6選の二本目は『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』。読んだのは、学校を移ったころ。第1巻の紹介文にある設定までしか書かないので、まだ読んでない人も安心して。
刀の向きが逆
集英社の第1巻のページによると、著者は和月伸宏さんで、紙版が出たのは1994年9月2日です。流浪人の緋村剣心は、逆刃刀を腰に下げて不殺を誓っていて、かつては「人斬り抜刀斎」と呼ばれた人だった。紹介文は、その設定から始まります。事實[1]
アニメの公式サイトの人物紹介には、剣心の腰にあるのは峰と刃が逆の「逆刃刀」だと書かれています。事實[2]
これを知ったとき、声が出た。刀を持ってるのに、斬らないための向きで持ってる。強さを捨てたんじゃなくて、強さの向きを自分で決めてる。武道をやってて、こんなにしびれた設定はなかった。喜好
好きな理由1:力で終わらせない選択
この漫画は、剣心が勝てる場面で、勝ち方を選ぶ。相手を倒せば早いのに、そうしない。私はふだん、すぐ動くほう。迷う前に体が出る。だから剣心が一拍おいて、どう終わらせるかを選ぶコマを見ると、自分の速さが少し恥ずかしくなる。速いのが悪いんじゃなくて、速さの使い道があるんだと思った。解讀
稽古でも、先生に何度も言われた。「強く打てることと、打たないでいられることは、両方そろって一人前」。そのときは意味がわからなかった。剣心を読んで、やっとわかった気がした。喜好
力を持つ人が使わないと決めるのは、たぶん、持たない人が想像するより重いことです。毎回、決め直さなければいけないので。解讀
それ。一回決めたら終わりじゃないんだよね。毎回なんだ。……ルカ、たまにすごいこと言う。
いえ、私は止まって考える時間が長いだけです。アカリさんのように、先に手が出るほうがうらやましいこともあります。
好きな理由2:抜く前の静けさ
剣の場面で好きなのは、抜く前。足の位置、視線、間合い。コマの中の音が消えて、相手との距離だけが描かれる時間がある。道場でも、構えてから動くまでの数秒がいちばん長い。あの数秒を漫画で見せてくれるのが、すごくうれしい。喜好
それと、剣の場面のあとにちゃんと「その後」が描かれるのもいい。戦いが終わったら終わりじゃなくて、町の人がどう暮らしてるか、相手がそれからどうするか。力で終わらせないってことは、終わったあとも相手の人生が続くってことなんだと思う。だから話が、勝ち負けの一点で止まらない。解讀
好きな理由3:ふだんの顔がやわらかい
剣心は、ふだんはほんとうにおだやか。言葉づかいもやわらかくて、ちょっと抜けてるところもある。だから、背負ってる過去の重さとの落差で胸がぎゅっとなる。強い人が、ふだん強そうにしていないのがいい。礼をしてから始めて、礼をして終わる、武道の先生みたいな人だと思う。解讀
私の見方:やり直しの話でもある
紹介文のとおり、剣心には過去がある。でも物語は、その過去で人を決めつけるんじゃなくて、いまどう生きてるかを見ていく。私はこれを、やり直しの話として読んだ。前の場所でうまくいかなくても、次の場所で自分の筋を守ればいい。学校を移ったころの私には、それが一番効いた。解讀
通信制に移ってから、自分で時間割を組むことになった。最初は詰めこみすぎて、守れない自分に毎日腹を立ててた。そのころ読み返して気づいたのは、私は人には力を使わないくせに、自分にはずっと力ずくだったってこと。刀の向きは、相手に向けるときだけの話じゃないんだなって。喜好
苦手そうな人への入口
時代劇っぽいのが苦手なら、第1巻だけでいい。むずかしい歴史を知らなくても、困っている人の前に通りすがりの剣客が立つ話として読める。剣の場面が多いけど、見てほしいのは斬るところじゃなくて、斬らないためにどう動くか。アニメから入るのもあり。
第1巻を読み終えたら、剣心が刀を抜かずに済ませた場面を一つだけ探してみて。そこがこの漫画の入口だと私は思ってる。
勧めるときは、最初に「長いけど、1巻で剣心がどういう人かはわかる」って言う。巻数で引かれる前に、入口の短さを先に言っとく。
アニメの公式サイトでは、原作は1994年に「週刊少年ジャンプ」で連載が始まったと紹介されています。初めてのテレビアニメ化は1996年。2023年には、スタッフもキャストも新しくした新作テレビアニメが放送されました。いまは『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚・北海道編-』が「ジャンプSQ.」で連載中だそうです。事實[3]
ほかの5本とのつながり
『シティーハンター』の獠は、力を使うときを選ぶ人。剣心は、使い方そのものを選ぶ人。『鬼滅の刃』で修行の場面が好きなのも、そこにつながってる。力をつける時間があるから、使わない選択にも重さが出る。私の6選の真ん中には、ずっとこの漫画がいる気がする。喜好
読むなら、食べたあとがいい。剣の場面で息を止めちゃうから、おなかがすいてると最後までもたない。喜好
強さを捨てなくていい。向きを自分で決めればいい。