『ギヴン』のTVアニメを最後まで観た人向けの、二周目の話です。展開にかかわるところは畳んであります。まだの人は開かずに、話数の目印だけ持って帰ってください。聞き手はスイ。作中の根拠を大事にするスイと、公式の余白を読む私。「ここから解釈」の線を一緒に引いてくれる相手です。
観直す前の確認
TVアニメはフジテレビの「ノイタミナ」枠で、2019年7月から9月まで放送された全11話。監督は山口ひかるさん、シリーズ構成・脚本は綾奈ゆにこさん、アニメーション制作はLerche。ノイタミナ枠では初めてのボーイズラブ作品です。事実[1]
物語は、ギターの腕が立つ高校生の上ノ山立夏が、同じ高校の佐藤真冬のギターの弦を張り替えたことから始まります。ギターを教えてほしいと頼まれて最初は渋った立夏は、真冬の歌声を聴いて考えを変え、中山春樹や梶秋彦と組んでいたバンドに真冬を誘います。事実[1]
一周目と二周目で、いちばん違って見えたのはどこ?
返事の速さ。一周目は会話の中身を聞いてた。二周目は、問いかけてから答えが来るまでの間を数えてた。真冬は、とにかく返事が遅い。作中の観察
遅い返事には、待っている側の顔も映るよね。私はそっちを見ていたのかもしれない。解釈
第1話のエンディング
エンディングテーマは、劇中のバンド「ギヴン」による「まるつけ」。ただし第1話だけは、センチミリメンタルの演奏による「まるつけ -Piano ver.-」が使われています。事実[1]
一周目は気づかなかった。二周目、第1話の終わりで手が止まりました。ここから私の解釈。第1話の時点では、まだ四人の音になっていない。だから同じ曲が、ピアノだけで流れる。最終話まで観たあとにこのエンディングを聴くと、まだ誰もそろっていない部屋の音に聞こえます。解釈
弦を張り替える手元
第1話で立夏が真冬のギターの弦を張り替える場面。一周目は出会いのきっかけとして流しました。二周目は、立夏がギターに触れているあいだ、真冬がどこにいて、どこを見ているかを見てほしい。私には、真冬が見ているのは立夏より先に、ギターのほうに見えました。解釈
中盤まで中盤で分かる事情押すと開きます
真冬のギターは、幼なじみの吉田由紀の形見。真冬は中学時代から由紀と恋人のような関係にあり、由紀を亡くしたあと、そのギターを立夏に直してもらったことがきっかけで立夏に懐いていく。立夏は、真冬が中学生のときの交際相手を引きずっていることに嫉妬を覚え、自分の好意に気づく。
二周目に観ると、あの張り替えは別の場面に見える。止まったままだったものを、事情を知らない人が、事情を知らないまま直した。知っていたら、たぶん立夏は手を出せなかった。ここは私の解釈です。事実[1]
知らずに直した、というところが大事なんだと思う。知っていたら、触れること自体をためらったはずだから。解釈
それは違う……って言いかけたけど、違わない。私も同じ場所で止まった。
スタジオの年上二人
バンドのリーダーでベースの春樹は映画専攻の大学院生。ドラムの秋彦は、幼いころからヴァイオリンを習い、大学でもヴァイオリンを専攻している大学生です。事実[1]
ベースとドラムはリズムの土台で、本来いちばん近くで呼吸を合わせる二人。それなのに、スタジオでの年上二人の会話は、四人の中でいちばん短いように私には見えました。二周目は、高校生組のやりとりの後ろで、年上二人がどこに立っているかを見てください。解釈
中盤まで年上組の事情押すと開きます
作品の人物紹介を読むと、春樹は以前から秋彦に恋愛感情を抱いている。秋彦は、かつて恋人だったヴァイオリニストの村田雨月と、別れたいまも同居していて、互いに行き詰まった関係にある。
私が観たかぎり、TVアニメの中でこの二人の話は多くを語られません。語られないぶん、スタジオでの距離に出ていると私は読みました。公式に書いてあるのは関係の事実だけで、距離の読み方は私の解釈です。事実[1]
第9話だけ日本語の題
各話の題は、第1話「Boys in the Band」、第2話「Like Someone In Love」と英語が続き、第9話だけが「冬のはなし」。同じ題の曲が、バンド「ギヴン」の劇中歌として第9話と第10話で使われています。事実[1]
英語の題の中に、一つだけ日本語がある。一周目は見落としていました。二周目は、再生する前に題の一覧を先に眺めてほしい。どこで言葉が切り替わるかを知っていると、そこまでの八話が、言えないまま過ぎていく時間に見えてきます。解釈
結末・正体結末(第9話以降)押すと開きます
迎えたライブ本番で、真冬は自分の気持ちに正直になり、歌詞をその場で歌い上げる。ライブは盛況のうちに成功し、そのあと立夏と真冬は互いへの好意を認めて、付き合いはじめる。
ここから私の解釈。いちばん返事の遅かった人が、いちばん大きな返事を、一度に返す。二周目は第1話から、真冬が答えを保留した場面に印をつけていってほしい。私のメモでは、その印がぜんぶ、あの日の舞台につながりました。事実[1]
返事が遅い人たち
私も、大事な返事ほど遅くなる。だから真冬の遅さを、悪いことだとは思えなかった。好み
私は逆。仕事の返事は速い。でも速く返せるのは、手順が決まってることだけ。決まってない気持ちは、たぶん私も遅い。……今の、長かった?好み
ちょうどいい長さだったよ。
二周目は第1話の終わりで止めずに、ピアノのエンディングを最後まで聴く。そこから全11話ぶんの返事が始まる。