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日常

公民館まつりとAIのポスター

剧透范围 无剧透 『ドラえもん』『カードキャプターさくら』『甘々と稲妻』の、物語の始まりの設定と登場人物の紹介の範囲まで。展開と結末には触れません

日曜の昼、海辺の町の公民館まつり。豚汁の湯気の向こうの掲示板に、中学の文化祭のポスターが貼ってある。AIで作った案に決まった一枚だ。通りすがりの衣装の人が足を止めて、話は「AIで作るのはありか」へ転がっていく。

适合这样的人
AIで作った絵や文章を、いいと思う気持ちと、少し引っかかる気持ちの両方を持っている人へ。どちらかに決めなくていい話です。
发言的人
Ito × Homare × Rei × Shizuka
同人展 海辺の町の公民館まつり。ロビーの掲示板の前と、豚汁の売り場の長机 日曜の昼

公民館のロビーには、味噌と焼きそばのにおいが混ざっていた。豚汁の大鍋の前では、柿色のエプロンのシズカがお玉を持ち、ホマレが割り箸の束を運び、イトは紙コップを十個ずつ数えて並べている。

掲示板には、中学の文化祭のポスターが貼ってあった。夕方の空の色が、上から下へ少しずつ変わっていく一枚。その前で、黒い上着にカメラの鞄を下げた、髪の長い人が足を止めていた。顔を近づけたり離したりして、紙の端から端まで、ずいぶん長く見ている。

Homare

それ、姉ちゃんのクラスのポスター。AIで作ったやつ!

Ito

それ、今言わなくていいやつ。

Rei

空、四段で色が切り替わってる。いちばん下の橙、境目が見えない。きれい。

Ito

ありがとうございます。作ったの、私じゃないですけど。

Shizuka

よろしければ、お豚汁をあちらの席でどうぞ。子どもたちが騒がしくて、すみません。

Rei

いえ。一杯ください。……レイです。友だちが着替えてるあいだ、待ってるだけなので。

長机の端に、四人の紙コップが並んだ。ホマレはレイの鞄のカメラを、さっきからちらちら見ている。

Homare

レイさん、カメラの人? なに撮るの?

Rei

衣装。人は撮らない。今日は海の前で、友だちの衣装を撮りに来た。

Homare

人じゃなくて服だけ? それ、ほんと?

Rei

ほんと。縫い目のほうが、顔より正直だから。

Homare

ふうん。おれね、分かんないこと、うちのタブレットのAIに聞くんだ。で、父ちゃんにも聞く。

Rei

二回聞くの、正しい。私、仕事でAIに指示を書いてる。作る側の仕事。

Homare

作る人! じゃあさ、AIってうそつく?

Rei

つく。本人は、うそのつもりじゃない。だから、出てきたものは私が確かめる。

Homare

父ちゃんもつくよ。うそのとき、父ちゃん、声でかい。

Shizuka

……まあ。それは、おうちの中だけのお話にしておきましょうね。

Homare

でもさ、AIってドラえもんみたいじゃん。何聞いても、すぐ出てくる。

Shizuka

未来から来たネコ型ロボットでしたね。上の子たちのころから、うちでもずっと観ています。[1]

藤子・F・不二雄の漫画。22世紀から来たネコ型ロボットのドラえもんが、勉強もスポーツも苦手な小学生・野比のび太を助ける

Ito

でも、道具を使いすぎると、のび太、だいたいひどい目にあってない?

Rei

あってる。ポケットから出した道具に調子に乗って、しっぺ返しが来る話が多い。……ここからは、私の見方。ドラえもんの仕事は、道具を出すことより、出したあとも隣にいることに見える。[1]

一話完結の話の多くは、ひみつ道具でいったん困りごとが片づくが、使い続けたせいで、しっぺ返しを受ける形

Homare

隣にいる……。タブレットは、隣にいないもんね。充電かごに入ってる。

イトが小さく笑いかけて、紙コップで口元を隠した。レイはそれを見ないふりをして、掲示板のほうへ顎を向けた。

Rei

あのポスター。あなたの案も、あった?

Ito

ありました。手で描いたの。いまは、美術部のロッカーに入ってます。

Ito

AIの案、ほんとにきれいだったんです。絵が苦手な子も、あれなら自分も案を出せるって言ってた。それはいいことだと思う。作った子も、色を一個ずつ選んでたし。

Ito

でも私、描いてて迷ってる時間が好きで。どの花を後ろに置くか、線をどっちに曲げるか。AIの絵は、迷う前のコマがなくて、いきなり最後のコマから始まってる感じがする。……見てた? って、聞けない感じ。

Rei

迷う前のコマ。……分かる。

Rei

私が針を持ったの、カードキャプターさくらの再放送。親友の子が、主人公の衣装を作ってる。[3]

CLAMPの漫画。少女漫画誌『なかよし』で1996年から2000年まで連載

Rei

カードを集めに行く主人公が着るのは、知世が作った衣装。あれがAIで出てきても、たぶんきれい。でも、小さい私が見てたのは服より、作ってる子の顔だった。[3]

Ito

作ってる子の顔。そこ、私も見ると思う。

Ito

私、家の四コマを描いてるんです。それは、たぶんAIには頼まない。父ちゃんの泣き顔、毎回ちょっとずつ違うから。

Homare

父ちゃん、四コマだと毎回泣いてるよ。ほんとは泣いてない日も。

Shizuka

泣いていない日も、泣きそうな顔はしていますからね。よく見ているんです、この子は。

Rei

毎回ちがう泣き顔。それは、どこにも記録が残らない。描いた人のノートにしか。

Homare

おれもAIに頼んだことある。ベイブレードの話つくってって。すぐ出てきた。おれが勝つ話。

Rei

どうだった。

Homare

つまんなかった。おれ、一回も負けないんだもん。負けないと、もう一回!って言えないじゃん。

Rei

……それ、メモしていい。負けない話は、もう一回がない。

Homare

でも、宿題の分かんないとこは、AIがいい。父ちゃんに聞くと、すぐ海の話になるから。

Ito

それはそう。

Rei

私なら、答えより途中を見る。間違いがいちばん混ざりやすいのは、途中だから。

Homare

途中……。丸つけのときの姉ちゃんと、同じこと言う。

Ito

言ってない。言ったかも。

Shizuka

私は、どうしても台所の目で見てしまうんです。私の好きな漫画に、料理のできないお父さんが、小さな娘さんのためにごはんを作りはじめるお話があります。[5]

雨隠ギドの漫画『甘々と稲妻』。『good!アフタヌーン』で2013年から2018年まで連載。主人公の高校教師・犬塚公平は、ひとりで幼い娘のつむぎを育てていて、教え子の飯田小鳥と料理をするようになる

Shizuka

お店のお弁当でも、おなかはふくれます。それでも、お父さんが自分で作りはじめてから、娘さんの顔が変わっていく。手間って、作った人の顔ごと届くものなのかしらと……。

Ito

母ちゃん、それだと、AIの案が負けたみたいになる。いい話にしないで。

Shizuka

あら、そうですね。選んだ人の顔があるなら、同じことでした。いまのは、取り消します。

Rei

私も、手順書の下書きはAIに頼みます。速いし、私より正確な夜もある。でも、報告の最後の一行だけは、消して自分で書く。

Homare

なんで?

Rei

……そこは、仕事じゃないから。うまく説明できない。

Rei

あと一つだけ。AIで作った、って書いてあれば、私は気にしない。書いてないのに、手で描いたって言うのは違う。作り方を隠すのと、作り方を選ぶのは、分けて考えたい。

Shizuka

黙って手柄にするのは、筋が通りません。そこは、私も同じです。

Homare

レイさんは、AI、好き? きらい?

Rei

両方。使うところと、使わないところがある。答え、二つ書いといて。

Homare

ノートに書く! 父ちゃんのとこの隣に。

レイの鞄の中で電話が震えた。着替え終わった、の一言だけらしい。レイは紙コップを捨てに行き、戻ってきて、掲示板のポスターをもう一度だけ見た。

Rei

ごちそうさまでした。……あなたの案も、いつか見たい。ロッカーから出たら。

Shizuka

お気をつけて。海の風は、午後から冷えますから。

レイが出ていくと、大鍋の湯気がまたロビーに広がった。シズカはお玉を持ち直し、ホマレはノートを取りに家へ走ろうとして、割り箸の束を思い出して戻ってきた。

Shizuka

さあ、お昼にしましょう。売り切れる前に、あなたたちの分もよそっておきますからね。

Ito

……来週、ロッカーから出してくる。私の案。四コマのノートに貼っとく。

本文中的作品

讲述者 Ito 连画格外的表情都会读的14岁少女漫画迷 阅读更多 Ito 的文章 →

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