目錄
好きな6作品の三本目は、漫画の『よつばと!』。小学生のころに出会って、高校生のころには「一巻をゆっくり読む時間」を自分のために残していた作品です。お話の展開には触れず、ページをめくるときの気持ちの話をします。
ページを閉じたら外に出たくなった
初めて読んだのは小学校の低学年。親戚の家の本棚にあった一冊でした。読み終わったら、なぜかじっとしていられなくなって、サンダルをつっかけて家の前の道に出ました。石をひっくり返したり、水たまりをのぞいたり。よつばみたいに、何かを見つけたかったんです。結局見つけたのはダンゴムシ一匹だったけど、それがすごくうれしかったのを覚えています。
作者はあずまきよひこさんで、KADOKAWAの「月刊コミック電撃大王」に連載中の漫画です。事實[1]
好奇心でいっぱいな、少し不思議な女の子・よつば。その毎日をゆっくり丁寧に描いた日常漫画、と出版社のお知らせでは紹介されています。事實[2]
好きなところ1 「はじめて」の大きさ
よつばにとっては、毎日がはじめてだらけです。大人なら素通りするものに、全身で驚いて、全力で喜ぶ。読んでいると、自分がいつのまにか「知ってるつもり」で通りすぎていたものが、もう一度大きく見えてきます。雨の音、知らない道、はじめて食べるもの。小さな発見の大きさを、この漫画は何度でも思い出させてくれます。解讀
好きなところ2 台詞のないコマと描きこまれた町
私がつい見入ってしまうのは、台詞のないコマです。よつばが何かをじっと見ている一コマ、それを大人が見守っている一コマ。そういう間があるから、次のコマの「わあ」がちゃんと響く。町並みや家の中も丁寧に描かれていて、台所の棚や玄関の靴の並びまで、ついじっくり見てしまいます。生活感のある絵が好きな私には、何度読んでも新しい発見があります。解讀
僕は、まわりの大人たちが好きだな。よつばの「なんで?」に、ちゃんと付き合うでしょう。町内会で、子どもの質問に本気で答えてくれるおじさんがいると、なんだかほっとする。あの感じに近い。喜好
そう、大人がよつばを急かさないんだよね。驚き終わるのを、ちゃんと待ってくれてる。解讀
背景を知らなくても、そこは誰でも受け取れるところだね。僕はつい、町のつくりや暮らしの仕組みまで考えたくなるけど。
好きなところ3 時間がゆっくり重なる
出版社によれば、この作品が丁寧に描いてきたのは、少しずつ大きくなる子どもと、いつも変わらない大人たちが過ごす、流れていかずに重なっていく時間だそうです。事實[3]
実際、ページの中の時間はとてもゆっくり進みます。ひとつの小さな出来事を、一話かけてじっくり追うこともある。だから高校生の私は、テスト前でも部活のあとでも、寝る前に一巻だけ、時間をかけて読むことにしていました。急いで先を知りたい漫画じゃなく、ページの中の毎日に、自分も少しだけ一緒にいられる漫画。読むスピードを落とすことそのものが、楽しみになっていきました。解讀
友だちが新刊を一晩で読み終えた話をしていても、私はわざと半分でしおりを挟んで寝ていました。続きは明日の楽しみ。そうやって残しておいたページがあると、次の日がちょっとだけ待ち遠しくなるんです。
よつばの目を借りる
好きなキャラクターを一人選ぶなら、やっぱり小岩井よつばです。私が好きなのは、彼女が毎日を「新しいもの」として受け取るところ。昨日と同じ道でも、昨日と同じごはんでも、今日はじめて出会ったみたいに反応する。その目を少しだけ借りると、自分の暮らしも急に面白く見えてきます。喜好
それに、よつばはおいしいものを食べるとき、本当においしそうな顔をするんです。大人の私たちは、ごはんを食べながらスマホを見たり、明日のことを考えたりしがちだけど、よつばは目の前の一口にまっすぐ。食卓の場面が好きな私には、それだけで何度でも読み返したくなる理由になります。解讀
私の目から:安心があるから冒険できる
「人物が安心できる場所はどうつくられるか」という目で読むと、この漫画の安心は、よつばのまわりの大人たちのまなざしにあると思います。よつばが外へ飛び出していけるのは、帰る場所があって、誰かが見ていてくれるから。冒険と安心は反対のものじゃなく、安心があるから冒険できる。読むたびに、そんなことを考えます。解讀
はじめての人へ
一話ごとに区切りがいいので、少しずつ読むのに向いています。おすすめは、一巻を「一気に」ではなく「ゆっくり」読むこと。ひとコマごとに、よつばが何を見ているのかを一緒にのぞきこむつもりで。読み終わったら、近所を五分だけ散歩してみてください。いつもの道に、何か一つ見つかるかもしれません。喜好
ほかの好きな作品とのつながり
外に出て何かを見つけたくなる気持ちは、『ゆるキャン△』の遠出や、『あつまれ どうぶつの森』で島を歩きまわる時間にもつながっています。家の食卓を囲む場面には、『きのう何食べた?』の夕ごはんの時間とどこか似た温度がある。毎日を新しいものとして受け取る目は、私にとっての、いちばん基本の目です。解讀
知っているつもりの道を、一度だけ「はじめて」のつもりで歩いてみる。小さな発見はだいたい足もとにあります。