今日、どれくらい元気が残ってる? この映画は情報が多いので、疲れている日は二周目を週末にとっておくのもありです。これは『スパイダーマン:スパイダーバース』を最後まで観た人向けの二周目案内。展開に触れるところは、押すまで開かない箱に入れました。箱の外では、物語の行き先には触れません。
一周目は目が追いつかなかった
2018年に公開された『スパイダーマン:スパイダーバース』は、アメリカ製のCGアニメ映画です。マーベル・コミックの漫画が元になっている『スパイダーマン』映画で、アニメとして作られたのはこれが最初。長編アニメ映画賞は、第91回アカデミー賞でこの作品に贈られました。事實[1]
絵は基本的に2コマ打ちで動かし、スローモーションになる場面だけ3コマ打ちに切り替えています。残像まで一つずつ手で描き足していて、冒頭の10秒が仕上がるまでにおよそ1年を費やしたそうです。キャラクターごとに絵柄も変えてあります。スパイダーグウェンは彼女が主役のコミックのタッチ、スパイダーマン・ノワールはモノクロ、スパイダー・ハムはなるべくカートゥーンらしく。事實[4]
一周目の僕は、正直、目が追いつきませんでした。動きの粒が普通のアニメと違うので、気づくと場面が切り替わっている。二周目は、物語より先に「この人は誰から何を受け取ったか」だけを追うことにしました。そうしたら、速すぎる画面の中に、ゆっくりした受け渡しがいくつも隠れていたんです。解讀
父と叔父のあいだに立つ少年
警察官の父ジェファーソンは、スパイダーマンを街の厄介者のように見ている。マイルスは、その父の期待に応えようとして苦しんでいます。事實[5]
一方で叔父のアーロンは、マイルスと一緒にグラフィティを描く相手でもあります。マイルスが突然変異のクモに噛まれて特別な力を手に入れたのも、二人で壁に絵を描いていた最中のことでした。事實[2]
一周目の僕は、父を「口うるさい人」、叔父を「話のわかる人」と分けて観ていました。二周目は、二人とも同じくらい本気でマイルスに何かを手渡そうとしていることに目が行く。父は言葉で、叔父はスプレー缶で。冒頭の家族と叔父の場面を、二周目は早送りしないでほしいです。解讀
結局·真相叔父について(途中の展開)點擊展開
マイルスは重圧から逃れるように、叔父アーロンに会いに行きます。そこで知ったのが叔父の正体。キングピンの手下のヴィラン、プラウラーでした。事實[3]
結局·真相叔父について(終盤の展開)點擊展開
終盤、キングピンに撃たれたアーロンは、マイルスの腕の中で息を引き取ります。甥を手にかけることができず、見逃そうとした、その報復でした。
二周目に二人でグラフィティを描く場面を観ると、叔父が教えていたのは、壁に自分の印を残すことでした。誰かの役を演じるのではなく、自分の色で描くこと。叔父は最後まで、マイルスに自分の道を選ばせようとしていた人に見えました。解讀[7]
小さな装置を落とす
キングピンたちが駅の地下道で、異次元への扉をこじ開ける実験をしていました。その場にたまたま出くわしたマイルスは、スパイダーマン本人、ピーター・パーカーから小さなメモリースティックを預かります。ところがスパイダーマンになるための特訓をしているうちに、それを壊してしまう。事實[2]
一周目は、ドジな場面として笑っていました。二周目は、手渡されたものを一度落とすところから物語が始まっていることに気づく。託されたものをそのまま守れる人なんて、あんまりいない。落として、壊して、それでも拾い直すのがこの映画の一歩なんだと思います。解讀
大事なもの預かって、すぐ壊しちゃうの、わかるなあ。私なら一日寝込む。喜好
寝込んでもいいと思う。マイルスも、壊したあとにすぐ立ち上がれてたわけじゃないから。解讀
教えようとしてうまくいかない大人
別の次元からやってきたもう一人のピーター、ピーター・B・パーカーが、マイルスに力の扱い方を教えようとしますが、うまくいきません。ほかのヒーローたちにかけられるプレッシャーに、マイルスはだんだん押しつぶされていきます。事實[3]
一周目の僕は、早く覚醒してほしくてじれったくなっていました。二周目は、教える側のピーター・Bの顔を見てほしい。うまく教えられない大人も、自分のことで手いっぱいの大人も、それでも何かを渡そうとしている。仲間が集まる話は、強い人が弱い人を引っぱる話だけじゃないんだと、二周目の僕は思いました。解讀
中段為止中盤で明かされること點擊展開
キングピンが異次元への扉を開こうとするのは、家族のためでした。亡くした妻ヴァネッサと息子リチャード、その別の世界の姿を連れてこようとしているのです。
二周目に知ったうえで観ると、この映画は家族を失いたくない人たちの話が何本も並んでいる。手放せない人と、手渡そうとする人。同じ「家族」という言葉が、まったく逆の方向に人を動かしているのが見えてきます。解讀[6]
二周目は、絵柄の違うスパイダーマンたちが同じ部屋に並ぶ場面で、一度止めてみてください。白黒の人、カートゥーンの人、コミックの画風の人。描き方が違うのは、それぞれが別の世界で、別の誰かから何かを託されてきた人たちだからだと、僕は受け取りました。同じ名前を名乗っていても、手渡されてきたものは一人ずつ違う。だからマイルスも、誰かと同じスパイダーマンになる必要はないんです。解讀
ドアの向こうの声
結局·真相結末點擊展開
ピーター・Bは、装置を止めるのは自分だと決めて残ります。マイルスを死なせたくなくて、縛りつけてまで。そこへ父ジェファーソンが来て、寮の部屋のドア越しに話しかける。自分が間違っていたと謝り、マイルスを信じていると伝えるのです。その言葉に背中を押されて、マイルスは能力を思いどおりに扱えるようになります。拘束を抜け出し、メイおばさんの手を借りて作ったのが、自分だけのスパイダーマンのスーツ。戦いが終わりに近づくころには、父もスパイダーマンを厄介者ではないと知り、マイルスを励ますのでした。
二周目にここを観ると、冒頭の家族の場面が全部つながります。父は最初から最後まで、言葉で手渡す人でした。そしてマイルスが着るのは、誰かのお下がりではなく、自分で作ったスーツ。託されたもの、教わったもの、壊したものを全部抱えたうえで、最後の一歩だけは自分で選ぶ。僕の言う「一歩を選んだ瞬間」は、まさにここでした。解讀[8]
二周目のための見方メモ
一つめ、冒頭の家族の場面を早送りしない。二つめ、誰かが誰かに物を渡す場面に印をつける。三つめ、スパイダーマンたちの絵柄の違いを、一人ずつ止めて見る。全部やらなくて大丈夫。一つ決めるだけで、あの速い画面がゆっくり見えてきます。喜好
ハル、観終わったら何か作りたくなってるでしょ。
なってる。とりあえず、ノートパソコンのふたのステッカーの横に、自分で描いた印を一個足そうかな。喜好
二周目は冒頭の、叔父と二人でグラフィティを描く場面を早送りしないで観る。最後の一歩の材料は、全部あそこで手渡されていた。