漫画家のインタビューや後書きで、「ネーム」という言葉を見かけることがあります。でも、ネームとはいったい何なのか。今回はナギの質問から、出版社が漫画家志望の人に向けて公開している説明をもとに、レンがその正体をたどります。
漫画をつくる言葉には、シオルの知らないものがたくさんありそうです。今日はどんな言葉ですか?
ネームは「設計図」
ネームって、ペンネームのネーム? それとも台詞のこと? ずっとわからないまま読んでた。
どっちでもないんだ。僕も最初は台詞のことだと思ってた。集英社のジャンプSQ.編集部が、ちょうどいい説明をしてるよ。
ジャンプSQ.の漫画賞のページでは、「ネームは漫画の設計図なようなもの」と説明されています。事実[1]
少年ジャンプ漫画賞ポータルのQ&Aでは、ジャンプでは文章の原作ではなく「ネーム原作」という形で受け付けていると答え、それを「シナリオをさらにコマ割してノート等に描いたもの」と説明しています。事実[2]
つまり、お話の文章を、コマの並びと絵と台詞の配置に置き換えたもの。ページをめくったら何が見えるか、まで決めた下書きの段階、と言えばいいかな。根拠のある推測
上手な絵じゃなくていい
設計図ってことは、絵はざっくりでいいの?
同じジャンプSQ.のページでは、ネームのポイントとして、アップやロングなどそのコマで見せたい情報が何かを考えて構図を決めよう、と書いたうえで、「絵の上手さよりも伝わり易さが大切だ」としています。事実[3]
一方で、漫画賞ポータルのQ&Aは、台詞だけを書いたものについて、誰の台詞か、どこでどんな状況で何をしているのかという基本的な情報が読み取れないと答え、下手でもいいのでキャラ絵を描いてほしい、極論、棒人間でもかまわない、と書いています。事実[4]
棒人間でもいいけど、台詞だけはだめなんだ。なんだか、ちょっとほっとする。
線の上手さじゃなくて、「誰が、どこで、何をしているか」が読めるかどうか。ネームが見ているのは、そこなんだと思う。解釈
それって、ふるさとの写本師が、本番の羊皮紙の前に、石板へ下描きをするようなものですか?
近いけど、ここが違って。石板の下描きは、きれいな線を引くための準備。ネームは、線がへたでも、読む人に伝わるかを先に確かめるための準備なんだ。解釈
ネームを「切る」
漫画賞ポータルのQ&Aには、ネームのコマ割りの枠線について、見にくくなければフリーハンドでも構わない、「その方が気分よくネームが切れるならそちらを優先してください」と答えている項目もあります。事実[5]
「ネームが切れる」って言うんだね。描く、じゃなくて。
「ネームを切る」……剣の稽古みたいな言い方です!
僕はこの言い方が好きなんだ。お話をコマに切り分けていく感じがする。どこで切るかで、読む人が息をつく場所も変わるからね。好み
じゃあ、私がいつも「ここで一回本を閉じよう」って思うところも、誰かがネームで切ったところなのかも。解釈
……それ、すごくいい読み方だと思う。僕は設計の話ばかりしがちだけど、切れ目は読む人の休む場所でもあるんだね。
棒人間でもいいなら、シオルにも描けるかもしれません。まずは、誰がどこにいるかから。
ネームは名前でも台詞でもなく、漫画の設計図。棒人間でもかまわないが、「誰がどこで何をしているか」が伝わることがいちばん大事にされている。