6選の三本目は『ふたりはプリキュア』。性格のちがう二人が手をつなぐまでの距離。私が関係性を見る目は、ここで育ちました。公式の導入より先の展開には触れません。
日曜の朝の色違いの二人
まだ幼稚園に通っていたころです。日曜の朝、テレビの前から動かなかったと家族に言われます。覚えているのは、二人が並んだ絵。黒と白。終わるとすぐに色鉛筆を出して、二人の絵を描いた。同じポーズで、色だけ入れ替えたものを何枚も。どちらがどちらの色でも二人は二人なのか、子どもなりに確かめたかったんだと思います。好み
東映アニメーションの作品紹介によると、『ふたりはプリキュア』は2004年2月1日から2005年1月30日まで、毎週日曜日の8時30分から9時に、ABC・テレビ朝日系列で全49話が放映されました。事実[2]
プリキュアシリーズ公式ポータルの年表は、2004年のこの作品から始まっています。シリーズの最初の一本です。事実[3]
好きな理由1:正反対から始まる
公式ポータルの紹介では、美墨なぎさと雪城ほのかは同じ学校の同じクラスのクラスメイトで、趣味も性格も正反対。ある日、メップルとミップルという不思議な妖精と出会い、なぎさはキュアブラックに、ほのかはキュアホワイトに変身して、力を合わせて立ち向かうことになります。事実[1]
同じ教室にいても、話したことがない二人。それが、同じ目的のために横に立たされる。最初から仲がいいわけじゃない。ここが大事です。最初の数話の二人は、並んで立っていても、肩と肩のあいだに少し隙間がある。その隙間が回を追うごとに少しずつ変わっていく。私は台詞よりも、その隙間の幅を見ていました。作中の観察
正反対の二人が並ぶ話、レイはほんとに好きだよね。
好き。正反対の二人は、だいたい最後には――
いや、それは違う。現実の正反対は、ずっと平行線のことも多いよ。この作品が丁寧に近づけてるから近づくんでしょ。解釈
……そうだね。「だいたい」って言うのは雑だった。この二人が、この作品の描き方で近づいていく。そこを分ける。
好きな理由2:手をつなぐという動き
この作品では、二人で手を取り合うことが、力を合わせることの形として何度も出てきます。手をつなぐのは、とても単純な動きです。でも、隙間のある二人にとっては、いちばん距離を詰める動きでもある。ここから私の解釈。だから最初のうちの手のつなぎ方と、あとの回のつなぎ方は、同じ動きでも重さがちがって見える。動きが同じだから、関係の変化だけがくっきり浮かぶ。比較実験みたいな構造です。解釈
子どものころ色を入れ替えて描いた絵も、いま思えば同じ実験でした。黒と白を入れ替えても、二人の並び方が同じなら、関係は同じに見える。変えるのは一つだけ、ほかは固定する。仕事で原因を切り分けるときと同じ手順を、私は幼稚園の床の上でやっていたのかもしれません。好み
好きな理由3:友情として読む理由
私はいつも、二人の関係を「友情と読む理由」と「恋愛と読む理由」に分けて考えるくせがあります。この作品について言えば、公式の紹介にあるのは、クラスメイトで、正反対で、力を合わせる二人、ということだけ。そして私自身も、この二人は友情として読むのがいちばん美しいと思っています。正反対の人間が、相手を自分に寄せようとせず、ちがうまま横に立てるようになる。それは友情の、いちばん難しくて、いちばん良い形です。解釈
好きなキャラクターを一人選ぶなら、美墨なぎさ。正反対の相手と並び立つとき、彼女は相手に合わせて自分を変えすぎない。変えないまま、手だけは伸ばす。小さいころの私は、そこが格好いいと思っていました。いまもそう思っています。好み
大人になって見返すと、子どものころには見えなかったものが見えます。二人とも、相手に気をつかって言葉を飲みこむ場面がある。言い過ぎたあとに、目をそらす場面もある。正反対の相手と並ぶのは、子どもでも大人でも同じくらい難しい。職場で必要なことしか話さない私は、二人が少しずつ言葉を増やしていく過程に、いまのほうがずっと胸を突かれます。好み
はじめての人への入口
子ども向けの作品だと思って敬遠している人には、一話だけ、二人の「肩の隙間」を見てほしい。物語は分かりやすいので、追いかけなくても大丈夫。その分、立ち位置と手の動きに集中できます。何話か飛ばして、また一話観る。そのあいだに隙間の幅が変わっていたら、それがこの作品の面白さです。好み
ほかの好きな作品へ
二人の距離を測る目は、この作品で覚えました。『カードキャプターさくら』では服で、『美少女戦士セーラームーン』では大勢の並び方で、『ハイキュー!!』ではコートの立ち位置で、同じ測り方をしている。『VALORANT』で仲間との距離を声で詰めるときも、根っこは日曜の朝に描いた、色違いの二人の絵です。好み
正反対の二人が、ちがうまま横に立てるようになる。その変化は、台詞より肩の隙間に出る。