『時光代理人 -LINK CLICK-』のシーズン1を、頭から観直しました。一周目の私は、写真の中へ飛びこむトキの背中ばかり追っていました。二周目は、写真館に残って指示を出し続けるヒカルの声を聞き直すことにしました。最後まで観た人に向けたノートです。物語の核心にふれるところは畳んであります。まだの人は、開かずにおいてください。聞き手は、脚本の組み立てをノートに分解するのが好きなソウマです。
二周目を始める前に
中国のアニメーションで、制作は澜映画(ラン・スタジオ)。李豪凌さんが脚本と監督を務めたオリジナル作品です。シーズン1が配信されたのは2021年で、期間は4月30日から7月9日。日本では、日本語吹き替えでローカライズした「日本版」の放送・配信が、2022年の1月から3月まで行われています。事實[1]
日本版での愛称は、主人公の程小時(チョン・シャオシー)がトキ、相棒の陸光(ルー・グアン)がヒカルです。テレビ放送版は尺に合わせて約24分に調整されていて、冒頭に解説を加えたり、一部を削ったりしています。カットのないオリジナル版は、各動画配信サービスで配信されました。事實[2]
名前が二つある主人公、ですか。……別に珍しくはないですけど。どっちで呼ぶかで、観る側の距離は変わりますね。解讀
そう。私は日本版で出会ったから、頭の中ではずっとトキとヒカル。もとの名前で観た人とは、たぶん同じ二人を違う距離で見てる。喜好
三つの約束
トキが持っているのは、写真を撮った人の過去の意識に入りこむ力で、彼はそれを「ダイブ」と呼びます。ヒカルの力は、写真が撮られたあと12時間以内に起きたことを読み取るもの。二人の間には三つのルールがあります。制限時間は12時間。ダイブしているトキは、必ずヒカルの指示どおりに動くこと。そして、過去を問うな・未来を聞くな。事實[3]
一周目の私は、ヒカルを少し冷たい人だと思っていました。トキが依頼人の悲しい過去に手を伸ばしかけるたび、止める声が飛んでくる。依頼人の側に立つトキのほうが、ずっと温かく見えたんです。喜好
二周目の見どころの一つめは、この三つの約束が口にされる場面で、ヒカルの声と顔を見ることです。同じ規則が、一周目とはまったく違う重さで聞こえてきます。解讀
結局·真相結末と正体點擊展開
実はヒカルは、未来から来たヒカルでした。死んだトキから能力を引き継ぎ、過去へ戻ってきたのです。もとの時間軸では、トキはヒカルの盾になって撃たれ、息を引き取る間際に、「皆を助けてくれ」という伝言とともに、能力をヒカルに残していました。ヒカルが変えようとしていたのは、トキや、幼なじみの喬苓(チャオ・リン)たちの死だったことが明らかになります。事實[4]
結局·真相結末を知ってから點擊展開
これを知って第1話に戻れば、「過去を問うな、未来を聞くな」の約束の見え方が変わります。トキのための規則でありながら、ヒカル自身がいちばん破りたくて、いちばん破れない約束でもある。未来を知っている人が、未来を聞くなと言っているのですから。私は二周目、その場面で手帳を閉じてしまいました。解讀
規則が早い段階ではっきり言葉にされる作品は、二周目にその規則の聞こえ方が変わるように組まれてることが多いです。……構成の話です。別に、泣いてはいません。解讀
第1話の題名になった人
第1話の題名は「エマ」です。エマは雀德遊戯(チュエダーゲーム)で、CFOのアシスタントとして働く女性。「EMMA」は仕事で使う英語名で、もう一つの名前は吳麗華(ウー・リーホワ)。地方から出てきて、親元を離れ、都市で一人で暮らしています。事實[5]
二周目の見どころの二つめは、名前です。仕事のための名前と、もとの名前。日本版のトキとヒカル、もとの程小時と陸光。この作品は第1話から、二つの名前で生きる人を並べていたのだと、二周目にやっと気づきました。私は旅先で、自分の名前を、相手の言葉で発音しやすいように言い直して名乗ることがあります。言い直した名前で呼ばれる自分も、たしかに自分だった。エマの場面を観直すと、その感じを思い出します。解讀
中段為止序盤の展開點擊展開
エマの運命は、トキが過去を変えたことで大きく動いていきます。事實[5]
中段為止序盤の展開(続き)點擊展開
一周目は、トキの優しさが報われるかどうかばかり見ていました。二周目は、エマの名前が呼ばれる場面ごとに、それが仕事の名前なのか、もとの名前なのかを聞き分けてみてください。呼ばれ方が、そのままエマの居場所の変化になっています。解讀
写真館の外にいる人
依頼人のつらい過去を、ルールを破ってでも書き変えようとしたのが、最初のトキです。けれど過去を変えたことの影響を痛感するうちに、だんだんルールを守るほうへ変わっていきます。ヒカルは逆に、同じころから、トキが多少過去を変えるのを少しずつ許すようになります。事實[6]
二人が同じ線の両側から歩み寄ってるんですね。脚本としては、きれいすぎるくらいの対称です。……今の、褒めてます。解讀
二周目の見どころの三つめは、ダイブ中のトキではなく、写真館に残っているヒカルの顔です。止める声の強さが、話数を追うごとに少しずつ変わっていく。その変わり目を探しながら観ると、二人の距離の縮み方が、台詞より先に声の温度で分かります。解讀
最終話の題名
日本版の最終話、第12話の題名は「光をくれる人」。中国語の副題は「带着光的人」です。事實[7]
日本語の題名の「くれる」は、誰かから受け取る向きの言葉です。中国語の副題の文字が、日本語の題名とどこまで同じ向きなのかは、私には言い切れません。中国語の分かる人に、いつか確かめてみたいところです。ただ、日本版でヒカルという名前を聞き慣れたあとにこの題名を読むと、「光」の字が名前と題名の両方にあることに、どうしても目が止まります。二周目の見どころの四つめは、この題名を最初に読んでから観始めることです。解讀
結局·真相結末を知ってから(題名)點擊展開
結末を知ったうえで題名を読み直すと、光を「くれる」のが誰で、受け取るのが誰なのかが、一周目とは逆に見えてきます。もとの時間軸でトキが最後に残したものを、ヒカルはずっと持って歩いていた。写真館に残って指示を出し続けるヒカルの顔は、ダイブ先の出来事を、どこかで一度見てきた人の顔に見えます。毎回はじめて聞くように指示を出す、その短い沈黙の一つひとつが、二周目には長く感じられました。解讀
二周目は、三つの約束が口にされるたびに、トキではなくヒカルの顔を見て。同じ言葉が、一周目とは違う重さで聞こえてくる。