今日は二人とも、歌わない側です。スイもルカも、好きな主題歌は聴く専門。だから今日は、歌詞を声に出す代わりに、それぞれの言葉で言い直しながら読みました。歌詞そのものは載せません。どこまでも、二人がどう受け取ったかの話です。
orionは黙っている人の曲
最初は私から。orion。聴くたびに、零くんが言わずにいた気持ちのほうを思い出す曲。喜好
米津玄師さんが作詞と作曲を手がけた「orion」は、NHK総合で放送されたアニメ『3月のライオン』の、第1シリーズの第2クールで、エンディングに使われた曲です。米津さんにとって、アニメの主題歌はこれが初めての担当でした。事實[1]
あの、失礼かもしれないのですが……主題歌というのは、作品のために書かれたものと、たまたま選ばれたものと、どちらが多いのでしょう。この曲は、どちらだったのかと。
これは、はっきり作品のほう。米津さんが『3月のライオン』を手に取ったのは、月島で暮らしていたころなんだって。月島は作品の舞台でもある場所。前から特別な作品だった、と話してるそう。初めてアニメの曲を作るときに強く意識したのは、主人公の桐山零だった、とも。事實[2]
ここからは私の受け取り方。1番は、夜の景色のなかで語り手が自分の内側をじっと見ている感じがする。サビに入ると、その目が自分から離れて、そばにいる誰かのほうへ向く。でも、向いたからといって、全部を言葉にはしない。解讀
言葉にしないまま、向く。……それは、零さんが川本家の食卓にいるときの感じに、少し似ていますね。にぎやかな三姉妹のそばで、何か言いかけて、結局ごはんを食べている。解讀
うん。将棋の場面の零くんはよくしゃべるのに、自分の気持ちの話になると黙る。私はこの曲を、その黙っている時間のほうに寄り添う曲として受け取った。解讀
私は正直に申しますと、最初は星の歌だと思って聴いていました。題が星座の名前ですから。でもいまのお話を聞くと、星を見上げているのは、言えないことを抱えた人のほうなのですね。喜好
STYX HELIXは二人の視点でめぐる
次は私が選んだ曲を。STYX HELIXです。配達の帰り道に聴くと、いつも少しだけ歩みが遅くなります。仕事が遅いのは、また別の理由なのですが。喜好
テレビアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』は2016年4月に放送が始まり、その前期のエンディングに流れたのが「STYX HELIX」です。作詞と作曲はMYTH & ROIDが手がけました。事實[3]
この曲の歌詞には、主人公から見た景色だけでなく、ヒロインの側から、死に戻る主人公を見たときの視点も入っている、と言われています。事實[4]
それ、知らなかった。じゃあ、一曲のなかに、戻ってくる人と、戻ってくる人を見ている人が、両方いるんだ。
はい。私の読み方では、1番は何度も同じ場所に立たされる側の、言いようのない疲れのようなものが前に出ています。ところが後半に進むと、その人を外から見つめる、もう一つのまなざしが重なってくる。どちらの声なのか、聴くたびに少しずつ揺れるのです。解讀
主人公は、自分だけが覚えている時間を、誰にも言えないまま抱えているんだよね。そう考えると、この曲も、黙っている人の曲なのかもしれない。解讀
曲名の由来も、少しだけ調べてきました。この曲名は二つの言葉の組み合わせだそうです。一つは「ヘリックス」で、螺旋という意味。物語では死と生が繰り返されて、それが仏教の輪廻に重なって見えたので、最初にこの言葉が浮かんだのだとか。もう一つは「ステュクス」で、ギリシア神話に出てくる、冥府の河の女神の名前です。事實[6]
輪じゃなくて、螺旋なのがいい。同じところを回っているように見えて、上から見ると少しずつ高さが違う。やり直すたびに、まったく同じ場所には戻っていない、ということだと私は受け取った。解讀
アニメのエンディングでの使い方も、一通りではなかったそうです。映画のエンドロールみたいに流れたこともあれば、イントロが違う形で始まったこともあり、曲そのものが物語の一部に組み込まれたこともあった、と。事實[5]
ですから、毎回同じ曲なのに、毎回同じ入り方ではない。螺旋の話と、どこかでつながっている気がしております。解讀
旅人の唄は朝の曲
最後の曲は、朝に聴いています。ベランダの鉢植えに水をやりながら、小さな音で。旅人の唄です。喜好
大原ゆい子さんは、テレビアニメ『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』第1期の主題歌で、作詞・作曲・歌唱を通して担当しました。オープニングテーマの編曲を手がけたのはMANYOさんです。第1期で「旅人の唄」がオープニングテーマとして流れたのは、第1話から第8話まででした。事實[7]
前の二曲より、音が土っぽいよね。笛と弦の音が先に聞こえる。喜好
はい。マンドリンやティン・ホイッスルなど、伝統的な楽器が使われているのは、民族風の響きにするためだそうです。ただ、どこか実在の国の雰囲気になってしまわないように、音色は本来のものから少し外してあるとか。大原さんご自身は、キャッチーで、いかにもJ-POPらしい曲とは違うものを作ってみたかったそうで、この曲を任されて楽しかった、とお話しされています。事實[8]
ここからは私の受け取り方です。この歌は、どこかへ帰り着く歌というより、知らない土地で一日ずつ暮らしを組み立てていく人の歌に聞こえます。遠くを見る言葉より、足もとを確かめる言葉のほうが多いように感じるのです。解讀
主人公は、前の人生でできなかったことを、新しい世界で一からやり直そうとする人だよね。だから、旅の歌なのに、急いでいない。私もそこが好き。解讀
どこの国でもない音、というのも、私にはありがたいのです。どこの出身かを問われない旅の歌は、聴いていて肩の力が抜けます。喜好
三つ並べてわかったこと
orionは、言えない気持ちを抱えたまま誰かのほうを向く曲。STYX HELIXは、言えない時間を抱えた人と、それを見ている人が重なる曲。旅人の唄は、言葉より先に足を動かす曲。三つとも、主人公が胸の内を全部は話さない作品の歌だった。解讀
私は、黙っていることを責めない歌ばかりを選んでいたのだと、今日気づきました。……少し、照れますね。喜好
ルカは、黙っている人に優しい歌が好きなんだと思う。解讀
主題歌の歌詞を読むときは、誰が歌っているかだけでなく、誰が黙っているかを探してみる。作品の見え方が一つ増えます。