即売会の片づけが終わった日曜の夕方、駅前のファミレスのいちばん奥の席で、レイさんと『薄桜鬼』の二周目の話をしました。レイさんは紙ナプキンを一枚広げて、真ん中に縦の線を引き、左に「記録」、右に「作中」と書きました。一周目、私は千鶴の目で観て、千鶴と一緒に泣いていました。今回は、新選組の人たちが記録の上でいなくなる日と、作中で同じ人に起きることを、一つずつ並べて観なおしています。それと、看護師なので、手当てをする人とされる人のことも。途中で私が何度か仕事の話に脱線したことも、そのまま書いておきます。レイさんは、そのたびに黙って紙ナプキンの右側に小さな印をつけていました。テレビアニメの第一期と『碧血録』の最後まで、大事なところは畳みながら話します。
紙ナプキンに引いた一本の線
『薄桜鬼』は、新選組を下敷きにした女性向けの恋愛アドベンチャーゲームから始まりました。幕末の実際の出来事をたくさん取りこみながら、鬼などの幻想の要素を物語の芯に置いているので、記録どおりには進まないところがいくつもあります。事实[1]
先に決めておきます。記録に残っていることと、作中で起きることは、この線で分けます。混ぜたまま話すと、どっちの話をしているのか途中で分からなくなるので。
はい。一周目は、そこが混ざったまま泣いていました。どこまでが本当にあったことか、分からないまま。
混ざるように作ってある。混ざる場所を探すのが、今日の二周目です。解读
私の側の線も、一本引いていいですか。手当てをする人と、される人。仕事柄、どうしてもそこから目が離れないので。
了解。二本ですね。
もとは、夜勤の休憩に少しずつ進めていたゲームなんです。アニメは、あとから追いかけました。だから一周目のアニメは、ゲームで知っている顔に答え合わせをするような観方になっていて。今回やっと、アニメそのものを観られました。
休憩の何分で、どこまで進めてました?
多くて二つ、選択肢を選ぶくらいです。休憩の終わりのアラームが鳴ったら、どこで止まっていても閉じる。だから私の中の新選組は、長いあいだ、夜中の短い時間の切れ端の集まりでした。アニメで初めて、それが一本の時間につながった。
最初の夜の京の町
物語は、江戸で育った雪村千鶴が、京で仕事をしている蘭方医の父・綱道と連絡がとれなくなり、男の身なりで京の町へ出てくるところから始まります。夜の町で、千鶴は人ではないような剣士たちに出くわし、新選組と出会う。新選組も綱道を捜していると分かって、千鶴は屯所で暮らすことになります。事实[2]
最初に観たとき、私はこの夜を「こわい場面」としてしか覚えていなかった。観なおして気になったのは、千鶴の立場です。客として迎えられたのではなく、見てはいけないものを見た子として、屯所に置かれる。最初の夜から、千鶴は守られる人であり、同時に、外に出せない人でもあります。解读
第一話は、千鶴が父の名前を口にする場面で、千鶴ではなく、聞いている隊士たちのほうを見てほしいです。喜好
黙っている人の顔ですね。一周目は千鶴と同じだけしか知らないから、隊士たちの黙り方がそっけなく見える。結末を知ってからだと、その黙り方の意味が変わると思います。解读
中段为止最初の夜の剣士たちのこと点击展开
千鶴が最初の夜に出くわしたのは「羅刹」です。変若水(おちみず)という薬を飲んだ者たちで、ときどき血を欲しがる衝動に襲われる。力を使えば使うほど命が削れていき、それが尽きると、体は灰になる。この薬を作ったのが、千鶴の父・綱道でした。
畳んだところを知ってから第一話に戻ると、隊士たちの黙り方は、そっけなさではなく、言えないことを抱えた人の黙り方に見えます。千鶴が捜している父の名前は、隊士たちにとっては、自分たちの体に関わる名前でもあった。事实[1]
中段为止千鶴の生まれ点击展开
千鶴も、人ではなく、東の鬼の一族・雪村家の生まれでした。そのせいで、けがの治りが早い。風間千景たち鬼の側は、千鶴を自分たちと同じ鬼だと言って、何度もさらおうとします。
けがの治りが早い子が、ずっと人の手当てをしている。私はそこが胸に引っかかったまま、最後まで観ていました。事实[1]
池田屋の上の階
第一期の序盤に、池田屋の夜が出てきます。上の階に踏みこんだ沖田と藤堂は、新選組の外から来た、得体の知れない強い男たちとぶつかる。事实[2]
ここは、記録と作中が近いです。踏みこんだ顔ぶれに沖田と藤堂がいるのは同じ。違うのは、上の階で待っている相手。有依据的推测
人と人の斬り合いの記録に、作中だけ、人ではない相手が足されている。舞台の言葉で言うと、同じ立ち位置に、台本にない役者が一人立っている感じです。解读
記録のほうは、池田屋のあと、ひと月あまりで京の町が戦になる。作中の大きな出来事も、この日付の並びに沿って置かれています。有依据的推测
日付を借りて、物語を進める。この作品は、そこがずっと律儀だと思います。だからこそ、律儀じゃなくなる場所が目立つ。解读
総長の左手
序盤の山南さんは、腕のけがのせいで、ほかの隊士と同じようには戦えないところから描かれます。机に向かっている場面の、手もとを見てほしい。剣を持てない手が、何を持っているか。喜好
病棟でも、手が思うように動かなくなった人が、それまでとは別の役目を自分で探しはじめることがあります。周りが止めても、黙って探す。山南さんの机の場面は、私にはそういう人の背中に見えました。解读
役目を失うのが、いちばんこわい人。単一障害点の逆ですね。自分がいなくても回るのが分かってしまう側。解读
中段为止総長が選んだこと点击展开
剣を振れなくなった山南は、変若水の研究を続け、自分を試しに使って薬を飲み、幹部のうち真っ先に羅刹になります。羅刹になった者たちの隊は存在を伏せられ、そこに加わった隊士は、世間には亡くなったものとして扱われる。のちに隊に加わった伊東甲子太郎は、山南が生きていると知って、ひどく動揺します。事实[1]
中段为止記録の上の総長点击展开
記録の山南敬助は、新選組の総長でした。池田屋の翌年、置き手紙を残して隊を抜け、大津で追いつかれて連れ戻されます。脱走は隊の決まりにそむくとして、切腹した。ただ、なぜそこまで追いつめられたのかを確かに示す記録はなく、理由にはいくつもの説があります。
二つの畳みを並べて、レイさんは「作中は、記録の上で人がいなくなるところを、表向きの死として使っている」と言いました。公式がそう説明しているわけではない、とも。私は最初、それに少し怒っていました。亡くなった人を、勝手に生かさないで、と。でも作中は、生かしたまま、日の当たる場所には出られない形にしている。記録をなかったことにはしていない。そう気づいて、怒るのをやめました。事实[7]
畳んだところ、どっちから読みました?
記録のほうからです。順番を変えると、同じ場面がまるで違う重さになりますね。
松本先生が来る回
第一期のなかほどに、幕府の蘭方医・松本良順が屯所に来て、隊士たちを診る回があります。千鶴はその医者が、父の知り合いだと気づきます。事实[1]
私、この回がいちばん好きです。剣の話のあいだに、診察の話が入る。大勢で寝起きする場所に、医者が一人入ってくると、それだけで空気が変わる。病棟でも、回診の前の朝は、みんな少しだけ姿勢がよくなります。喜好
大きな事件の起きない回ほど、組織の見取り図が出ます。誰が先に診てもらって、誰が後回しにするか。解读
あ、そこ。診察を後回しにしたがる人は、たいてい、どこか隠しているんです。解读
母も看護師でした。子どものころ、夜勤明けの母は、家族が熱を出すと、まず部屋の窓を少し開けて、それから額に手を当てていました。手当ては、薬より先に、部屋の空気から始まる。松本先生の回を観ていると、その順番を思い出します。剣の強さで人が並んでいた屯所に、別の物差しを持った人が一人入ってくる。その物差しで測ると、いちばん強い人が、いちばん弱っていることもある。喜好
中段为止同じ回で千鶴が知ること点击展开
この回で千鶴は、沖田が労咳を患っていることを知ります。
知った人が、知らないふりをして同じ屋根の下で暮らす。私は観なおしながら、沖田さんが咳きこむ場面の前後で、千鶴がどこを見ているかを追っていました。事实[1]
中段为止沖田さんのところへ来た人点击展开
千鶴によく似た娘として町に現れる南雲薫は、生き別れになっていた千鶴の双子の兄でした。薫は、労咳に苦しむ沖田に、変若水を飲めば病が治ると持ちかけます。けれど、その薬は労咳を治すものではありませんでした。
看護師として、ここはいちばん見ていられない場面です。治ると言って薬を差し出す人。体のつらい人は、治るという言葉にいちばん弱い。私は差し出す側の言い方より、受け取る沖田さんの手を見ていました。迷っている手なのか、もう決めている手なのか。レイさんは「差し出した側は、効かないことを分かっていた。それをあとで本人に言う順番が、一番こたえる」と言いました。事实[1]
油小路の夜
第一期の終わり近く、伊東甲子太郎の一派が隊を割ろうとする流れのなかで、藤堂さんの居場所が揺れます。藤堂さんが千鶴と並んで話す場面を、少しだけ丁寧に観てほしい。一周目の私は、年の近い二人の明るいやりとりとして通りすぎていました。喜好
中段为止藤堂さんのこと点击展开
藤堂は、伊東たちと一度は隊を離れます。伊東が暗殺されたあと、千鶴たちに説かれて、もう一度新選組の側で戦う。そこで天霧に敗れて深い傷を負い、変若水を飲んで羅刹になります。そのあとも、羅刹として隊とともに戦い続けます。事实[1]
中段为止記録の上の八番組組長点击展开
記録の藤堂平助は、伊東甲子太郎とともに隊を抜け、御陵衛士になりました。伊東が新選組に殺された夜、その現場へ駆けつけて新選組と斬り合い、討ち死にしています。二十四歳でした。
記録で藤堂さんがいなくなる夜に、作中の藤堂さんは生き延びる。ただ、生き延びた先は、昼の場所ではない。レイさんは「救いと罰が、同じ一杯の薬に入ってる」と言いました。一周目の私には、救いの側しか見えていなかった。事实[9]
油小路の回のあと、藤堂さんがどこに立っているかを気にして観ていました。明るかった人が、隊の真ん中から少しずつ外れていく。その外れ方を、作中は大きな声では言わない。解读
記録のほうでは、藤堂さんは池田屋で最初に踏みこんだ四人の一人でもあります。序盤の池田屋の場面と、この回を並べて観ると、同じ人の立ち位置の変わり方が見える。有依据的推测
いちばん前に飛びこむ人だったのに、ですね。舞台でも、最初の場面で真ん中にいた人が、終わりのほうで端に立っていると、それだけで物語が分かることがあります。解读
淀へ向かう道
第一期の最終話は、鳥羽・伏見の戦いです。新選組と新政府の側との争いが戦になり、千鶴もその只中にいます。この回は、千鶴が誰と一緒に、どこへ向かっているかを頭に置いて観ていました。事实[2]
この戦は、記録の側に名前と日付がはっきり残っている戦です。線の左に書くことが多い回。
だから私は、この回だけは記録のほうを先に読んでから観ました。何が起きる戦なのかを知ってから観ると、千鶴の後ろ姿を、少しだけ落ち着いて見送れます。落ち着いて観られるぶん、細かいところまで目が届く。喜好
结局·真相源さんのこと点击展开
戦のさなか、井上源三郎は千鶴と二人で援軍を求めに行き、その途中、千鶴の目の前で命を落とします。事实[1]
结局·真相記録の上の源さん点击展开
記録の井上源三郎も、鳥羽・伏見の戦いで戦死しています。
ここは、記録と作中が重なる場所です。日付も、戦の名前も動かしていない。重なるところで作中がしたのは、源さんの最期に、千鶴を立ち会わせたことでした。事实[10]
结局·真相船の上のこと点击展开
同じ戦で、山崎烝は土方をかばって深い傷を負い、江戸へ向かう船の上で息を引き取って、海に葬られます。
私は何度観ても、ここで自分の手の置き場所を探します。病棟では、間に合わなかったあとにも、やることが残っている。作中も、見送ったあとの船の上の時間を、きちんと描いていました。事实[1]
甲府から北へ
『碧血録』の幕開けは江戸です。鳥羽・伏見で負けて戻ってきた新選組に、攻めのぼってくる新政府の軍をくい止める役目が回ってきて、一行は甲府の城をめざす。そのあと宇都宮、会津、仙台を経て、最後は箱館まで、戦いの場所が北へ北へと移っていきます。事实[1]
地名、線の左側に並べておきます。甲府、宇都宮、会津、仙台、箱館。
こうして縦に並ぶと、ずっと北へ向かう旅ですね。私も遠征のときは、新幹線の窓から駅の名前が流れていくのを見ています。ただ、私の旅には、帰りの切符がある。並べた地名を見て、それがどれだけありがたいことか、少しだけ分かった気がします。解读
観なおすとき、私は休みの日の午後に、第一期の最終話と『碧血録』の最初の回の二話だけを、間をあけずに続けて観ました。第一期の終わりに起きたことが、次の回の朝にはもう続いている。その時間のつながりが、手に取るように分かりました。喜好
结局·真相局長のこと点击展开
近藤は、千鶴たちを逃がすために一人で残り、新政府の軍に投降して斬首されます。土方は近藤の命を救おうと手を尽くすけれど、かなわない。事实[1]
结局·真相記録の上の局長点击展开
記録の近藤勇は、下総の流山で捕らえられ、江戸の板橋で斬首されました。
レイさんは、ここで仕事の顔になりました。「抜けたら全部が止まる人っていますよね。局長が抜けたあと、隊からは少しずつ人が欠けていく」。事实[12]
结局·真相一番組組長のこと点击展开
会津で沖田は、局長の無念を晴らすため、そして副長たちを守るために、新選組を襲おうとしていた刺客たちに一人で立ち向かいます。羅刹の力を使い果たすまで戦い、土方と千鶴が駆けつけたときには、もう灰になっていた。事实[1]
结局·真相千鶴に似た人のこと点击展开
甲府からの退却のさなか、薫は千鶴の前に現れ、自分が千鶴の兄であることを明かします。そしてそのあと、風間に討たれる。
双子の兄と妹が、同じ一族の生まれでありながら、まるで違う場所で育った。手当てをする側に立ち続けた妹と、薬を差し出す側に回った兄。二人を並べて観なおすと、どこで育ち、誰のそばにいたかで、同じ血がこれほど違う道に進むのかと、私は少しこわくなりました。事实[3]
结局·真相記録の上の一番組組長点击展开
記録の沖田総司は、近藤の刑死のあと、江戸で病のために亡くなっています。
観なおして、私がいちばん長く止まったのがここです。記録の沖田さんは、病で亡くなった。作中の沖田さんは、局長の死を知って、刀を持って出ていく。病棟でも、つらい知らせを本人にどう伝えるか、家族の方と一緒に迷う夜があります。どちらが良いとは、私には言えません。ただ、作中は、知らせを受けとめた本人が自分で動くほうを描いた。レイさんは「それ、選択肢ですね。ゲームなら、ここで分かれる」と言いました。事实[14]
结局·真相会津の二人点击展开
斎藤は羅刹にならず、会津に残って、新選組の旗とともに敵へ向かっていきます。その先は描かれない。原田は、宿敵だった不知火と手を組んで綱道の配下と戦い、深い傷を負って、新選組のもとへは戻りません。
描かないことを選んだ二人だと、私は読みました。記録の行が続いている人でも、作中はそこで筆を置く。事实[1]
结局·真相仙台の城で点击展开
仙台で山南は、綱道の側についたように見えましたが、最後は土方たちと並んで戦い、藤堂とともに羅刹の力を使い果たして灰になります。
記録の上ではもっと早くにいなくなっていた二人の時間が、ここで同時に閉じる。表向きにはもういない二人が、表に出ないまま、同じ場所で見送られていきました。事实[1]
箱館の二本の線
記録の土方歳三は、近藤と別れたあと、宇都宮、会津と転戦し、仙台から榎本武揚の軍とともに箱館へ渡りました。事实[16]
『碧血録』の終盤も、同じ道をたどります。終盤の、千鶴と副長の距離の測り方を見てほしい。置いていく人と、追いかける人。どちらも、相手のためだと信じて動いています。解读
结局·真相鬼の側の決まりごと点击展开
風間は、鬼は一度交わした約束を守る、という掟に従う男として描かれます。仙台で千鶴の前に現れたときも、土方ともう一度戦うという約束を果たすつもりだと告げる。
レイさんは「敵の側にも、守る手順がある」と言いました。最後の場面で何が起きるかを知ってから読むと、この約束の重さが変わります。事实[1]
结局·真相箱館の記録点击展开
記録の土方は、箱館の一本木のあたりで戦死しました。流れ弾に当たったとも伝わっています。事实[16]
结局·真相箱館の作中点击展开
作中の最後は、風間との決着です。風間は土方の信念を認めて「薄桜鬼」という名を与え、土方は風間を倒したあと、千鶴のもとで倒れます。
最後の場所が箱館であることは、記録も作中も同じです。その場所に、作中は一騎打ちと、名前をくれる相手を足した。レイさんは「山南さんでは、記録の死を表向きのものに変えたのに、土方さんでは最後の場所を動かしていない。物語の真ん中にいる人の最期だけは、記録と同じ場所に置きたかった、と私は読みます」と言って、それから「……少し、しゃべりすぎました」と付け足しました。私も同じところで止まっていました。事实[1]
结局·真相題の意味点击展开
作品の題の「薄桜鬼」が誰を指す言葉なのかは、この最後の斬り合いのなかで、風間の口から明かされます。最終話の題にも、薄い桜の字が入っている。
一周目の私は、題を作品の看板としてしか読んでいなかった。観なおすと、第一話から、この言葉がいつ誰に渡されるのかを待つ時間になります。看板だと思っていたものが、最後に一人の人へ贈られる名前になる。舞台で言えば、幕が下りる直前に、役名がはじめて呼ばれるような瞬間です。事实[1]
结局·真相ゲームを遊んだ私から点击展开
夜勤の休憩に、ゲームで一つずつ選んで進んだ先と、アニメが描いた先は、最後のところで同じではありませんでした。私がゲームで見た副長は、あの場面のあとも続いていた。
どちらの先も、私は祈るような気持ちで観ています。片方を観たからといって、もう片方が消えるわけではないので。解读
線の上に立つ人
線の両側、埋まりましたね。
左が記録、右が作中。……線の上に、千鶴がいるように見えます。記録には名前の残らない人が、両側を行き来して、手当てをして回っている。解读
記録に残っていない人だから、どこにでも立てる。そういう役の置き方だと思います。解读
客席も、少し似ています。記録には残らないけれど、舞台の上の人がいなくなる日まで、ちゃんと見ている人たち。解读
そこは、チアキさんの線ですね。私のナプキンには引いてない。
最初に観なおす場所は、もう決めてあります。松本先生が屯所に来る回です。千鶴が、父の知り合いの顔を見つける。剣の物語の真ん中に、医者が人を診る時間が置いてある。そこから観はじめると、そのあと千鶴が誰かの手当てをするたびに、あの回の診察の場面が重なって見えてきます。喜好
紙ナプキンは、いまも手帳に挟んであります。左の列には、レイさんの小さな字で日付と地名。右の列には、私の字で、作中の場面の短いメモ。二本の線のあいだの余白には、何も書かずにおきました。そこは、観なおすたびに、自分の目で埋めていくところだと思っているので。喜好
観なおす速さのことも一つだけ。一周目の私は、夜勤の合間に一話ずつ、間をあけて観ていました。今回は、休みを寄せた二日で、第一期と『碧血録』を通して観ました。記録の日付が、一晩のうちに次々と過ぎていく。通して観ると、新選組の人たちに残された時間の短さが、体でわかります。どちらの速さがいいかは、人それぞれだと思います。ただ、通して観たあとは、紙ナプキンの左側の日付を、一つずつ指でなぞりたくなりました。喜好
バスの時間です。この紙ナプキン、もらっていっていいですか。
どうぞ。着いたら連絡ください。一行でいいので。
観なおすなら、松本良順が屯所で隊士を診る回から。千鶴が父の知り合いの顔を見つけるその回を起点にすると、千鶴が手当てをする場面のすべてが、記録と作中をつなぐ線の上に見えてきます。