疲れた夜、何かを観たい気持ちと、何も選べない気持ちが同時にある。そんな日のために、ナギとハルが「負担で選ぶ」方法と「いいところで止める」コツを話しました。特定の作品名は挙げず、アニメにも漫画にも小説にも、どの棚にも使える考え方だけを置いています。
「今日はどれにする?」の前に
ナギ、今日なに観る? 僕、ずっと気になってたやつ、今夜こそ一話目からいこうかなって。
いいね。私は今日、ちょっと無理かも。何か観たいんだけど、選ぶところで疲れちゃう日ってない?
ある……。おすすめの一覧を眺めて、気づいたら三十分たってて、結局なにも観てない夜。
そうそう。だからそういう日は、作品を選ぶ前に、自分にどれくらい余力があるかを先に見るようにしてる。
余力?
面白さより、負担で選ぶ
疲れてる日に「何がいちばん面白いか」で選ぶと、私はだいたい重いのを選んじゃうんだよね。だから、面白さじゃなくて負担で選ぶ。見てるのは三つ。長さ、音、気持ちの重さ。好み
三つか。長さはなんとなくわかる。
長さは、終わりが見えてるかどうか。一話が短いもの、一章で区切れる本、一つの話がその回のうちに終わる作り。続きが気になる終わり方が続くと、止めどきを失っちゃうから。
音は?
耳がどれくらい疲れてるか。大きな音や叫ぶ場面が多いと、内容が良くても体がびっくりする。静かな会話や生活の音が多いものなら、音量を下げても楽しめる。字幕をつけて、小さめの音で観る日もあるよ。
気持ちの重さは、悲しい話かどうか?
悲しいかどうかより、「観終わったあと、何かを抱えたまま寝ることになるか」かな。結末を知ってる好きな作品の、好きな回を観直すのは、重さがほとんどない。知ってる場所に帰るみたいな感じ。好み
初めて触れる作品は、それだけで少しエネルギーを使います。登場人物の名前や関係、その世界の決まりごとを覚えながら観ることになるからです。疲れた夜に一度観た作品へ戻りたくなるのは、その手間がいらないからかもしれません。根拠のある推測
「一歩」の夜と、「休む」夜
でも、疲れてる日だからこそ、新しいのに手を出すと気分が変わることもない? 僕はそれで救われたことがあるんだよね。小さい一歩でも、踏み出すと少し元気になるっていうか。
あるよね。ハルのそういうところ、私は好き。
だから今日もさ、ナギも一話目だけ、いってみたら——
うーん。今日の私は、立ち上がらなくていい日かも。
……あ、ごめん。また前向きなほうに急いじゃった。
ううん。ハルの「一歩」が効く夜もあるし、私の「休もう」が効く夜もある。どっちかが正しいんじゃなくて、今日がどっちの夜なのかを先に聞いてもらえると、うれしいかな。
そっか。応援って、背中を押すだけじゃなくて、待つ形もあるんだ。……じゃあ聞き直す。ナギ、今日はどれくらい残ってる?
一話ぶん。それも、知ってる一話。
了解。僕は新しいやつの一話目にする。そのかわり、一話で止める。
いいところで、止める
その「一話で止める」が難しいんだよね。一話のつもりが、気づいたら次が始まってる。
次の回が自動で始まる設定なら、観る前に切っておくの。それと、止める場所を「盛り上がったところ」じゃなくて「落ち着いたところ」にする。
落ち着いたところ?
ごはんを食べ終わった場面とか、誰かが「おやすみ」って言った場面とか。登場人物がひと息ついたところで、私もひと息つく。気になる終わり方の手前で閉じて、続きは明日の楽しみにしておくんだ。
本なら、章の終わりまで待たなくても、場面が変わったところで閉じていいのか。
うん。しおりを挟むときに、最後に読んだ一行だけメモしておくと、次にひらいたとき戻りやすいよ。
最後まで行かなくても
でも、最後まで観られなかったら、ちょっと負けた気がしない?
前はしてた。話題に追いつかなきゃって、好きなものを義務みたいに観てた時期があって。でも、途中で止めた作品も、途中までの時間はちゃんと私のものだったなって思う。
一話だけでも、その一話を観たことは変わらないもんね。
そう。観ない夜があってもいい。また観たくなったら、しおりのところから始めればいいし。
観た本数や読み終えた冊数は、作品をどれだけ好きかの物差しではありません。一話ぶんの時間を、自分のために使えた。それだけで、今日の夜はちゃんと物語とつながっています。解釈
持ち帰るしおり:今夜は「長さ・音・気持ちの重さ」の三つで一本を選び、登場人物がひと息ついた場面で止めてみる。最後に観た一場面を、一行だけメモしておく。