私の6選の一本目は『カードキャプターさくら』。憧れの原点です。公式サイトで紹介されている導入の設定より先には触れません。
再放送の夕方に
出会ったのは小学校の低学年。再放送でした。テレビの前で正座して観ていたのを覚えています。最初に目が止まったのは魔法ではなく、服でした。主人公が出かけるたびに、ちがう服を着ている。帽子も、手袋も、靴まで毎回ちがう。しかもその服は、どこかの店で買ったものではなく、友達が作っている。それが分かったとき、画面の向こうに「作る人」がいることを初めて意識しました。好み
公式サイトの作品紹介によると、原作はCLAMPの漫画で、月刊少女まんが誌「なかよし」で1996年6月号から2000年8月号にかけて連載されました。1998年から2000年にかけてNHKでアニメ化され、第1期と第2期は「クロウカード編」、第3期は「さくらカード編」が放送されています。事実[1]
その日から、家にあった端切れで人形の服を縫い始めました。針の持ち方も、そのとき覚えた。縫い目はがたがたで、袖は左右で長さがちがった。それでも、着せた瞬間に人形が少しだけ別人に見えた。あの感覚が、いまの衣装づくりまでつながっています。好み
好きな理由1:服を作る友達がいる
公式サイトのキャラクター紹介では、さくらの友達の大道寺知世について、さくらのことが大好きで、カードを探しにいくときの服はすべて知世が作っている、と書かれています。さくらの活躍をビデオに撮るのが喜び、とも。事実[2]
ここまでは公式。ここから私の解釈。私はこの設定を、二人の関係を「服」という形で毎回画面に出すしくみだと読んでいます。言葉で「応援してる」と言うかわりに、一着を仕上げてくる。袖の形や色に、作った人の考えが出る。服を見れば、その回の二人の距離が分かる。台詞より先に、衣装が関係を語っている。解釈
でもさ、毎回作ってもらった服を着るって、ちょっと大変じゃない? 私だったら、動きやすいのがいいって言っちゃう。
それは言っていい。着る人が言っていいことだから。……私が作るなら、まず「どう動きたいか」を聞く。似合う形は、そのあと。好み
ふうん。レイが作ったら、可愛くしろって言われないのはいいな。
好きな理由2:衣装にもデザインの担当がいる
公式サイトのクロウカード編のスタッフ欄には、監督の浅香守生さん、シリーズ構成の大川七瀬さん(CLAMP)、キャラクターデザインの高橋久美子さんと並んで、「コスチューム&カードデザイン」として、もこなさん(CLAMP)の名前があります。アニメーション制作はマッドハウスです。事実[3]
これを知ったのは大人になってからです。物語の中で知世が服を作り、作品の外でも服をデザインする人がいる。二重に「作る人」がいた。衣装を作るようになってから見返すと、裾の広がり方や、リボンの位置の決め方が、ちゃんと「動く人のための服」になっているのが分かる。止まった絵としてかわいいだけではなく、走って、跳んで、振り向いたときに形がくずれない。型紙を引く人間として、そこにいちばん感動します。解釈
好きな理由3:まっすぐな人を撮る人がいる
木之本桜は、私の好きなキャラクターの一人です。まっすぐで、迷っても戻ってくる。そのまっすぐさを、横でずっと撮っている友達がいる。撮る側と撮られる側の関係は、私には他人事ではありません。好み
私は小学校の高学年からモデルの仕事が増えて、撮られる顔とふだんの顔が分かれていきました。カメラを向けられると、表情は勝手に整う。だから、この作品の「撮る」はうらやましかった。ここから私の解釈。知世のカメラは、相手を整えるためではなく、相手がそのままでいることを喜ぶために向いている。撮られる側が自分を作らなくていいカメラ。そういう撮り方があるんだと、子どもの私は思いました。解釈
……それ、ちょっと分かる。試合の写真って、勝手に撮られると嫌だけど、仲いい人が撮ったやつは見られる。
そう、それ。誰が、どういうつもりで撮ったか。……今の、長かった?
はじめての人への入口
魔法少女ものに慣れていない人は、まず一話だけ。そのとき、物語を追うより「この回の服は誰が、何のために作ったか」を一つだけ気にしてみてください。服から入ると、二人の関係が見えてくる。話数が多い作品なので、一気に観なくていい。気に入った服の回だけ見返すのも、私はありだと思っています。好み
ほかの5本へ
この作品で覚えたのは、「誰かが誰かのために作ったもの」から関係を読むこと。『ふたりはプリキュア』で二人の距離を見る目が育ち、『美少女戦士セーラームーン』で並び方を読むようになった。『ハイキュー!!』では立ち位置、『ギヴン』では返事の遅さ。読む場所は変わっても、最初の教科書はこの作品の服でした。いまも型紙を広げるとき、少しだけあの夕方の再放送を思い出します。好み
服は、作った人と着た人のあいだの手紙。台詞を聞く前に、一着を見てみる。