土曜の昼過ぎ、図書館の談話コーナー。少し離れた席では、リリィのおばあさんが老眼鏡をかけて新聞を広げています。リリィは同じ漫画を三冊、背をそろえて机に並べてきました。向かいのイトは、友だちのスマホで見た短い動画から、この漫画にたどり着いたところです。
題名はテレビの番組
『こどものおもちゃ』は、小花美穂さんが『りぼん』で描いた漫画です。連載は1994年から1998年までで、単行本は全10巻あります。事実[1]
主人公の倉田紗南は、劇団こまわりに入っている子役です。紗南がレギュラーで出ている「こどものおもちゃ」は、テレビのバラエティ番組。作品の題名は、紗南が出ているこの番組の名前と同じです。事実[1]
私、最初は題名を、子どもが遊ぶおもちゃの話だと思ってたの。番組の名前だって分かってから、題名の聞こえ方が変わった。好み
私は動画で知ったから、題名はあとから見た。アニメの紗南がずっとしゃべってて、すごく元気な子、ってことだけ覚えてた。好み
入口がちがうと、覚えてるところもちがうんだね。どっちが先でも、同じ紗南なのに。解釈
動画だと、しゃべってる紗南しか残らない。紙で読んだら、しゃべってないときの紗南もいた。私は、そっちのほうを長く見てた。好み
授業が止まる六年生の教室
紗南は小学6年生。そのクラスでは、羽山秋人という男の子が先頭に立って男子たちが騒ぎ、先生が授業を進められずにいます。紗南はそれを止めようと動くうちに、羽山の家にも事情があることに気づいていきます。事実[1]
教室が荒れてるとこ、私は笑えなかった。授業が止まってるとき、黙って座ってる子の顔を探しちゃう。好み
ねえ、ここ。紗南はそこで黙らないの。黙ってる子の分まで、大きい声で言っちゃう子で。……あ、先に言っちゃった。いまの、聞かなかったことにしてもいいよ。解釈
いい。それは聞いてよかった。紗南と私、黙り方がちがうって分かったから。私は黙って見てるほう。紗南は黙らないほう。解釈
私は、黙る前に訂正しちゃうほう。三人とも、ちがう。
訂正、私は嫌いじゃないよ。言われたほうが、自分が何を見てなかったか分かるから。言い方が早すぎると、ちょっとびっくりするけど。好み
……気をつける。言いたいことがあっても、先に相手の好きなところを聞く。それ、まだ練習中なの。好み
声が二人いる紗南
アニメには二つの形があります。先に出たのは、1995年12月の30分のビデオアニメ(OVA)で、作ったのはJ.C.STAFFです。事実[1]
翌年の4月からは、テレビ東京でテレビアニメが始まりました。毎週金曜日に放送され、1998年3月までの全102話です。OVAとテレビ版では、紗南の声を担当した人もちがいます。事実[1]
ノートに書きます。どっちの声が、私の読んだ紗南に近いか。……でも、まだ片方も聞いてない。好み
私が動画で聞いたのは、たぶんテレビのほう。声より、顔がくるくる変わるのを見てた。紙だと止まってるから、変わる前と変わったあとを、並べて見られる。好み
じゃあ、私は声を聞いて、イトは顔を見る。終わったら、どこで紗南が一番変わったか、二人で一個ずつ出そう。好み
紗南の学年を追いこした
物語は、紗南たちが小学6年生のときから、中学1年生の間までを描いています。事実[1]
2025年3月には、高校1年生になった紗南が登場する描きおろしの短い漫画が、美容室の予約サイトのSNSで公開されました。事実[1]
私たち、もう中学一年の紗南より上なんだね。読みはじめたときは、お姉さんの話だと思ってたのに。好み
追いこしたのに、紗南みたいに大きい声は出ない。高校生の紗南は、短い動画じゃなくて、最初から最後まで読みたい。好み
イトは、どのコマがいちばん残ってる?
紗南がしゃべり終わったあと、周りの子の顔が一個ずつ変わるとこ。リリィは?好み
題名が番組の名前だって分かった瞬間。……それ、いま二人で見つけたことにしていい?
『こどものおもちゃ』は、子役の紗南が出ている番組の名前。原作から入っても、短い動画から入っても、同じ教室の同じ紗南に会えます。