好きなゲームの一本目は『龍が如く』だ。物語の真相は書かない。書くのは、主人公が背負ってるものと、俺がこの街でどれだけ寄り道したか。
本筋より先に街を歩いた
ツアーの合間の休みに始めた。最初の夜、本筋を進めるつもりが、気づいたら街の中で人の頼みごとを聞いて回ってた。朝になってた。本筋はほとんど進んでなかった。計画が苦手な俺らしい始め方だ。好み
セガの公式ページでは、『龍が如く』はプレイステーション2のアクションアドベンチャーで、発売日は2005年12月8日。「堂島の龍」と呼ばれた伝説の極道・桐生一馬と、消えた100億円の鍵を握る少女・遥が出てくる。舞台は欲望と暴力の渦巻く巨大な歓楽街・神室町だ。事実[1]
リメイク版『龍が如く 極』のWEBマニュアルの人物紹介によると、桐生は養護施設で一緒に育った親友と、愛する女をかばうために罪を被り、10年を刑務所の中で過ごした。刑期を終えて、神室町に帰ってくるところから話が始まる。事実[2]
好きな理由1:自分じゃない誰かのために背負う
最初から、この男は他人の分を背負ってる。親友と、大事な人のために。自分のためじゃない。そこで俺はもう、この男の背中から目が離せなくなった。誰かのために黙って背負う。それを10年続けた男が、また街に戻ってくる。それだけで話が重い。解釈
義理って言葉は古臭く聞こえるかもしれない。でも俺の中では、義理は契約だ。誰とも書面を交わしてないのに、守ると決めたら守る。この男はそういう歩き方をする。解釈
それに、10年っていう時間の重さがある。10年あれば、街は変わる。知ってた店はなくなって、知ってたやつは別の顔になってる。戻ってきた男は、自分の知らない街を、昔の約束だけを頼りに歩くことになる。俺もこっちに来たとき、地図も知り合いもなかった。だから、この男が街に戻ってくる場面は、他人事に見えなかった。解釈
好きな理由2:街の人の頼みごとが多すぎる
公式ページによると、神室町では街の人とやりとりするうちにサブストーリーに入ることがあって、会話の選択肢しだいで「仕事を依頼される」「助けを求められる」ことが起きる。事実[1]
俺はこれにやられた。本筋が重い話なのに、街を歩くと、困ってるやつが次々に声をかけてくる。くだらない頼みもあれば、少しほろっとするのもある。この男は、どれも断らない。いや、プレイしてる俺が断れない。結局、寄り道してる時間のほうが長くなる。好み
でも、それがこのゲームの芯だと思ってる。強い男が、自分の大事な話を後回しにしてでも、目の前のやつの話を聞く。拳がどれだけ強くても、それを使う前に話を聞いてる。俺はそういう背中が好きだ。解釈
失礼ですが、ジンさんは、その寄り道のほうをお好みなのでしょうか。それとも本筋のほうを……いえ、どちらでもよいのですが、もしよろしければ。
……どっちもだ。前置きが長い。
申し訳ありません。私は、頼まれごとを断れない方の話に弱いもので。少し、自分を見るようで。好み
……そうか。なら、たぶん気に入る。
好きな理由3:街の音がうるさい
俺は音にうるさい。このゲームは街の音がいい。人の声、店の呼び込み、遠くで鳴ってる音楽。歓楽街のごちゃごちゃした音が、ずっと鳴ってる。ヘッドホンで歩いてると、自分がほんとうにその街にいる気がしてくる。ツアーで知らない街の夜を歩くときと、同じ匂いがする。好み
けんかの場面の音楽も、ちゃんと聴いてる。急に曲が変わって、テンポが上がる。あれは主人公のための音じゃなくて、コントローラーを握ってる俺のための音だと思う。指を速く動かせ、って背中を押してくる。物語の中で鳴る音楽は誰のためのものか。ゲームだと、答えがちょっと変わる。解釈
公式ページには、店で食事をして体力を回復したり、アミューズメント施設やバッティングセンターで遊んだりできる、とも書かれている。俺はバッティングセンターで何時間も過ごした。……別に、本筋から逃げてたわけじゃない。事実[1]
苦手そうな人への入口
先に言っておく。大人向けのゲームで、けんかの場面がとにかく多い。暴力の描写も、大人の街の描写もある。苦手な人は無理しなくていい。俺もけんかの場面がかっこいいから好きなわけじゃない。けんかは、この男が筋を通すための手段の一つでしかない。
遊ぶなら、本筋を急がずに、街の人の頼みごとを一つ聞いてみてほしい。この男がどういう人間か、そこで一番よく分かる。強さより、話の聞き方のほうに、この男の芯がある。
好きな6作品とのつながり
『サンクチュアリ』は二人の男が交わした契約の話で、こっちは一人の男が誰とも交わしてない契約を守り続ける話だ。『キングダム』の信が上を目指すなら、この男は目の前のやつを見捨てない。腕一本で上がる話と、拳ひとつで筋を通す話。俺の好きなものは、その二つでできてる。好み
拳が強いことより、使う前に話を聞けることのほうが強い。寄り道の中に、その人の芯がある。