12月の夜10時、近所のコンビニ。ミコとナギは、いつものように同じ棚の前で鉢合わせしました。ナギは温かいお茶を、ミコはあたためてもらった肉まんを買って、二人で店を出ます。街灯の下で、ナギが「クリスマスに観る映画、何かある?」と聞きました。
クリスマスの晩のゴミ捨て場
きらきらしたのは無理。……一本だけある。きらきらしてないクリスマス。
『東京ゴッドファーザーズ』は今敏さんの長編映画3作目で、公開は2003年11月8日です。新宿のホームレス3人と、拾われた赤ちゃん。その親を探して歩く道行きを、笑いを交えて描いた映画です。事實[1]
3人は、元競輪選手を名乗るギンちゃん、家出少女のミユキ、かつてドラァグ・クイーンだったハナちゃん。3人が赤ちゃんを拾ったのは、クリスマスの夜のゴミ捨て場でした。ハナちゃんは手放したがりませんが、話し合った末に、親を探すことになります。事實[1]
プレゼントを、ゴミ捨て場に探しに行くんだ。
私、そこで好きになった。お金がなくても、クリスマスはやる。手に入るところから手に入れる。……私も昔、夜中のコンビニまでしか外に出られなかった時期があるけど、それでも年末は一個だけいいアイス買ってた。喜好
あと、拾ったものを自分のものにしないで、返しに行こうとする。育てたいって言ってる人を、ちゃんと説得してから。そこが筋。解讀
題名のもとになった西部劇
この映画には、アメリカで1948年に作られた『三人の名付親』(原題 3 Godfathers)から着想を得た、という顔もあります。西部のならず者3人が赤ん坊を拾ってしまう物語で、幼いキリストを訪ねたとされる東方の三博士が下敷きです。季節もやはりクリスマスです。事實[1]
『三人の名付親』を撮ったのはジョン・フォード監督で、ジャンルは西部劇です。原作は、ピーター・B・カイン(Peter B. Kyne)が1913年に発表した小説『The Three Godfathers』で、映画化は何度も行われてきました。ならず者の3人が、生まれて間もない赤ん坊の名付け親(ゴッドファーザー=代父)になる、という話です。これを下敷きにした作品の一つに、現代の東京へ場所を移した『東京ゴッドファーザーズ』が数えられています。事實[2]
ゴッドファーザーって、怖い人の映画のことだと思ってた。
いや、それは違う。……って言いたいけど、私も最初そう思ってた。名付け親。だから、名前を付けるところが大事なの。解讀
赤ちゃんと出会ったのがクリスマスの夜だったので、「きよしこの夜」にちなんで清子(きよこ)という名前になりました。付けたのはハナです。事實[1]
きよしこの夜の、清子。……かわいい。クリスマスの歌から名前をもらうの、いいな。喜好
ひねった人情物
3人が抱えているのは、誰もが持つような弱さや悔い。今さんは、ホームレスを弱い者や不幸の象徴として描いたのではないと話し、この映画を「ひねった人情物」と呼んでいます。事實[1]
誰にでもある弱さ。……分かる。私は自分のことダメ人間だと思ってるけど、ダメって、だいたい一個じゃない。片付けとか、店員さん呼ぶボタンとか、昔のこととか。そういうのを、笑いものにしないで一緒に歩かせてくれる話は、信用できる。解讀
コメディなんだよね。笑っていいところと、笑っちゃいけないところ、ちゃんと分かるかな。
弱い人を笑いものにするつもりで描いてない、って作った人が言ってる。私はそれを信じて観た。それで、裏切られなかった。解讀
脚本は今さんと、ドラマ『白線流し』やアニメーション『カウボーイビバップ』の信本敬子さんの共同です。事實[1]
『カウボーイビバップ』の人。……それだけで、ちょっと背筋が伸びた。喜好
東京の顔を探す
街の室外機や窓が、ときどき目や口に見立てられて顔のように描かれていて、それに気づけるのは観客だけです。事實[1]
室外機の顔。……それ、探しながら観たい。私、話についていけなくなっても、それなら楽しめそう。喜好
それでいい。入口は、題名の意味だけ覚えておくこと。名付け親が3人。あとは、街に隠れた顔を数えてればいい。途中で止めたくなったら止めて、続きは次のコンビニの帰りにでも。喜好
じゃあ、観たら、一行だけ感想を書いてくるね。好きだった場面を一つ。喜好
一行で十分。……肉まん、冷めた。
『東京ゴッドファーザーズ』の題名のもとは、1948年の西部劇『三人の名付親』。ゴッドファーザーは、赤ん坊の名付け親のこと。