目錄
私の6選の三本目は『俺だけレベルアップな件』。韓国で生まれた小説と漫画で、日本でもスマートフォンで縦に読めます。誰とどう戦って、どこまで行くのかは書きません。書くのは、縦に読む漫画の迫力と、最弱から始まる話の燃え方。
親指が止まらなかった帰り道
出会ったのは、空手の稽古の帰りのバス。道場の先輩に「これ縦に読むやつ、やばいよ」って教えられて、半信半疑で開いた。気づいたら降りる停留所を二つ過ぎてた。親指で画面を下へ送るたびに、何かが上から落ちてくる。紙の漫画では感じたことのない種類のスピードだった。
TVアニメの公式サイトでは、本作は韓国の小説・漫画作品として紹介されていて、原作・原案はChugongさん、作画はDUBU(REDICE STUDIO)さん、脚色はh-goonさんです。主人公の水篠旬は、最低ランクのハンター。「人類最弱兵器」とまで呼ばれていた彼が、ある日いきなり、自分ひとりだけ「レベルアップ」できる力を得ます。事實[1]
好きな理由1:縦に落ちる
縦に読む漫画は、コマが上から下へ一列に並んでる。だから、コマとコマのあいだの白い余白が、そのまま「間」になる。余白が長いと、指を動かしてるあいだに息を止めることになる。で、次のコマで何かがドンと来る。高いところから落ちる、上から何かが降ってくる、っていう動きと、読む指の向きが同じなの。これ発明だと思った。解讀
それに、絵の形が紙の漫画と違う。横に広い見開きの絵は少なくて、そのかわり、縦にとても長い一枚の絵が出てくる。高い建物、深い穴、空から落ちてくるもの。見上げたり見下ろしたりする場面で、それがすごく効く。画面の幅に合わせて、絵の形そのものを変えてるの。作品中的觀察
それ分かる。読んでるのに、体が下に引っぱられる感じ。
そう! アカリ、体で読んでるね。私たち、そういうとこ似てる。
でも私、速く送りすぎて、大事なとこ飛ばしてることある。
あるある! だから二回目は、わざとゆっくり読むの。稽古の型と同じだよ。速いのは、ゆっくりできてから。
好きな理由2:いちばん下から始まる
最初の主人公は、本当に弱い。周りのハンターたちに置いていかれて、それでも家族のために危ない仕事に行く。弱いのに、行く。ここで私はもう応援する側に入っちゃった。強くなる話はたくさんあるけど、いちばん下の段から一段ずつ上がっていくのを、縦にスクロールしながら見るのは、なんだか階段を自分で登ってる感じがする。解讀
黒帯も、いきなり取れるものじゃない。言葉が通じない道場で、型を一つずつ覚えた日のことを、この主人公を見るたびに思い出す。レベルが上がる表示が出るたびに、ちょっとだけ自分のことみたいにうれしい。喜好
いまも、稽古の帰りのバスで一話だけ読むのが習慣。停留所二つぶんで、ちょうど一話。テンションが上がりすぎて、また降りそびれそうになる日もある。そういう日は、次の停留所から歩いて帰る。それも稽古のうち、ってことにしてる。
好きな理由3:色が温度を持ってる
スマートフォンで読む漫画だから、全部カラー。この作品は、青と紫の冷たい光がすごく効いてる。ダンジョンの中は暗くて青い。そこに強い光が一本走ると、それだけで場面の温度が変わる。描く人として見ると、色の数を絞ってるのがうまい。暗い画面で目が迷わないのは、そのおかげだと思う。解讀
私の見方:同じ話が、縦と横で別の顔になる
この作品は、日本ではKADOKAWAから紙の単行本も出ていて、第24巻の判型はB6判です。事實[2]
私は縦で読んだあとに、紙の本もめくってみた。指で送る画面と、手でめくるページでは、同じ場面でも読む速さの決まり方が違う。縦だと余白の長さが私の息を止めさせるけど、紙だと、どこで止まるかが自分の手に戻ってくる。読む道具が変わると、同じ話の届き方も変わる。翻訳って言葉だけの話じゃないんだなって、ここで思った。それと、韓国の作品なのに、日本語版の主人公は日本の名前で呼ばれてる。読む国に合わせて、名前ごと引っ越してるんだと思う。有依據的推測
苦手そうな人への入口
縦に読むのが初めてなら、最初の数話は、指をゆっくり動かしてみて。速く送ると、余白の「間」が消えちゃうから。逆に、戦いの場面だけは指を止めずに一気に送ると、絵が動いて見える瞬間がある。暗い場面が多いので、画面の明るさは少し上げておくのがおすすめ。戦う場面には怖い怪物も出てくるから、苦手な人は昼間に読むといいよ。
ほかの5本とのつながり
『タンタンの冒険』は紙の上で世界を回って、この作品は画面の下へ下へ落ちていく。向きは違っても、絵が先に体を動かしてくれるところは同じ。『Arcane/アーケイン』の拳の重さが好きなのも、ここで「弱いところから殴り返す」話に燃える体になったからかも。喜好
縦に読む漫画は、余白が「間」。指をゆっくり動かすと、上から降ってくる一コマがもっと重くなる。