前置きが長くなりますが、お許しください。『Re:ゼロから始める異世界生活』の第1期を、配達の帰りに一話ずつ見直しました。一度目の私は、スバルが倒れるたびに画面の前で息を止めていました。二度目は少し落ち着いて、名前と題名と、ひとつの曲の流れ方を数えることにしたのです。ここから先は第1期の最終話までを観た方に向けています。中盤と結末に触れるところは、押すまで開かない箱に入れてあります。
第1期の作り
第1期は全25話で、放送は2016年4月4日に始まり、9月19日に終わりました。監督を渡邊政治さんが務め、制作はWHITE FOXが担当しました。初回の第1話は1時間の拡大枠で、第1期で映像になったのは原作の第一章〜第三章にあたる部分です。事實[1]
原作の章で区切ると、第一章が第1話から第3話、第二章が第4話から第11話、第三章が第12話からです。二周目は、この三つの区切りで一度ずつ休むのをおすすめします。章が変わるたびに、スバルの寝る場所が変わっていくのが分かるからです。解讀[4]
休憩入れるの? 私、一周目は止めらんなくて一気に観たけど。
アカリ様らしいです。ただ二周目は、どこで眠り、どこで目を覚ますかを一章ずつ確かめたかったのです。異世界で最初に困るのは、たいてい今夜の寝床ですから。喜好
最初の三話で名乗られた名前
第1話でスバルを助けた銀髪の少女は、「サテラ」と名乗るハーフエルフとして登場します。事實[4]
一周目の私は、この名前を何の疑いもなく覚えました。二周目は、少女が名乗る瞬間の間合いと、スバルがその名前を口にするたびに周りの人がどんな顔をするかを見てください。私には、名乗った本人がいちばん居心地の悪そうな顔をしているように見えました。解讀
中段為止第一章の展開(第1話〜第3話)點擊展開
少女の本名はエミリア。最初のループで彼女が名乗ったのは、人々が恐れる「嫉妬の魔女サテラ」の名前でした。スバルを面倒ごとに巻きこまないための気づかいです。その嫉妬の魔女に見た目が似ているせいで、エミリア自身は世間からいわれのない差別を受けています。
知ってから見直すと、偽の名前は嘘というより、相手を遠ざけるための盾に見えます。自分がいちばん言われたくない名前を、わざと先に名乗る。誤解される苦しさを知っている者の、ずいぶん手のこんだ優しさです。事實[5]
回りくどい。困ってるなら最初から本名で「来ないで」って言えばいいのに。喜好
おっしゃる通りです。けれど、本名で言った途端に向けられる目を知っている人は、先に別の名前を差し出してしまうのだと思います。私はそこで、少しだけ彼女の味方をしたくなりました。解讀
屋敷の一週間を働く話として観る
スバルは第二章で、エミリアの近くにいられるようにと、助けたことへのお礼として屋敷に雇ってほしいと願い出ます。使用人として働きはじめたスバルを叱るのは、鬼族の姉妹メイド、レムとラムです。事實[6]
一周目は事件の謎ばかり追っていました。二周目は、皿を拭く、廊下を掃く、仕事の段取りを教わるといった場面をていねいに見てほしいのです。第4話の題名は「ロズワール邸の団欒」。私には、この章のいちばんの宝物は、謎の答えよりも、この団欒のほうに置かれているように見えました。解讀
中段為止第二章の展開(第4話〜第11話)點擊展開
スバルを襲った一人は、レムでした。レムが彼を疑ったのは、スバルが間者だという見込みが高かったうえに、「魔女の残り香」をまとっていたからです。それでもスバルは、メイドたちの手で何度命を落としても、屋敷での暮らしが好きだったという自分の気持ちを、改めて確かめます。
疑われる理由が、本人にはどうしようもない「におい」だというところが、私には刺さりました。働きぶりでは晴らせない疑いがある。二周目は、レムがスバルを見る目つきの変化を、第4話から追いかけてみてください。解讀[6]
題名に二度出てくる「ゼロ」
第3話の題名は「ゼロから始まる異世界生活」、第18話の題名は「ゼロから」です。事實[2]
一周目の私は、どちらも作品名をもじった題名だと思って読み流していました。二周目に並べると、第3話は異世界に来た一日目の終わり、第18話は第三章の真ん中です。同じ「ゼロ」が、物語の中で二度、別の場所に置かれています。作品中的觀察
中段為止第三章の展開(第12話〜)點擊展開
王都の式典に押しかけたスバルは、騎士ユリウスとの事実上の私闘で負け、エミリアとも決裂してしまいます。打つ手をなくした彼は、せめてレムだけは救おうと国の外へ逃げようとしますが、レムに説得されて腹をくくり直し、もう一度運命とぶつかることを選びます。
話数の並びから見ると、この立ち直りは第17話「醜態の果てに」と第19話「白鯨攻略戦」のあいだ、つまり「ゼロから」の回のあたりに置かれていると読めます。第3話のゼロは、何も持たずに来た者のゼロ。第18話のゼロは、一度全部を失ったと思った者のゼロ。同じ言葉でも、二度目のほうがずっと重いのです。有依據的推測
そこ、一周目でいちばん泣いた。説明より先に、もう一回立つって決めるとこ。喜好
私もです。ただ二周目に泣いたのは、立つと決める前に、ちゃんと相手の話を最後まで聞いているところでした。早く動くことと、聞くこと。どちらか一つでは足りないのですね。解讀
あの曲が流れる回を数える
第1期のエンディングテーマ「STYX HELIX」(MYTH & ROID)は、第1話から第11話までの奇数話と、第25話で使われています。第13話と第17話から第23話までの奇数話、そして第25話には「Stay Alive」が使われました。事實[3]
一周目は気づきませんでした。二周目は、エンディングが流れない回、別の曲が流れる回に印をつけてみてください。話の終わり方によって、流れる曲が変わっているように私には見えます。どの回で「いつもの曲」が来なかったかを数えると、その回の終わりの重さが、もう一度胸に戻ってきます。解讀
最終話の題名
第1話につけられた題は「始まりの終わりと終わりの始まり」。第25話のほうは「ただそれだけの物語」です。事實[2]
結局·真相結末(第25話)點擊展開
アニメ第1期を締めくくるのは、スバルの告白の場面です。魔女教から村の人々を救ったあと、なぜそこまでするのかとエミリアにもう一度問われ、スバルは自分の想いを告げます。
第1話の題名が、終わりと始まりを入れ子にした長い言葉だったのに対して、最終話の題名は拍子抜けするほど短い。何度もやり直した二十五話の果てに残ったのが「ただそれだけ」だというのが、私にはとても誠実に思えました。大きな勝利の話ではなく、一人に気持ちを伝えるまでの話だった、と。解讀[7]
「ただそれだけ」って言える人、強いよね。私なら何か足したくなる。解讀
足さずに済む言葉にたどり着くまでが、長いのだと思います。……私は、いまでも前置きが長いままですが。
二周目は第1話で、銀髪の少女が自分の名前を名乗る場面を、彼女の顔だけを見て観直してください。