今日、泣く余裕はある? なければ、元気な日にとっておいてください。この話は、TVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を最終話まで観た人向けの二周目案内です。展開に触れるところは、押すまで開かない箱に入れました。箱の外では、物語の行き先には触れません。
一周目はハンカチしか見ていなかった
原作のないオリジナルのTVアニメで、全11話です。2011年4月に始まり、フジテレビの「ノイタミナ」枠ほかで放送されました。事實[1]
一周目の僕は、後半ずっとハンカチを握っていて、画面の細かいところを見る余裕がありませんでした。二周目は「泣く前に見ておくもの」を先に決めてから再生しました。見るものを決めておくと、同じ場面でも涙の理由が一つずつ言葉になる。勢いで観るのが好きな僕にしては、珍しく落ち着いた二周目です。喜好
鏡に何が映っているか
この作品は、めんまを、アニメによくある幽霊らしい描き方にはしていません。めんまは生きている人と同じようにふるまいます。そのうえで、鏡に姿が映らない、じんたんのほかには誰にも見えない、という二つで、この世の人ではないことを伝えています。事實[2]
一周目の僕は、めんまがあまりに普通にそこにいるので、この約束ごとを途中で忘れていました。二周目は、鏡やガラスが画面に出てくるたびに、そこに誰が映っていて、誰が映っていないかを確かめてみてください。にぎやかな場面ほど、映っていないことが静かに効いてきます。解讀
鏡を見るって決めておくの、いいね。泣くところの手前で、ちょっとだけ息ができそう。喜好
塩ラーメンの理由
じんたんは、もともとはみそラーメン派でした。でも、めんまが死んだその日に食べていたのがみそラーメンだった。それで、塩ラーメンを選ぶようになったとされています。事實[3]
僕は派手な場面より、ごはんの場面に弱い。この作品の二周目は、それがつらい方向に効きました。何気なくすする一杯が、何年も前のあの日から味を変えないまま続いている。二周目は、じんたんが何を食べているか、誰と食べているかを追いかけてみてください。食卓の人数が、物語の進み方を教えてくれます。解讀
最初に信じた一人
第2話のあらすじでは、じんたんは秘密基地でぽっぽと久しぶりに顔を合わせます。そこでじんたんは、めんまが自分の前に出てきたこと、願いをかなえてほしがっていることを、隠さずに話す。ぽっぽは疑いもせずにそれを信じて、じんたんに助言をします。事實[4]
僕の研究テーマは「主人公以外の人が物語を前に進める場面」です。この作品で最初に物語を動かしたのは、ぽっぽの「信じる」だったと二周目の僕は思いました。証拠も何もない話を、その場でそのまま受け取る。一周目はただ明るい人に見えていたぽっぽの笑顔が、二周目は、それだけで勇気のいることに見えます。解讀
めんまの願いをかなえようと、じんたんはゲームショップと工事現場、二つのアルバイトをかけ持ちして、体に無理をさせていました。事實[5]
家から出られなかった人が、誰かのために働きに出る。一周目は「立ち直った」とひとことでまとめていました。二周目は、その一日一日のしんどさまで見える。僕はすぐ「また頑張れた」でまとめたくなる癖があるので、ここは急がずに観たいところです。喜好
中段為止中盤の展開(第9話)點擊展開
第9話のあらすじでは、蒸しパンがあなるたちの目の前に出されます。あなるたちは心を揺らしながらも、それでめんまがいると信じる。ゆきあつのほうは、めんまがじんたんにしか見えないことに、すっきりしない気持ちを抱えます。
ずっと「じんたんにしか見えない」だった存在が、食べものを通して、ほかの仲間の前に姿を見せる。言葉や証拠ではなく、誰かが作ったものが信じるきっかけになる。二周目にこの回を観ると、第2話で何の証拠もなく信じたぽっぽの姿が、もう一度重なってきます。解讀[7]
題名を斜めに読む
タイトルロゴへの注文が「文学的な印象で縦書き4行」だったそうです。できあがったロゴは、線をたどって斜めに読むと「あのはな」という略称が浮かぶようになっています。第6話の題名は「わすれてわすれないで」です。事實[10]
長い題名の中に、短い呼び名がこっそり隠れている。二周目の僕は、これを作品全体の作りに重ねて観ました。言いたいことを、まっすぐ一行では言えない人たちの話だから、本当の気持ちはいつも斜めの線の上にある。第6話の題名も、忘れたいのか、忘れたくないのか、ひとつに決めないまま並んでいる。二周目は、登場人物の台詞を聞くたびに「斜めに読むと、何が隠れてる?」と考えてみてください。解讀
秘密基地という場所
めんまが字を書けるのは、どういうわけか秘密基地の中だけだとされています。事實[6]
一周目は、不思議な決まりごとの一つとして通りすぎていました。二周目は、秘密基地という場所が、めんまにとってどれだけ特別かを知っている。基地の場面が来たら、めんまの手がどこにあるか、何かを書こうとしていないかを見てみてください。解讀
結局·真相結末に向けて(第10話)點擊展開
第10話のあらすじでは、願いをかなえる日を明日に控えて、めんまはじんたんの母親の仏壇に手を合わせ、そのことを伝えます。何気なく自分の手に目をやると、手はうっすら透けはじめていました。事實[8]
結局·真相第10話で明かされること點擊展開
めんまの願いは、じんたんの母・塔子さんとの約束でした。強がって泣かなくなってしまったじんたんを、「泣かせる」という約束です。
二周目にこれを知って第1話から観ると、めんまがじんたんの家にいる場面が、ぜんぶ違って見えます。第10話で仏壇に手を合わせていたのは、約束の相手への報告だった。めんまは、誰かとの約束を守るために、じんたんのそばにいたんです。解讀[9]
結局·真相結末(最終話)點擊展開
最終話で、めんまは残った力をすべて使って、五人に手紙を書きます。それを読んだ五人の前に、めんまが姿を見せる。かくれんぼで見つけてもらった、という形にして、めんまは仲間に送られて旅立ちます。
秘密基地でしか文字を書けなかった人が、最後に五人一人ひとりに言葉を残す。一周目の僕は、ここで何も考えられないくらい泣きました。二周目は、それが第1話から続いていた「書けない」の答えだったと気づいて、もう一度泣きました。見つける遊びで見送るのも、昔の五人と一人の遊びの続きなんだと思います。解讀[9]
二周目のための見方メモ
一つめ、鏡やガラスが出てきたら、誰が映っているかを見る。二つめ、じんたんの食卓を追う。三つめ、ぽっぽの顔を、笑っていない瞬間まで見る。全部を一度にやらなくて大丈夫。泣くのは、どの順番でも同じくらい泣くので。喜好
観終わったら、あったかいもの食べよう。塩でもみそでも、好きなほうで。
うん。今日は急いで元気にならなくていいって、ナギに言われるの、ちょっとわかってきた。喜好
二周目は第2話のぽっぽの顔から観る。この物語を最初に前へ進めたのは、証拠なしで信じた一人だった。