五本目は、サバイバルのまんが。何十冊もある。図書室で借りて読んでる。今日は庭で、キャンプの道具をならべてる父ちゃんのとなりで話す。
図書室のいちばん下の段
二年生の春。図書室の、いちばん下の段にならんでた。背中に「サバイバル」って書いてあって、それだけで借りた。中は、ぜんぶ色がついたまんが。字ばっかりじゃないから、おれでも読める。一回借りたら、次の週もまた借りた。いまは、いつも二冊ずつ借りてる。喜好
人気があるから、読みたいのが棚にないことも多い。そういうときは、返ってくる日を予想する。だれが借りてるかは分からないけど、おれより読むのがおそい人だと、二週間かかる。予想が当たって、棚にもどってた日は、ちょっと勝った気がする。喜好
ページをめくる前に考える
好きなところ。本当に起きたらどうするかが、書いてある。ジオは、すごいピンチに何回もあう。そのたびに、どうやって生きのこるか考える。おれは、ページをめくる前に、自分ならどうするかを先に考える。当たってたら一点。はずれたら、なんでジオのほうがよかったのか、もう一回読む。喜好
最初に借りたのは深海
最初に借りたのは、深海のサバイバル。うちは海の近くだから、海の本からにした。父ちゃんが網でとってくる魚より、ずっと深いところの話。深い海は、光がとどかないって、この本で知った。おれは魚の骨の名前なら全部言えるけど、深いところの魚の骨がどうなってるかは知らない。今度、図鑑で調べる。喜好
深いとこの魚は、俺も網で見たことはねぇな。たまに、見たことねぇ顔のやつはかかるけどな。
それ、どんな顔?
……口がでかい。お前みたいに。
キャンプで勝てるか
読むと、キャンプで父ちゃんに勝てる気がする。父ちゃんは、海のことなら何でも知ってる。でも、本に書いてあることを先に読んでおけば、一個くらいは勝てるかもしれない。喜好
父ちゃん、問題。もし山で道に迷ったら、どうする?
動かねぇ。腹が減っても、その場で待つ。海でも山でも、うろうろするのがいちばんあぶねぇんだ。喜好
本だと、どうだったっけ。明日、図書室でたしかめる。
おれのノートには、父ちゃんの答えと、本の答えを、ならべて書くところがある。同じだったら丸。ちがったら、両方のこす。どっちが正しいかは、そのときは決めない。喜好
いいじゃん、それ! 二つ書いとけ。困ったときに、どっちかが助けてくれる。
家のタブレットにも聞くことがある。そうすると、答えが三つになる日もある。タブレットの答えは長い。父ちゃんの答えは短い。本の答えは、まんがの中で、ジオがやってみせてくれる。おれは、やってみせてくれるのがいちばん覚えられる。だから、本の答えに、星をつけておく。喜好
テントの中で読んだ
夏のキャンプに、一冊持っていった。父ちゃんが火のしたくをしてるあいだ、テントの入り口で読んだ。外で虫が鳴いてて、まんがの中も森だった。どっちが本物か、ちょっと分からなくなった。読み終わってテントを出たら、父ちゃんが「何か分かったか」って聞いた。おれは「虫は、たぶん、こっちを見てない」って答えた。父ちゃんは、すごく笑った。喜好
あれは笑うだろ。虫に見られてると思ってたのか。
思ってた。いまも、ちょっと思ってる。
父ちゃんのピンチ
サバイバルを読むようになってから、父ちゃんに、船でいちばんピンチだったときの話を聞くようになった。父ちゃんは、いつも少しだけ話して、すぐ「腹減ったな」って言う。だから、全部は聞けてない。喜好
時化の日はな、とにかく手を止めねぇ。考えるのは、港に帰ってからだ。喜好
本のジオは、ピンチの中で考える。父ちゃんは、ピンチの中では手を動かして、考えるのはあと。どっちもほんとだと思う。たぶん、海と本だと、時間の速さがちがう。おれは、両方できるようになりたい。解讀
人体のは、まだ借りてない
人体のサバイバルがあるのも知ってる。でも、まだ借りてない。人の骨の絵が出てきそうだから。魚の骨は平気なのに、人の骨の絵はこわい。父ちゃんは笑うけど、こわいものはこわい。喜好
笑ってねぇよ。俺だって、夜の甲板は暗くて、いまでもちょっとこえぇ。
好きな場所の一冊から
はじめての人は、自分の好きな場所の本から読むといいと思う。海が好きなら海の、虫が好きなら虫の。おれは、一冊目を最後まで読んで、次の日にはもう、ほかのを借りに行った。テーマがいっぱいあるから、なかなかなくならない。喜好
理科ダマンとコナンのあいだ
六本目の理科ダマンも、科学のまんが。サバイバルは、ピンチの中で答えを出す。理科ダマンは、問題を出されて、ゆっくり考える。四本目のコナンは、本じゃなくて、ほんとに島で生きてる。サバイバルを読んだあとにコナンを観ると、コナンがもっとすごく見える。解讀
今度のキャンプ、水くみはお前にまかせるか。
やる。どこでくむか、先に本で調べとく。
本の答えと父ちゃんの答え。ちがっていたら、両方のこしておく。サバイバルは、その練習になる本。