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よっしゃ、俺の6選の一本目だ! 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。長い名前だから、ここからは『こち亀』で行くぞ。どの話から読んでもいい漫画だから、筋の先のことは何も言わねぇ。安心してくれ。
船の上の回し読み
遠洋の船に乗り始めたころの話だ。何か月も陸を見ない航海で、船の中の楽しみってのは限られてる。飯と、寝ることと、漫画だ。誰かが港で買い込んできた単行本が食堂の棚に並んでて、それをみんなで回し読みする。中でも一番ボロボロになってたのが『こち亀』だった。表紙は取れかけ、ページの端は潮でふにゃふにゃ。それでも誰も捨てようとしなかった。好み
海が荒れた夜は、寝床で体を突っ張ってないと転がり落ちそうになる。眠れねぇし、怖ぇし、家も遠い。そういう夜に、懐中電灯で『こち亀』を読むんだ。両さんが何かやらかして、最後にこっぴどく叱られる。それで、ぶはっと笑う。隣の寝床からも笑い声がする。同じ巻を読んでるんだよ。荒れた海の夜も、両さんがいれば笑えた。本当にそうだった。好み
集英社の書籍ページによると、作者は秋本治さんで、ジャンプコミックスの第1巻は1977年7月9日に出ている。第1巻の紹介文は、両さんがコンバット・シューティング・クラブの顧問になる話から始まっている。事実[1]
好きな理由1:めちゃくちゃなのに人情でまとまる
両さんって男は、まあ、ひどい。金もうけの話にすぐ飛びつくし、仕事はサボるし、調子に乗ると止まらない。読んでて「おいおい」って言いたくなる場面ばっかりだ。でもな、困ってる子どもや年寄りの前に立つと、急に顔が変わる回がある。損するって分かってても、そっちへ走っていく。めちゃくちゃな男が、最後の数ページで人情を見せる。その落差に、俺は毎回やられた。解釈
海の男にもそういうやつがいる。陸ではだらしないのに、時化(しけ)の甲板では誰より先に動く。だから両さんは、俺にとって作り話の人じゃなかった。船の上に、ちっちゃい両さんが何人もいたんだ。好み
好きな理由2:一話で腹いっぱいになる
『こち亀』は、だいたい一話で話がまとまる。前の回を覚えてなくても読める。これが船の上ではありがたかった。仕事の合間の短い休みに一話、寝る前に一話。途中で呼ばれても、続きが気になって眠れないってことがない。定食みたいなもんだ。一皿で、ちゃんと腹いっぱいになる。解釈
一話で終わるのに、ずっと読み続けたくなるのが不思議なんだよね。次はどんな騒ぎになるんだろうって。解釈
いいじゃん、それ! そうなんだよ。毎回ちゃんと帰ってくるから、安心して次の騒ぎに出かけられるんだ。冒険も一緒だろ。帰ってくるまでが冒険だ。解釈
好きな理由3:何でも出てくる
この漫画、話の題材が本当に何でもありなんだ。おもちゃ、乗り物、町の祭り、昔の遊び、最新の機械。両さんが首を突っ込むたびに、俺の知らない世界がひとつ増える。陸の流行から何か月も置いていかれる船の上で、『こち亀』は窓みたいなもんだった。読み終わると、陸に戻ったら何を見に行こうか、仲間と話がはずんだ。解釈
終わっても続きが来た
201巻の紹介文には「まさかのコミックス続刊!」とあって、連載が終わったあとにいろいろな場所で載ったエピソード11編がまとめられている。紙版の発売は2021年10月4日だ。事実[2]
これを本屋で見つけたとき、思わず「おかえり!」って声が出た。港で仲間の船を迎えるときと同じ気持ちだ。好み
集英社は2025年12月に、新しいアニメ「新こちら葛飾区亀有公園前派出所」の制作決定を知らせている。お知らせの中には「連載開始50周年記念」という言葉もある。事実[3]
陸に戻ってからの読み方
いまは家で、子どもたちと取り合いになる。うちは子どもが5人いるから、同じ巻を順番待ちすることもある。面白いのは、笑うところが年ごとに違うことだ。下の子は両さんの顔芸で転げ回って、上の子は町の人とのやりとりで黙る。俺はというと、最後の数ページで鼻をすすってる。「父ちゃん、ギャグ漫画で泣いてる」って笑われるけど、泣けるもんは泣けるんだ。好み
船の上で読んだ話を、陸で子どもと読み直す。同じページなのに、揺れてないだけで少し違って見える。あの夜に笑わせてもらった借りを、いま家族で返してもらってる気がするんだ。好み
苦手そうな人への入口
巻が多すぎて、どこから読めばいいか分からない。そう言われることが多い。俺の答えは「どこからでもいい」だ。図書館や古本屋で、表紙が気になった巻を一冊だけ手に取ってくれ。中の一話を読んで、笑えたらもう一話。笑えなかったら別の話へ。それでいい。順番どおりに読まなきゃって思うと、こんなに楽しい漫画が宿題になっちまう。
ほかの6選とのつながり
ガキのころに『ドラゴンボール』で覚えた「腹いっぱい食って笑う」って気持ちを、大人になって船の上で支えてくれたのが『こち亀』だった。陸に置いてきた家族を思い出すのは『となりのトトロ』の役目で、笑わせてくれるのは両さんの役目。俺の6選は、そうやって役割分担してるんだ。好み
長い夜には、一話で腹いっぱいになる漫画を一冊。めちゃくちゃな男の人情が、ちゃんと朝まで連れてってくれる。