英語の勉強をしているのは、好きな物語をいつか自分で読めるようになりたいからです。でも、まだ辞書なしでは一ページも進みません。そんな私が何度も読み返してきた日本語のハリー・ポッターは、どんな人が訳したんだろう。出版社のページを開いてみました。
訳者の名前
静山社の『ハリー・ポッターと賢者の石』のページには、J.K.ローリング作、松岡佑子訳とあり、単行本の出版年月日は1999年12月1日です。事實[1]
同時通訳者として30年
静山社の沿革によると、松岡佑子さんは創業者・松岡幸雄さんの伴侶です。同時通訳者として積んだキャリアは30年。その語学力を生かして国際的な出版活動を広げ、1999年4月に出したのが「英日国際会議用語辞典」(ジャン・エルベール著)でした。事實[2]
そして同じ1999年の12月に、情熱を注いで翻訳・出版したのが『ハリー・ポッターと賢者の石』だった、と沿革には書かれています。事實[3]
同時通訳って、話している人の言葉を、ほとんど同じ時間で別の言葉にする仕事よね。その人が、今度は時間をかけて物語を訳した。私はそこに、速さと丁寧さの両方を感じた。解讀
会議の言葉の辞書と、魔法の物語が、同じ年に同じ出版社から出ているのも不思議です。一方はきちんとした言葉の決まりで、もう一方は呪文や不思議な名前でいっぱいで……。でも、どちらも「通じない言葉を、通じるようにする」仕事なんですね。解讀
出版社のはじまり
1979年、松岡幸雄さんが静山社を立ち上げました。沿革によると、世に出してきたのは、社会に向かって真剣な問いを投げかけるような本で、民衆史や闘病記がその例です。事實[4]
社会に問いを投げかける本を出してきた出版社が、子どもも大人も読む魔法の物語を出した。私は、その二つが遠いとは思わなかった。どちらも、誰かの声を届けようとしているから。解讀
私が英語を勉強しているのは、いつか原書で読みたいからなんです。でも、この沿革を読んで、少し考えが変わりました。原書で読めるようになっても、日本語版を読むのをやめる理由にはならない。訳した人が選んだ言葉は、それだけで一つの読み方だから。解讀
両方読んだら、言葉がどこで橋を架けているのかが見えるかもね。解讀
9年かけて7巻
沿革のシリーズ刊行年によると、日本語版は1999年12月の第1巻から、2008年7月の第7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』まで刊行されています。事實[5]
1999年から2008年まで。そのあいだずっと、新しい巻の言葉を日本語にし続けた人がいるんですね。私、一冊読むたびに「次はいつ」って思ってたけど、その「いつ」の向こうで、誰かが一語ずつ訳していたんだって、いま初めてちゃんと想像しました。解讀
言葉は、誰かが運んでくれないと届かないものね。解讀
『ハリー・ポッターと賢者の石』を日本語に訳した松岡佑子さんは、30年にわたって同時通訳者を務めてきた人だった。