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我的6部作品

『ファントム・スレッド』の裏地に教わったこと

東京に戻って、朝から晩まで服の絵を描いていたころ。仕立屋の映画を観た夜、服の内側に自分だけの物語を縫い込みたくなった。採寸、仮縫い、針目の音。服を作る手の時間がまるごと映っている一本を、裏地の話で語ります。

適合這樣的人
服を作ること、着ることが好きな人へ。誰にも見えないところに手間をかける仕事に、ぐっとくる人にも。
劇透範圍
無劇透 1950年代ロンドンの仕立屋という舞台設定と、序盤に描かれる仕事ぶりまで。二人の関係の行方には触れません
發言的人
Lucano × Misa
主張的種類: 事實 作品中的觀察 有依據的推測 解讀 喜好
目錄 共 8 節·約 5 分鐘
  1. 終電のあとの部屋で
  2. どんな映画か
  3. 好きな理由その一 服の内側に縫い込むもの
  4. 好きな理由その二 採寸と仮縫いの手つき
  5. 好きな理由その三 朝食の音
  6. 僕の見方 仕立屋の孤独
  7. 苦手かもしれない人への入口
  8. ほかの6選と

三本目は『ファントム・スレッド』。仕立屋の映画です。物語は男と女の、ちょっと危うい関係の話でもあるけれど、その行方は書きません。僕が書きたいのは、服の内側の話。誰にも見えない場所に、何を縫い込むかという話です。

終電のあとの部屋で

イタリアから東京に戻ってきて、会社で働いていたころです。朝から晩まで、売れる服の絵を描いていた。モデルの仕事はやめて、おいしいものを我慢する理由もなくなった。体はどんどん大きくなって、それはそれで楽しかったんだけど、描く服のほうは、だんだん小さくなっていく気がしていました。喜好

ある夜、終電で帰ってきて、ワインを一杯だけ注いで、この映画を観ました。観終わったあと、クローゼットから自分のジャケットを全部出して、裏地をひっくり返して眺めた。何も縫い込まれていない裏地を見ながら、決めたんです。自分の店を持とう、と。喜好

どんな映画か

フォーカス・フィーチャーズの作品ページでは、舞台は1950年代、戦後のロンドン。名高いドレスメーカーのレイノルズ・ウッドコックときょうだいのシリルが、ウッドコックの館の独特のスタイルで、王族や映画スターたちに服を仕立てている、と紹介されています。監督と脚本はポール・トーマス・アンダーソンさんです。事實[1]

好きな理由その一 服の内側に縫い込むもの

この映画の仕立屋は、服の外からは見えない内側にまで、自分だけの手をかけています。着ている本人だけが知っている物語が、そこにあるように見えた。僕はここで、手に持っていたグラスを置きました。作品中的觀察

服は外側で語るものだと思っていたんです。色、柄、形で、着る人がどんな人かを見せる。でも、内側にも語れる場所がある。むしろ、誰にも見せない場所だからこそ、いちばん大事なことが縫い込める。いま僕の店の服には、裏地の端に一か所だけ、小さな刺しゅうを入れています。何を縫ったかは、着る人にしか教えない。解讀

好きな理由その二 採寸と仮縫いの手つき

メジャーが体に沿う音、ピンを打つ指の速さ、仮縫いの布にチョークで印をつける線。作業場の場面になると、僕は急に背筋が伸びます。お針子さんたちが黙って手を動かしている場面なんて、もう、Perfetto! としか言えない。作品中的觀察

ここで語られているのは技術だけじゃないと思うんです。ドレス一着の向こうに、何人もの手と、何日もの時間がある。完成したドレスを着た人が部屋に入ってくる場面で、僕はドレスより先に、それを縫った人たちの指先を思い浮かべてしまう。職業病ですね。解讀

Lucano

ミサさん、今日も美しい。この映画のドレスを着せたい人といえば、真っ先にあなたが浮かびます。

Misa

はいはい、ありがとう。浮かべるのはいいから、まず衣装の締め切りを守ってちょうだい。……でも、あの映画の着せ方は分かるわ。ドレスに入る前に、背中の伸ばし方から決めてるのよ、あの人たち。解讀

さすがミサさん、見ているところが違う。服は、着る人の姿勢と一緒になって初めて完成する。若いころモデルの現場でミサさんに叩きこまれたことを、この映画を観るたびに思い出します。喜好

好きな理由その三 朝食の音

この映画は音もおもしろい。朝食の席の、パンにバターを塗る音、カップを置く音。仕立屋は、その小さな音にさえ神経をとがらせる。服を作る人の集中が、どれだけ細いところまで張りつめているのかが、音で伝わってきます。おいしいものが大好きな僕としては、朝食はもう少し楽しく食べたいけどね。解讀

僕の見方 仕立屋の孤独

この映画の仕立屋は、美しいものを作るために、自分の暮らしを細かく決めごとで固めています。朝食の席の静けさも、仕事場の手順も。その几帳面さは、見ていて少し息苦しい。でも、作る人間としては、まったく分からないとは言えないんです。解讀

いい服を作ろうとすると、どうしても自分の世界が閉じていく。夜中まで一人で布に向かって、気づけば誰とも話していない日がある。僕が店の奥を開けて、人の声が聞こえる工房にしているのは、たぶんこの映画の仕立屋みたいにならないためでもあります。……ま、それでも、閉じた夜にしか縫えない一着もあるんだけどね。喜好

苦手かもしれない人への入口

大きな事件が次々に起きる映画ではないので、静かすぎると感じる人もいると思います。そういう人は、一度目は人物の関係より、服だけを追って観てみてください。作業場の場面、ドレスの試着の場面、パーティーの場面。服が出てくる場面を拾っていくだけで、物語の空気の変わり方が分かります。二度目に、人の心を追えばいい。喜好

ほかの6選と

作る人と着る人、両方の気持ちを描いている点では『Paradise Kiss』と、作業の過程そのものを見せてくれる点では『映像研には手を出すな!』とつながっています。でも「独立しよう」と僕の背中を押したのは、この映画の裏地でした。喜好

服の内側には、着る人だけが知っている物語を運べる。今夜、手持ちの上着の裏地を一度ひっくり返してみて。

本文中的作品

講述者 Lucano 熱愛美好事物幕後故事的瀟灑設計師 閱讀更多 Lucano 的文章 →

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