日常

夕飯のあとのチャットで佐倉双葉を熱弁する

ネタバレの範囲 結末まで触れます ゲーム『ペルソナ5』(PS4/PS3版)の結末までと、完全版『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』で足された結末に一か所。テレビアニメ版『PERSONA5 the Animation』は、どこまで描いたかと名前・声の違いに触れます。双葉が仲間になるまでの事情、ある集団の正体、取調室のあと、最後の春を畳んでいます

月曜の夜、ノアはドアの前に夕飯を置いて自分の部屋へ戻る。テレビアニメで佐倉双葉に会ったばかりだと一行送ると、クロの吹き出しが急に長くなった。ゲーム『ペルソナ5』の結末までネタバレありです。

この記事は結末までのネタバレを含みます

範囲ゲーム『ペルソナ5』(PS4/PS3版)の結末までと、完全版『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』で足された結末に一か所。テレビアニメ版『PERSONA5 the Animation』は、どこまで描いたかと名前・声の違いに触れます。双葉が仲間になるまでの事情、ある集団の正体、取調室のあと、最後の春を畳んでいます

観終えた人が二周目をもっと楽しむための記事です。中盤の展開と、結末・正体のくわしいところは、押すと開く部分に分けてあります。

こんな人に
『ペルソナ5』を遊んだ人、テレビアニメで佐倉双葉に会った人へ。まだ途中の人は、畳んだところを開かずに読めます。
話している人
クロ × ノア
チャット ノアの部屋とクロの部屋(同じアパートの二階) 十月の月曜、夜八時すぎから

十月の月曜。ノアは駅からの帰りに八百屋へ寄り、根菜の煮物をこしらえて、二階の奥のドアの前に置いた。「置いたよ。冷める前に」と声をかけ、返事を待たずに自分の部屋へ戻る。返事はいつも、声ではなく画面に届く。

クロ

さんきゅ。いま取った。

ノアは座卓でノートパソコンを開いた。週末から少しずつ観ているテレビアニメの続きを一話。手帳を横に置いたまま観終えて、スマホを取る。

双葉、出てきた。

既読
ノア

クロの推しの子。

既読
ノア
クロ

先に聞いとく。どこまで観た?

テレビの分は最後まで。

既読
ノア

ゲームはやってない。

既読
ノア
クロ

把握。ゲームが先で、アニメはあとからテレビで。だから、ゲームの先の話をすると、ノアの知らない場所まで行く。結末までネタバレしていい?

ゲームは2016年9月15日発売(PS3/PS4)。テレビアニメは2018年4月〜9月放送

いいよ。全部。

既読
ノア

クロの言い方で聞きたい。

既読
ノア
クロ

……長くなる。煮物、食べながら打つ。

そこから先、クロの吹き出しは一つずつが長くなった。句読点が増えて、ところどころ、です・ますが混ざる。

クロ

まず入口。双葉は怪盗団の天才ハッカー。人づきあいは苦手で、口を開けばオタクっぽい一言がいちいち濃い。でも、仕組みを読む腕と、物事を見立てる鋭さは折り紙付き。そういう子として出てきます。

クロ

最初に持っていかれたのは、仮面。怪盗になると、みんな仮面をつけて衣装が変わる。双葉はサイバースーツで、仮面が暗視ゴーグルなんです。

クロ

ほかの仲間の仮面は、顔を隠すための形に見える。双葉のだけは、暗いところで見るための道具。そこで、もうだめでした。

見るための仮面。

既読
ノア

クロの猫のアイコンは、どっち?

既読
ノア
クロ

(スタンプ:猫がそっぽを向く)

クロ

次。このゲームの仲間には、タロットの札が一枚ずつ割り当てられてる。双葉は隠者。隠者って、そのままだろって、最初はちょっと笑った。

クロ

でも、双葉と仲よくなって手に入る力が、戦うときと探すときの手助けなんです。前に出て殴る札じゃない。こもったまま、いちばん遠くまで見る札。ゲームの仕組みのほうで、もう一回やられました。

旅人と近いね。でも、

既読
ノア

動かずに遠くを見るのは、旅とは逆。

既読
ノア
クロ

逆なのに、届く先は一緒かもしれない。それ、メモしとく。

クロ

あと、これは仕組みの話。このゲーム、本筋の場面と、仲間と過ごす特別な場面以外の会話は、だいたいスマホの文字のやりとりで出てくる。誘いの連絡も文字。仲間の声より先に、文字が流れてくるゲームなんです。

いまの私たちみたい。

既読
ノア
クロ

それな。でも、返信は俺のほうが速い。

知ってる。いつも三秒。

既読
ノア
クロ

双葉の文字も、速くて濃い側だった気がする。仲間のやりとりの中で、あの子の行だけ温度が高い。これは俺の記憶で言ってるだけ。あてにしすぎないで。

アニメの主人公、名前があった。

既読
ノア
クロ

ゲームの主人公には、決まった名前がない。アニメは雨宮蓮。漫画になると、来栖暁。

版ごとに、名前が三つ。

既読
ノア

ノアは手帳の綴じ目の側に、名前を三つ縦に並べて書いた。左手のペン先が、綴じ目に少し沈む。

双葉の声は?

既読
ノア
クロ

声は、ゲームとアニメで同じ人。とくに断りがなければ、声はどっちも共通。双葉は悠木碧さん。

名前は変わって、声は残る。

既読
ノア
クロ

それで合ってる。版を渡っても、残すものは残した。……そういう読み方、俺にはできない。ノアの見方、毎回保存したくなる。

アニメ、日付が出た覚えがない。

既読
ノア
クロ

ゲームは、日付で一日ずつ進む。天気も日付で決まってて、雨の日は誰が遊んでも雨。だから、双葉と過ごす日も、カレンダーの一日として残るんです。

クロ

アニメで日付が出るのは、二回だけ。始まりの春の一日と、終わり近くの冬の一日。

第1話Aパートの「4月9日」と、第28話アバンの「12月23日(金)」

日付を消して、場面を選んだんだね。

既読
ノア
クロ

アニメにするときは、全部のイベントは入らない。そのかわり、入れた場面は全部、選ばれた場面。どっちが上ってことはない。

そこで一度、クロの吹き出しが途切れた。数十秒ぶん、何も来ない。ノアが冷めかけたお茶を一口飲んだところで、短いのが二つ届いた。

クロ

猫がキーボードに乗った。

クロ

いま、どいた。続ける。

アニメの双葉の回、途中で一回止めた。

既読
ノア
クロ

そこから先は、中身を全部言う。畳んでおく。開くかどうかは、ノアに任せる。

中盤まで中盤の展開(双葉が仲間になるまで)押すと開きます

クロ「双葉は、お母さんを亡くしています。そのあと親戚の家から家へ回されて、行き場がなかった。そこを惣治郎さんが養女として迎えた。中学を出てからは学校に進まず、自分の部屋から出なくなっていました」

クロ「双葉の心の中の場所、パレスはピラミッドで、罪は憤怒。……誰への怒りかは、遊ぶと分かります。俺は、自分自身に向いた怒りだと読みました」

クロ「お母さんの葬式で、双葉は大人たちから、お母さんが死んだのはお前のせいだと押し付けられた。それがもとで、自分の心の中に、自分を責めるお母さんの影を作ってしまう。責める声を、自分で作って、自分で聞き続けていたんです」

クロ「怪盗団と出会って、言葉をかけられるうちに、双葉は本当のお母さんを思い出す。それでペルソナに目覚めて、仲間になる。そこからは、それまでナビを兼ねていたモルガナに代わって、後ろから支えるナビゲーターです」

クロ「外から届いた言葉が、内側で鳴りつづけていた声をほどく。俺はこの場面でコントローラーを膝に置いて、窓を指二本ぶん開けました。部屋の空気を入れかえたくなったので」[1]

読んだ。

既読
ノア

クロは、どこを覚えてた?

既読
ノア
クロ

畳んだ中の、双葉の心の中の場所の形。閉じていて、奥に大事なものがあって、出入り口は本人が塞いでる。あれは双葉の部屋そのものだと思いました。外から開けるんじゃなくて、中から開けるのを待つ場所。

待つ場所、か。

既読
ノア
クロ

おまけの話。アニメの円盤の特典に、夏休みに仲間になったばかりの双葉とみんなが打ち解けるための計画を練る話があるらしい。俺はそれ、まだ観てない。

Blu-ray&DVD『PERSONA 5 the Animation vol.7』完全生産限定版の特典「Summer diaries」

先に観たら、感想を送る。

既読
ノア
クロ

了解。……次、少し重い。名前の話。これも畳む。

中盤まで中盤の展開(ある集団の名前)押すと開きます

クロ「物語の途中で、メジエドっていう、国をまたいだクラッカーの集団が出てきます。最初にその名前で動きはじめたのは、双葉でした。本人は義賊のつもりだった」

クロ「でも、その名前を名乗るやつが、あちこちの国で勝手に増えていった。そいつらはネットの犯罪に手を出しはじめる。全員を止めることはできなくて、双葉は手を離して、放っておくしかなかった。それで、のちに別の名前、アリババを名乗るようになります」

クロ「自分が付けた名前が、自分の知らないところで人を傷つける看板になる。俺はここが、このゲームでいちばん怖い場面だと思ってます。名前は、手を離したら戻ってこない。だから双葉は、名前のほうを置いて、次の名前で前に進んだ」

クロ「双葉は、名前をいくつも持つ子です。メジエド、アリババ、怪盗団ではナビ。心の中の力、ペルソナの名前も、物語の途中で変わる。名前を変えるたびに、少しずつ外へ出てくる。俺には、そう見えました」

クロ「ここは短く言います。ゲームの中の話です。現実でまねするのは、やめてください。理由が義賊でも」[1]

呼び名が、知らない所で育つこと、ある。

既読
ノア

訳した言葉も、たまにそう。

既読
ノア
クロ

手を離れた名前の行き先、ノアのほうが詳しそう。今度、長文で聞かせて。

クロ

あと一人だけ、どうしても入れたい人がいる。双葉の家の大人。

中盤まで中盤の展開(佐倉惣治郎のこと)押すと開きます

クロ「惣治郎さんは、裏路地で純喫茶ルブランをやってるマスターです。口数は少ないけど、根は世話焼き。双葉のお母さんの若葉さんとは古い知り合いで、若葉さんが亡くなったあと、あちこちの親戚に預けられては出されていた双葉を、放っておけずに引き取りました」

クロ「惣治郎さんと仲よくなっていく話の中に、双葉の伯父が出てきます。お金に困って、惣治郎さんを脅しにくる」

クロ「部屋の中の双葉が知らないところで、ドアの外の大人がひとりで矢面に立ってる。俺には、そう見えました。双葉の物語は、部屋の中だけで出来てない。外で黙って立ってる人の分も入ってる」

クロ「……ドアの前に器を置いて帰る人の話を、俺は他人事として読めませんでした。それだけです」[1]

クロ、そういうの急に言う。

既読
ノア
クロ

草。忘れて。煮物の礼ってことで。

忘れない。手帳に書いた。

既読
ノア

入力中の表示が出て、消えて、また出た。次の吹き出しが来るまで、いつもより少し長くかかった。

クロ

……ここから結末。ノアが止まってる場所の、その先です。

結末・正体結末(取調室のあたり)押すと開きます

クロ「テレビシリーズは、取調室で明智が主人公に銃を向けて撃つところまでを描いて終わります。ノアが止まってるのは、そこ」

クロ「でも、あれで終わりじゃない。主人公とモルガナは、それより前に明智の言葉の引っかかりから、明智が主人公を消すつもりでいることをつかんでいた。だから先に手を打っておいて、明智が撃ったのは、認知の世界に現れた主人公のほうだった。本物は生きてて、冴さんの協力もあって、外に出ます」

クロ「その仕掛けには、双葉がいます。ちょうどいい瞬間にイセカイナビを起動させる役。どうやったかは、ここには書きません」

クロ「舞台裏が明かされるのは、全部が終わって、ルブランに戻ってから。双葉の口から語られる。後ろで回していた人の仕事は、終わってから初めて話せるんです。……俺はここで、口から声が出ました。めずらしく」

クロ「アニメは、このあと特番で、獅童との決着と物語の完結までを描いてます」[1]

声、出たんだ。

既読
ノア

聞きたかった。

既読
ノア
クロ

一文字だった。録ってない。

結末・正体結末(最後の春)押すと開きます

クロ「戦いが終わって、モルガナは別れを告げて消える。メメントスも、イセカイナビも消える。主人公は警察に出頭して、少年院に入れられます」

クロ「そこから主人公を外に出したのは、昼の世界の仲間たちでした。署名を集めて、証人を探して。異世界の力じゃなくて、手で集めた名前で、仲間を取り戻す」

クロ「最後は春。怪盗団のみんなを乗せて、真がハンドルを握る。行き先は主人公の生まれた町で、そこで物語が閉じます。部屋から出なくなっていた子が、最後はみんなと同じ車で、知らない町まで行く。俺は最後の場面のあいだ、コントローラーを置いたまま、ずっとそれを考えてました」[1]

クロ

もう一個だけ。後から出た完全版で、三学期が足されてる。そこは双葉にとって、いちばんきつい選択の場所だと思う。

完全版『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』は2019年10月31日発売(PS4)

結末・正体完全版で足された結末押すと開きます

クロ「三学期、人々の認知が書き換えられて、死んだはずの人が生きている世界になります。その中に、双葉のお母さんの若葉さんもいる」

クロ「その世界を作ったのは、丸喜っていうカウンセラーでした。悪意じゃなくて、人の苦しみを取り除きたくて。怪盗団は、その丸喜を倒して、丸喜が用意した幸せを受け取らないほうを選ぶ」

クロ「双葉にとっては、お母さんが生きている世界を、自分たちの手で終わらせる側に回るってことです。どっちが正しいかは、俺には決められない。でも、目を開けたまま本当のほうを見ると決めた子だと、俺は受け取りました。暗視ゴーグルの子なので」[1]

最後の、読んだ。

既読
ノア

ゴーグルの話に、戻ってきた。

既読
ノア
クロ

最初に言った場所に、最後に着く。設計どおり。……ずるい

そこは私、少し違う読み。

既読
ノア

双葉は、聞く子に見える。

既読
ノア

ナビって、聞いて伝える役でしょ。

既読
ノア
クロ

……否定できない。畳んだ中の話も、見る前にまず聞いてた。俺は見るほうに寄りすぎてた。ノアの読み、今夜のぶんの二枚目のセーブにする。

器は明日でいい。寝て。

既読
ノア
クロ

器は洗って朝ドアの前。……特番を観たら、どこで止めたか教えて。続きは、そこから。

ノアは手帳を閉じて、座卓の端に置いた。廊下の向こうで、何かを流しに置く小さな音がした。それきり、画面は静かになった。既読の印だけが、少し遅れてついた。

この記事の作品

この記事に出てくる言葉

用語集をすべて見る →

話した人 クロ 顔を見せずに物語を追う天才ゲーマー クロの記事をもっと読む →

次に読む

記事一覧へ

ページの先頭へ