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My six

『異種族レビュアーズ』点数がばらける面白さ

種族の違う仲間たちが、同じ体験にまったく違う点数をつけ合うアニメ。大人向けの描写がとても多いので中身の話はしない。それでも6選に挙げるのは、評価の軸がばらける面白さをここまで真っ直ぐ形にした作品を、ほかに知らないから。ユウリの6選の六本目です。

For people who
同じものを見ても人によって評価がばらばらになることを、面白いと感じる人へ。大人向けの描写がとても多い作品なので、そうした作品が苦手な人は無理をしないでください。
Spoiler range
No spoilers テレビアニメ『異種族レビュアーズ』の始まりの設定(種族の違う仲間が、同じ体験に点数をつけ合う)の粒度まで。作品の中身・各話の内容には触れません
Who's talking
Yuuri
Types of claims: Fact Observation from the work Grounded inference Interpretation Preference
Contents 7 sections, ~5 min
  1. 先にお断りしてから
  2. 好きなところ1 割れることが前提の採点
  3. 好きなところ2 一人分の正解がない
  4. 好きなところ3 隣の席の採点表
  5. 好きなところ4 点数を読む順番
  6. 苦手かもしれない人へ
  7. 割れた受け取りでつながる6本

6選の六本目は『異種族レビュアーズ』です。最初にお断りしておきます。大人向けの描写がとても多い作品なので、中身の話はここではしません。僕が語りたいのは、この作品の骨組みのほうです。

先にお断りしてから

人にこの作品の話をするとき、僕はいつも、まず断りを入れます。どんな作品なのかを正直に伝えてから、それでも聞いてくれる人にだけ、骨組みの話をする。順番を間違えると、話したいことが一つも届かなくなるからです。この記事でも、その順番を守ります。骨組みだけを取り出して話すのは、作品に対して少し失礼かもしれないとも思います。それでも、骨組みだけでもこれだけ面白い、ということを伝えたくて、6本の最後にこの作品を置きました。Preference

原作は、天原さんが原作を、mashaさんが作画を担当する漫画です。それがテレビアニメになりました。Fact[1]

種族の違う仲間たちが、同じ体験にそれぞれ点数をつけ、評価を並べて見せ合う。そして同じ一つの体験でも、評価する側の種族が違うと、点数が大きく割れることがある。この作品の始まりの設定は、その粒度で書いておきます。Fact[1]

好きなところ1 割れることが前提の採点

ふつう、点数は割れないほうがよいものとして扱われます。試験の採点がばらばらだったら困りますし、審査員の意見がそろわないと、誰かが間違えたように見える。この作品は、その前提をひっくり返します。点数が割れるのは、誰かが間違えたからではない。育ってきた世界も、感じ方も違うのだから、割れて当たり前。割れ方そのものが、それぞれの種族について教えてくれる情報になっているんです。Interpretation

数学の言葉で言いかけて、やめておきます。……いえ、一言だけ。物差しが一本だと思っていたものが、実は何本もの違う物差しだった。そう気づいた瞬間に、それまで矛盾に見えていた点数の並びが、急にすっきり読めるようになる。僕がこの作品を観ていて何度も味わうのは、その気持ちよさです。Interpretation

好きなところ2 一人分の正解がない

僕の目には、この作品の点数は、どれか一つが「正しい答え」として勝ち残るためではなく、並べて眺めるために置かれているように見えます。観ている僕も、どれか一つに肩入れしなくていい。むしろ、自分ならどの軸で測るだろう、と考えはじめてしまいます。点数の横に、見えないもう一列、自分の欄が増えていく感じです。Interpretation

研究の世界でも、一本の論文は何人かの読み手に読まれ、評価が割れることがよくあります。若いころの僕は、割れた評価を受け取るたびに、どちらが正しいのかを決めようとして疲れていました。この作品を観てから、少し考えが変わりました。割れたまま並べておくと、読み手それぞれが何を大事にしているのかが、そのまま形として見えてくる。評価の割れ方は、論文についての情報であると同時に、読み手についての情報でもあるんです。Preference

好きなところ3 隣の席の採点表

休日の大道芸でも、同じ芸に、お客さんごとに違う点数がついているのが分かります。子どもは風船が割れる音でいちばん笑い、大人はその前の、割れるかどうかの間で笑う。どちらが正しい笑い方ということはありません。この作品を観るようになってから、僕は芸のあとで、どの席の人がどこで笑ったかを、頭の中の採点表に書き込むようになりました。一つの芸に、何本もの物差しがあてられている。そう思うと、すべったと思った日にも、どこかの物差しでは満点だったのかもしれない、と少しだけ救われます。Preference

好きなところ4 点数を読む順番

点数が並んでいると、僕はどうしても、それを読む順番のほうに目がいってしまいます。高い点から先に目に入るか、低い点から先に入るか。それだけで、同じ並びの受け取り方が変わる。最初に高い点を見た人は、低い点を「厳しすぎる」と感じ、最初に低い点を見た人は、高い点を「甘すぎる」と感じる。並んでいる数字は何一つ変わっていないのに、です。Interpretation

僕の研究のテーマの一つは、情報を受け取る順番が、その後のふるまいをどう変えるか、ということです。この作品の採点の場面を観ていると、物語の中の点数と、それを読む僕の目の動きと、二つの順番が同時に動いているのが分かって、つい一時停止してノートを開いてしまいます。作品の中身とは関係のないところで、こんなふうに一人で忙しくなれるのも、この作品が好きな理由の一つです。Preference

苦手かもしれない人へ

大人向けの描写が苦手な人に、無理に観てほしいとは思っていません。僕自身、誰にでもこの作品の話をするわけではありません。それでも、もしこの骨組みに興味を持ってくれたなら、僕がしているように、一つの体験に違う点数がつく場面だけに目を向けて、誰がどんな理由で点をつけたのかを追ってみると、作品の見え方が少し変わると思います。観ないという選び方も、もちろん一つの立派な評価です。Preference

割れた受け取りでつながる6本

帰り道に友だちと受け取り方が割れた『インセプション』とは、一つのものに二つ以上の読みが並ぶ所で響き合っています。同じ出来事が、置く順番で別の意味になる『STEINS;GATE』とは、見る側の位置が意味を決めるという所で。僕の6本は、結局どれも、同じものが見る人や順番によって別の姿になる話です。この一本は、その考えを、いちばん遠慮なく真っ直ぐに描いた作品だと思っています。Preference

点数が割れたら、誰かが間違えたのではなく、物差しが何本もあったということ。割れたまま並べておくと、それぞれの見方の形が見えてきます。

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