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Anime & manga trivia

『H2』は野球部のない高校から始まる

中学で名をあげた投手と捕手が、わざわざ野球部のない高校を選ぶ。そこから愛好会、そして部へ。開店前の昼、笑いの間を数える遊びの途中で、元エースのカオルが数学者のユウリに『H2』の始まり方を話しました。

For people who
野球部のある学校が当たり前だと思っていた人、部活を一からつくった経験のある人へ。あだち充さんの漫画を一本も読んだことのない人にも。
Spoiler range
No spoilers 原作漫画の始まりの設定(中学で活躍した投手と捕手が、野球部のない高校に進み、愛好会から野球部をつくろうとする)と、題名の意味まで。試合の結果、誰と誰が結ばれるか、物語の終わりには触れません
Who's talking
Kaoru × Yuuri
Types of claims: Fact Observation from the work Grounded inference Interpretation Preference
Contents 4 sections, ~4 min
  1. 数える遊びの続き
  2. わざわざ部のない学校へ
  3. 愛好会という入口
  4. 部をつくる話として読む

開店前の昼、カオルの店。カウンターの奥の小さなテレビでギャグアニメの録画を流し、二人はいつものように、ボケからツッコミまでの間を数えていました。三本目が終わったところで、カオルが棚から一冊の漫画を抜き出します。

数える遊びの続き

Kaoru

ユウリくん、次はこれでやろか。漫画やけど、間の長さやったら負けてへんで。Preference

『H2』は、あだち充さんの野球漫画です。『週刊少年サンデー』で1992年から1999年まで連載され、単行本は全34巻。1995年から1996年にかけてテレビアニメも放送されました。Fact[1]

Yuuri

題名が、まず方程式のようですね。H の二乗、でしょうか。

Kaoru

そう読むと思た。ちゃうねん。

題名の『H2』の H は、四人の名前の頭文字です。ヒーローが二人、ヒロインも二人。投手の国見比呂、強打者の橘英雄、比呂の幼なじみの雨宮ひかり、そして比呂が高校で出会う古賀春華です。Fact[1]

Yuuri

二乗ではなく、二組。……記号の読み違いは、僕の職業病です。

わざわざ部のない学校へ

Kaoru

ほんで、始まり方がおもろいねん。野球の漫画やのに、最初に野球を取り上げてまう。Interpretation

比呂と英雄、それに捕手の野田敦は、中学で同じチームにいた仲間でした。ところが比呂は肘、野田は腰を医師に悪いと言われ、二人は野球をあきらめて、野球部のない千川高校へ進みます。比呂はサッカー部、野田は水泳部。英雄とひかりは、野球の名門・明和第一高校に進みました。Fact[1]

比呂は投手で、野田はその球を受ける捕手。英雄は明和第一で4番を打つ打者です。Fact[1]

Yuuri

……少し、順番を整理させてください。まず仲間がいて、次に野球を失って、それから野球のない場所へ行く。最初の一歩が、引き算なんですね。Interpretation

Kaoru

せや。私な、そこで毎回ちょっと黙ってまうねん。高校で、近くに女子が野球を続けられるとこがなくて、ソフトボールに移ったから。場所がない、っていうのは、肩より先に心にくるんよ。Preference

Yuuri

では、比呂さんがサッカーのユニフォームを着ているコマは、カオルさんにとって、他人事ではない。Grounded inference

愛好会という入口

もっとも千川高校には、まだ部として認められていない野球の集まり「野球愛好会」が、少ない人数で続いていました。あるとき、そのサッカー部と愛好会が野球で対戦することになります。相手のサッカー部員が野球を軽く見るのに腹を立てた比呂は、試合のさなかにサッカー部を抜け、愛好会のチームに加わります。Fact[1]

Kaoru

試合の途中で、比呂ひとりだけ相手のチームに乗りかえるんやで。いや、なんでやねん。そこ、私は何回読んでも声出して笑う。Preference

Yuuri

そのツッコミまで、二拍でした。ふだんより半拍早い。

Kaoru

数えんでええねん、そこは。

Yuuri

失礼しました。でも、同じ人が一試合のうちに、相手の側から味方の側へ立ち位置を変える。そこで、その試合の意味まで入れかわる。僕にはとても面白い順番です。Interpretation

甲子園をめざすなら、愛好会のままではいられません。比呂たちは野球部への格上げを願い出ますが、高校野球を嫌う校長はなかなか認めず、強豪の明和第一と試合をすることを条件に出します。Fact[1]

ちなみに、ヒロインの一人ひかりが入っているのは野球部ではなく、弓道部です。Fact[1]

部をつくる話として読む

Kaoru

私、これを野球の漫画として読む前に、部をつくる話として読んでほしいくらいやねん。人を集めて、場所を探して、許しをもらう。投げるのは、そのあと。Interpretation

Yuuri

証明でいえば、定理の前に、まず定義を置く作業ですね。何を「部」と呼ぶのか。そこが決まらないと、試合という式が書けない。Interpretation

Kaoru

ややこしいたとえやけど、言いたいことは分かる。ユウリくんの大道芸も、最初は場所探しからやろ?

Yuuri

ええ。立っていい角を探すのに、一年かかりました。だから、愛好会のくだりは、僕も少し胸に来ます。Preference

Kaoru

ほな、校長の顔が出てくるとこから読も。あの人がしゃべる前の間、ユウリくんが数えて。

『H2』は、野球をいったん取り上げてから始まる野球漫画。愛好会から部になるまでの数歩を追うと、マウンドに立てることがどれだけ手間のかかることか、見えてくる。

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H2
Manga 1993 · Book series
Told by Kaoru An elegant bartender by night who laughs out loud by day More from Kaoru →

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