閻魔大王の補佐官がてきぱきと仕事を回すコメディ。昔話や伝承の住人たちが勢ぞろいし、いろいろな世界の住人が顔を出す。文化の交流が、なぜか役所の窓口で起きる。
- こんな時に
- 喫茶店で読んでいた神話の本に少し疲れて、同じ題材を笑いで観たくなった日に。本で読んだばかりの名前が出てきて、思わず声が出た。
- 好きなところ
- 昔話でおなじみの登場人物が、あの世で職員として働いているのが可笑しい。文化の違う者どうしの掛け合いは、どちらも下げずに笑いにしている。台詞の情報量が多くて、早口のテンポが心地いい。字幕にするなら、訳す人はきっと大変。
- ハマるワンポイント
- 回ごとにいろいろな住人が登場する。知っている昔話の住人を探すつもりで観ると楽しい。
12番目のおすすめ: サマーウォーズ
- 選んだ理由
- 世界中の人がつながる仮想空間と、田舎の大家族。いちばん新しい場所と、いちばん古い場所が、一つの夏に重なる。広い世界と狭い家、その両方に住んでいる感覚が楽しい。どちらも、ふるさと。
- こんな時に
- 言葉の違う友人と観た。大家族の食卓の場面になったとたん、二人とも自分の家族の話を始めて、映画の続きを観るのを忘れかけた。
- 好きなところ
- 仮想空間の白く広い背景と、古い家の木の色。いろいろな言葉の人がアバターで集まる場面と、親戚が集まる場面が、似た構図で並んでいるように見える。この家の作法やしきたりが、別の土地で育った人の目にどう映るのか、聞いてみたくなる。
- ハマるワンポイント
- 家族の人数が多いので、最初は全員覚えなくていい。食卓で誰がどこに座るかを眺めておくと、関係が見えてくる。
13番目のおすすめ: 竜とそばかすの姫
- 選んだ理由
- 田舎町の女子高生が、仮想世界で歌い手になる。現実と仮想、二つの顔を行き来する物語。知っている物語との重なりと違いを探すと、ぐっと楽しくなる。ネットの時代の物語として、いまの私に届く作品。
- こんな時に
- 旅先で、自分の名前の読み方を何度も説明した夜に観た。仮想世界の名前と現実の名前のあいだを行き来する主人公に、妙に親近感がわいた。
- 好きなところ
- 細かく描き込まれた仮想世界の広い空間と、現実の川や山の素朴な色。歌の場面で、二つの世界がつながる。主人公が、現実の自分と仮想の自分との距離をどう取るのかが好き。名前を二つ持つことは、隠すことだけじゃない、と思わせてくれる。
- ハマるワンポイント
- 歌の場面は音量を上げて。知っている物語との重なりを探しながら観ると、違いが見つかる。
14番目のおすすめ: ARIA The ANIMATION
- 選んだ理由
- 遠い未来、水の惑星に作り直された水の都で、ゴンドラの漕ぎ手を目指す少女の物語。昔の街を別の星に移したら、何が残り、何が変わるのか。街そのものの翻訳みたいな作品。
- こんな時に
- 同じ喫茶店に何年も通っている私には、同じ街の同じ水路を、季節を変えて何度も行き来する話がしみた。同じ場所は、毎回少しだけ違う。
- 好きなところ
- 水路の光、石畳、運河を渡る風。毎日同じ街を見ているのに、主人公はいつも新しいことに気づいて喜ぶ。その目を借りると、自分の街も違って見える。昔の街の暮らしを、別の星でどう受け継いだかの細部も楽しい。猫たちも可愛くていい。
- ハマるワンポイント
- 一話ずつゆっくり進む。眠る前に一話ずつ、が合う作品。急いで観ないこと。ゆっくり観るほど、街が自分のものになっていく。
いつもの棚の外から
15番目のおすすめ: ウルフウォーカー
- 選んだ理由
- 遠い時代の森を舞台に、狼と人のあいだで生きる少女たちの物語。手描きの線の質感が残る画面が印象的で、いつもの棚の外へ出る、最初の一歩にちょうどいい。言葉より先に、線が語りかけてくる。
- こんな時に
- 旅先の小さな映画館で、字幕で観た。帰ってから吹き替えでも観て、森の少女の言葉づかいの違いに印をつけた。訳し方で、少女の年齢まで違って聞こえた。
- 好きなところ
- 街の場面は直線的で、森の場面は丸くうねる線に見える。二つの世界の決まりごとの違いが、線の形そのものになっている。狼の目線で森を駆ける場面の、匂いまで見えるような表現も好き。観るたびに、線の動きだけを目で追ってしまう。
- ハマるワンポイント
- 街の線と森の線の違いに、最初の数分で気づけたら、あとは画面に任せて大丈夫。線が、そのまま言葉になっているから。
16番目のおすすめ: レッドタートル ある島の物語
- 選んだ理由
- 無人島に流れ着いた男の物語。台詞はほとんどない。どこの国の物語とも言いきれない、不思議な手ざわりがある。言葉の違う人と一緒に観るのに、とても向いた映画だと思う。
- こんな時に
- 言葉のいらない映画を、言葉の違う友人と並んで観た。観たあと、二人ともしばらく黙っていた。その沈黙が同じだったことが、なによりうれしかった。
- 好きなところ
- 波の音、風、雨。言葉がないぶん、自然の音が台詞の代わりに語る。人物の顔はとても簡潔な線なのに、気持ちがよくわかる。翻訳がいらない映画、というより、訳すことを観る人に任せてくれる映画。だから感想が人の数だけ分かれる。
- ハマるワンポイント
- 字幕の心配はいらない。島の音に耳を澄ませて、自分の言葉で訳しながら観てみて。観終わったら、誰かの訳と比べてみて。
17番目のおすすめ: 楽しいムーミン一家
- 選んだ理由
- 北の国の児童文学を、日本でアニメにした作品。同じ谷が、本とアニメとでどんな顔を見せるのか。その違いを比べるのが楽しい。どちらが上でもなく、どちらの谷にも、それぞれの居心地のよさがある。
- こんな時に
- 大人の長い話も最後まで黙って聞いていられた子どものころ、谷の住人たちののんびりした会話が好きだった。原作の本を読んだのは、ずっとあとのこと。
- 好きなところ
- 気ままな暮らしを、引き止めずに見守る空気が好き。住人それぞれが自分の暮らし方を持っていて、誰も他人の生き方を正そうとしない。原作とアニメを並べて、違いを探しながらノートに書き足すのが楽しい。どちらの谷にも住んでみたい。
- ハマるワンポイント
- 原作の本を一冊、手もとに置いて観ると楽しい。どこが同じで、どこが違うかを探して。
18番目のおすすめ: ロミオの青い空
- 選んだ理由
- 山あいの村から大きな街へ出て、煙突掃除の仕事につく少年の物語。海外の小説をもとにしていて、原作とアニメで何を選び直したのかを比べる楽しみがある。翻案の面白さを味わうのにちょうどいい。
- こんな時に
- 旅に出ると、知らない街で働く人たちの朝の姿をよく見る。その目は、この作品を観てから育った気がする。屋根の上を見上げる癖も。
- 好きなところ
- 少年たちが仲間をつくり、助け合っていく場面が好き。すすで黒くなった顔と、屋根の上から見える空の青。出身の違う子どもたちが同じ街で働き、ぶつかり、わかり合っていく。育ちや習慣の違いが、喧嘩の種にも、友情の種にもなる。
- ハマるワンポイント
- 村から街へ出てから、仲間が集まっていく過程を、楽しみに待って。仲間の顔ぶれの違いも楽しい。
紙の上の異文化
19番目のおすすめ: ゴールデンカムイ
- 選んだ理由
- 北の大地を舞台にした宝探しの冒険。そのなかで、アイヌの言葉、料理、狩りの知恵が、物語の真ん中で丁寧に描かれる。異なる文化の言葉を、物語の速度を落とさずに伝える工夫が見事。
- こんな時に
- 旅先で、地名の由来を書いた看板を読むのが好きになった、きっかけの一冊。読んだあと、地名の響きを、意味を思い浮かべながら口に出してみたくなった。
- 好きなところ
- 言葉や料理を教わり、覚えていく。その教え合う関係が好き。言葉の意味が、コマの中で自然に伝わる。食事の場面で交わされる言葉の温かさに、読んでいてほっとする。一方で戦いの場面は激しく、血も多いので、苦手な人は気をつけて。
- ハマるワンポイント
- 最初は、料理の場面に出てくる言葉に注目して。言葉を一つ覚えるたびに、物語が近くなる。
20番目のおすすめ: 乙嫁語り
- 選んだ理由
- 遠い昔の中央アジアを舞台に、いろいろな土地の花嫁たちの暮らしを描く漫画。刺繍、料理、狩り、婚礼の習わし。一つの文化を代表にせず、土地ごとの違いを違いのまま描いている。
- こんな時に
- 同じ喫茶店の同じ席で、何年もかけて少しずつ読み進めた。一冊読むたびに、遠くへ旅に出て、また同じ席に帰ってきた気がした。店の人には、もう顔を覚えられている。
- 好きなところ
- 刺繍の模様や、布の柄の描き込みに、ページをめくる手が止まる。わかったつもりにならない、その距離の取り方が好き。違いを、違いのまま大事にしている。一つの文化を代表にしない描き方に、私はいつも背筋が伸びる。
- ハマるワンポイント
- 描き込みが細かいので、急がずに。一つのコマの模様をじっくり眺める時間も楽しんで。
同じ物語を好きでも、好きになった入口は、こんなに違う。この20本のどれかで見つけた違いを、いつか誰かと並べてみてほしい。
