目錄
6選の五本目。『PSYCHO-PASS サイコパス』。好きなキャラの三人目、常守朱がいるアニメ。正しさを決める仕組みが、誰を切り捨てているかを見せてくる。公式サイトの第1話の紹介文より先の話はしない。
中学生の私が、初めて本気で怒った
中学生のころ。夜中に一人で見てた。見終わったあと、眠れなかった。怖かったんじゃない。腹が立ってた。作品にじゃなくて、作品の中の「正しさ」に。それで朝までネットの感想を読みあさって、自分ならどう言い返すかを頭の中で組み立ててた。誰にも言わなかったけど、あれが私の最初の「意見」だったと思う。喜好
公式サイトの第1期スタッフ欄には、総監督が本広克行さん、監督が塩谷直義さん、ストーリー原案と脚本に虚淵玄さん(ニトロプラス)、アニメーション制作がProduction I.Gと書かれている。事實[1]
公式サイトの第1話「犯罪係数」の紹介文は、人格を数値にできるようになった未来、という一文から始まる。常守朱は刑事課に配属され、ドミネーターを手渡される。「犯罪係数」という数値で犯罪者を裁くための銃だ。事實[2]
好きな理由1:数字は、責任を消す
人を数字で測る仕組み。便利だよね。数字が決めたなら、誰も悪くない。そこなんだよ。この作品の怖さは、悪い人がいることじゃない。誰も悪者にならないまま、誰かが切り捨てられていくこと。数字は、判断した人の顔を消す。顔が消えると、雑に扱っても誰の心も痛まない。私はそれがいちばん許せない。解讀
仕組みの側から見ると、ああいう制度は「みんなの安心」のために作られるんだよね。町内会で、ごみの分別を守らない家に印をつけよう、って決めるようなものでさ。最初はみんな助かる。でも、印をつけられた家の言い分を聞く場所が、制度の中にないんだ。解讀
そう。ガクは仕組みの設計図を見る。私は、印をつけられた家の玄関の前に立つ。同じものを見てるのに、立ってる場所が違う。解讀
うん。だから二人で見ると、ちょうど両側から見えるのかもしれないね。
好きな理由2:主人公が、自分の目で決めようとする
朱は、最初から強い人じゃない。第1話の紹介文にも「戸惑いながら」とある。仕組みに渡された道具を持って、戸惑ってる。私はその戸惑いが好き。数字が出したことを、そのまま飲み込まない。自分の目で見て、自分で決めようとする。それって、すごく面倒で、すごく疲れることなんだよ。面倒なほうを選ぶ人を、私は信用する。解讀
好きな理由3:冷たい画面の中の、人の温度
未来の街は、きれいで、静か。色が整ってて、どこか冷たい。だからこそ、人が感情をむき出しにする場面が、画面の中で浮き上がって見える。整った仕組みの中に、整わない人間がいる。その対比を絵で見せてくるのがうまい。声の芝居も、怒鳴るより、抑えた声のほうが怖い場面が多い。私も、本当に腹が立つと声が静かになる。だから、あの抑え方はよく分かる。解讀
あの夜、頭の中で組み立てたこと
中学生の私が、朝まで頭の中で組み立ててたのは、だいたいこういうこと。正しさを決める仕組みは、間違えないことを売りにする。でも、間違えないって言い切る仕組みは、間違えたときに謝る相手を持たない。切り捨てられた人が「おかしい」と言っても、聞く窓口がない。窓口がないことを、誰も悪いと思ってない。……今読み返すと、言葉は幼い。でも、怒ってた場所は今とそんなに変わってない。解讀
それと、この作品は、仕組みに従う側の人たちも雑に描かない。仕事として仕組みを動かしてる人にも、それぞれの事情と迷いがある。全員が悪者なら話は簡単で、怒ってすっきりして終われる。そうさせてくれないのが、この作品の誠実さだと思う。弱い人を罰してすっきりする話が私は苦手で、その逆側にあるのがこれ。見終わっても、すっきりしない。そのすっきりしなさを抱えたまま眠れなかったあの夜が、私の見方の始まり。解讀
苦手そうな人への入口
暴力的な場面や、気分の悪くなる事件がたくさん出てくる。見る日を選んでほしい。入口は第1話だけ。見るときは、事件より、朱が「戸惑っている」顔を追ってみて。仕組みが正しいかどうかを決めなくていい。朱と一緒に戸惑えたら、それで十分。気分のいい話ではない。そこは先に言っておく。
ほかの好きな作品へ
『おそ松さん』も『NHKにようこそ!』も『賭博黙示録カイジ』も、数字で測ったら切り捨てられる側の人たちの話。私はその人たちを見捨てない作品が好きで、この作品は逆に、見捨てる仕組みのほうを正面から見せた。『銀魂』の大人が看板じゃなく行動で筋を通すのと、朱が数字じゃなく自分の目で決めるのは、私の中では同じ線の上にある。その線を自分の手で選ぶのが『UNDERTALE』。喜好
数字が決めたことにも、決めた誰かがいる。その誰かの顔を、忘れないでいたい。