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日常

キャラの年齢に追いついた日

劇透範圍 無劇透 『クレヨンしんちゃん』『サザエさん』の登場人物の年齢の設定と、アニメ『ポケットモンスター』でサトシが主人公の物語がひと区切りし、新しいシリーズで主人公が交代したこと(公表されている範囲)まで

大雨で新幹線が止まった土曜の午後。駅の待合室で、親子と夜勤明けの看護師が隣り合う。サザエさんは24歳、波平さんは54歳。キャラの公式の年齢を知るたびに、三人それぞれが自分の年と比べて声をあげる。

適合這樣的人
子どものころ大人に見えていたアニメのキャラクターの年齢に、いつのまにか追いついていた人へ。
發言的人
Takashi × Chiaki × Minato
躲雨 大雨で新幹線が止まった駅の待合室 土曜の午後

電光掲示板には、運転見合わせの文字が並んでいた。ガラスの向こうは白く煙るほどの雨。作業着の上に紺の上着をはおったタカシと、無地のパーカーのミナトが、一つ席を空けて座っている。

ミナトの隣には、小さなキャリーを足元に寄せた女の人。左手首を返して、秒針つきの時計を見たところだった。

Minato

……え。サザエさんって、24なんだ。[3]

アニメでの設定。原作の漫画では別の年齢とされる

Takashi

それは、どういう意味ですか。24歳? あのサザエさんが?

Minato

短い動画で流れてきた。キャラの年齢を知ってびっくりする、みたいなやつ。……俺、一つ下だ。

隣の女の人が、こらえきれずに小さく笑った。すぐに口元を押さえて、頭を下げる。

Chiaki

すみません、聞こえてしまって。私、とっくに越えてました。いま気づいて、ちょっとびっくりしてます。

Takashi

いえ、私もいま同じ顔をしていたと思います。息子は一つ下、あなたは越えた側。私は、もう比べる相手を探すほうが大変です。

Minato

でも、この数字、アニメの設定なんだって。原作の漫画だと違うらしい。二つ見てから言えばよかった。

Chiaki

媒体で違うんですね。舞台でも、同じキャラが作品ごとに少しずつ違うことがあります。チアキといいます。これから東京の劇場に行くところで。

Chiaki

じゃあ、マスオさんは?

Minato

マスオさんは、アニメだと28。原作の漫画だと32。[3]

マスオの年齢はアニメでは28歳、原作の漫画では32歳

Chiaki

どっちでも越えてます。34の私から見ると、マスオさん、年下の後輩なんですね。……病棟にいたら、夜勤の組み方を相談されそう。

Takashi

では、波平さんは。

Minato

54。こっちはアニメも原作も同じ。[4]

波平はアニメ・原作とも54歳

Takashi

……あと二年で、波平さんです。子どものころ、あの人は「おじいさん」だと思っていました。

Minato

父さんは、髪は一本より多い。

Takashi

そこを比べるのは、やめておきましょう。

Minato

カツオが11で、ワカメは9。ワカメは原作だと7まで下がる。[3]

カツオは11歳の小学5年生。ワカメはアニメでは9歳、原作の漫画では7歳

Chiaki

11歳。私がテニスの王子様のアニメに出会った年です。カツオくんと同い年で、毎週その時間だけは、誰にも話しかけられたくなかった。

Minato

俺はカツオと同い年のころ、自分の部屋で動画ばっかり観てた。カツオのほうが、外でずっと忙しそう。

Minato

24で、家のことを回して、子どもがいて。俺、来年あれができるかって言われたら、たぶん無理。

Chiaki

私が24のころは、病棟で二年目と三年目のあいだでした。夜勤のたびに先輩の背中ばっかり見てて。その先輩たちの年も、もう越えちゃいました。

Takashi

タカシです。こちらは息子のミナトです。……劇場、間に合いますか。

Chiaki

どうでしょう。夜の回なので、あと二時間で動けば。……動かなくても、今日の推しが無事なら、それでいいんです。

チアキは時計からそっと目を離し、ミナトのスマホの画面をのぞきこんだ。次に流れてきたのは、春日部の五歳児だった。

Chiaki

しんちゃんは5歳。これはずっと変わらないですね。幼稚園に通ってる。[1]

Chiaki

小さいころは、しんちゃんを観て、みさえさんのことを「お母さん」だと思ってました。

Minato

みさえさん、29。ひろしさんは35。

Chiaki

……どっちも越えてます。34の私、ひろしさんの一つ下で、みさえさんより五つも上。お母さんだと思ってた人に、追いついて追い越してました。

Takashi

私は、ひろしさんの年から、もう十七年たちました。

Minato

俺は煉獄さんを、もう越えてた。20だって。……あの人に三つ上ですって言える気がしない。

Takashi

私が5歳のころは、祖父の本棚で、挿絵の武将ばかり眺めていました。しんちゃんと同じ年だったはずなのに、あんなに自由ではなかったですね。

Chiaki

しんちゃんの自由さ、夜勤明けに観ると効きます。こっちは五歳のとき、もっとちゃんとしていた気がするのに。

Takashi

私には、子どものころ再放送で観た、ガンダムの艦長がそれでした。ブライトさんです。ずいぶん大人に見えた。艦を預かって、部下を叱って。

Minato

父さんの好きなやつ。アムロの年なら出たよ。始まったとき、15。資料によっては15から16。[10]

『機動戦士ガンダム』のテレビ放送は1979年から。英語版は15歳、日本語版は15〜16歳と書く

Takashi

15歳。……私が再放送で観ていたころは、年上のお兄さんでした。いまは、ミナトより八つも下です。その子に、あれだけのものを背負わせていたのですね。[9]

Minato

ブライトさんは19。シャアは20。

Takashi

19歳……あの艦長が。シャアも20歳。私はあの二人を、ずっと年上の大人だと思って観ていました。

Minato

俺、二人とも越えてる。ブライトさんより四つ上。艦長、無理。部下を叱るどころか、自分のデイリーで手いっぱい。

Minato

数字って、知ると戻れないね。測量でも、一回測った点は忘れられない。

Chiaki

測量のお仕事なんですか。

Minato

はい。同じ点を三回測って、合ったら一本線を引く。キャラの年齢も、知ったらもう、その線の上で比べちゃう。

Takashi

私は、若いころそれができませんでした。一回聞いた数字で、すぐに走り出してしまって。

Minato

……それは、知ってる。

Chiaki

舞台だと、もっと不思議なんです。中学生の役を、大人の役者さんが演じていて。客席の私は、いつのまにか役の子たちの倍以上の年になってるのに、幕が上がると、ちゃんと同じ年の子に見える。

Takashi

年齢が、そこで一度ほどけるわけですね。

Chiaki

はい。だから私、キャラの年を知ってびっくりするのは、ちょっと好きなんです。こっちが年を取った分だけ、見え方が増えるので。

Minato

小五郎さんは38。蘭ちゃんは、最初は16。

Chiaki

38……私、あと四年で小五郎さんです。子どものころは完全におじさんだと思ってたのに。蘭ちゃんの年なんて、倍以上になってました。

Takashi

私は、小五郎さんより十四も上ですか。……娘さんのために空回りするところが、急に近く見えます。

Takashi

銭形警部は。

Minato

最初のころの設定では、29歳だったらしい。でも、そのあとはずっと決まってないみたい。

Takashi

29歳であれだけ走り回っていたのなら、納得です。年が決まっていないほうが、追いかけ続ける背中には合っていますね。

Chiaki

ケンシロウは?

Minato

……18ってよく言われてる。ただ、話の中の年代から数えると、20代の後半っていう見方もあるって。

Takashi

18歳……中学生のころ、私はあれを大人の男だと思って読んでいました。いまの私から見ると……まあ、どちらにしても本人には言わないでおきましょう。

Chiaki

ミナトさんは、子どものころ大人に見えてたキャラ、いますか。

Minato

切り抜きで知ったワンパンマンのサイタマ。最初、すごく大人に見えた。年は、まだ確かめてないです。二つ見つかるまで、保留。

構内放送が、雨量の規制がまだ続いていることを告げた。待合室のあちこちで、小さなため息がもれる。ミナトは片耳のイヤホンを外して、画面を切り替えた。

掲示板の文字が、運転再開に変わった。待合室の空気が、いっせいに動きだす。チアキはキャリーの持ち手を伸ばして、時計の秒針を一度だけ見た。

Minato

年を取らないので言ったら、サトシもそうだと思ってた。でも、アニメはもう主人公が交代してる。今はリコとロイっていう二人が主人公。[5]

サトシが主人公のアニメは1997年から。2023年からの新シリーズで主人公がリコとロイに交代

Chiaki

ニュースで見ました。サトシの話は、ひと区切りなんですよね。[6]

Minato

うん。でも、ポケモンマスターを目指すってところは、ずっと変わってない。[8]

Takashi

ずっと同じ夢を、降ろさずに歩いてきたわけですか。私は、途中で何度も目標の順番を入れ替えてきました。……サトシくんを、尊敬します。[8]

Chiaki

私もです。こっちは年を取って、推しが変わって、引き出しのハンカチばかり増えていくのに。あの子はずっと、同じほうを向いてる。

Minato

俺が観てたころも、もう観なくなったころも、ずっと旅してた。それ、地味にすごい。

Takashi

それに比べると、しんちゃんは5歳のままでいてくれる。こちらがどれだけ年を取っても、春日部の家に帰れば、同じ五歳の子がいる。

Chiaki

それ、ほっとします。夜勤明けにテレビをつけて、しんちゃんが相変わらずだと、ああ、世界はまだ大丈夫だって思えるんです。

Minato

追いついたり、越えたりしても、向こうが待っててくれるってことか。……ありがたいね、それは。

チアキは小さく頭を下げて、改札の人波に紛れていった。ミナトは外していたイヤホンをポケットにしまい、父の隣の、空けていた一席に座り直した。

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講述者 Takashi 用歷史思考的工作服社長 閱讀更多 Takashi 的文章 →

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