古い映画を観返すとき、私はまず、人が自分の理由を口にする場面を探しておきます。『十二人の怒れる男』の二周目は、終盤にある陪審員が自分の理由を口にする場面から観て、それから冒頭へ戻りました。もう一つ、決めたことがあります。一周目の私の目は、有罪に手を挙げなかった八番に張りついたままでした。二周目は、八番を見ないことにしました。見るのは、残りの十一人と、部屋と、画面の高さです。評決の行方と、誰がいつ票を変えるかは、押すと開く欄に分けて入れました。
理由の場面から観返す
Ending and reveals最後の一人の理由(結末にふれます)Tap to open
十一人が無罪の側へ移ったあと、ただ一人、有罪を言い続けるのは三番です。言葉の尽きた三番は財布を開き、自分と息子が並んだ写真を破ります。息子との仲がこじれていることが、少年の有罪を願う気持ちの底にあった。三番は泣き崩れ、票を無罪に変えます。最初の予備の投票で一対十一だった評決は、こうして十二対ゼロの無罪にひっくり返ります。
二周目は、ここから冒頭へ戻ります。理由の場面を知ってから、三番が息子について口にする言葉を聞き直すと、ただの身の上話には聞こえなくなります。少年についての証言ではなく、三番自身についての証言に聞こえる。一周目の私は、その言葉を欄外に置いたままでした。Fact[2]
一周目の私は、評決がどちらへ落ち着くかを追うのに手を取られて、人がなぜその票を投じたのかを、欄外にしか書けずにいました。理由の欄は、話し合いの勢いに追い越されてしまう。二周目に順番を逆にすると、冒頭で聞き流した台詞の行き先が、表の上で先に見えます。誰かが身の上話をしたら、その場で印を一つ付けておく。私の二周目の表は、その印から始まっています。もう一つの準備は、少年の欄を一番上に、空けたまま作っておくことです。部屋の中で少年について何が言われても、その欄には何も書かない。書けるのは、冒頭の数秒に映ったことだけです。Preference
一度だけ映る顔
冒頭と終わりの数場面を除けば、この映画はほとんどすべてが、陪審員たちの部屋の中で進みます。Fact[2]
冒頭の法廷で、裁判官の説明が終わり、陪審員たちが席を立つとき、被告の少年の顔が長めに映ります。話し合いの部屋に、本人は入ってこない。名前も、声も、言い分も、部屋の中では他人の口を通してしか出てこない。裁判官は、有罪なら少年が死刑になることを告げてから、十二人を部屋へ送ります。Observation from the work
十二人が部屋に入ると、扉に鍵がかけられます。一周目、私はその音を聞き流しました。二周目は、ここで表の一行目に時刻の欄を作ります。鍵がかかった時点から、この部屋の手続きが始まる。扉は、十二人の側からは開けられない。閉じこめられた十二人が、閉じこめられていない一人の行き先を決める。この並びを、私は二周目に初めて表の形で見ました。Observation from the work
鍵がかかってからしばらく、男たちは本題に入らない。暑さの話、仕事の話、試合の話。扇風機に紙くずを投げる者もいる。一周目、私はこの雑談を、話し合いの前置きとして早送りしたくなりました。二周目は、雑談のあいだに誰が誰の隣に立ち、誰が一人で窓の外を見ているかを書き取ります。本題に入る前の立ち位置が、あとの票の並びの下書きになっていることがあるからです。Observation from the work
二周目、私は少年の欄に、あの数秒の顔だけを書きました。あとで誰が何を言っても動かない、ただ一つの直接の観察です。部屋の十二人が言い合うのは、その顔の外側のことばかりです。顔を一度見たきりの人々が、顔の持ち主の行き先を決める。私はこの数秒を観るたびに、椅子に座り直します。一周目は、映画が始まった合図くらいにしか受け取らずにいました。二周目は、その数秒を観たあとで一度再生を止め、少年の欄の横に、まだ何も書かない行を三つ空けておきました。部屋の中で少年について何かが言われるたびに、その行に書きたくなる。書かずに観続けるのが、二周目の私の決まりです。Interpretation
手の挙がる速さ
話し合いの最初に、一番の陪審員が仕切り役を引き受け、手を挙げる形で票を取ります。一周目の私は、挙がった手の数だけを数えていました。Observation from the work
仕切り役の一番は、議論の中身には深く入らず、順番と静けさを守ろうとする人です。私はこの人に、一周目から好意を持っていました。話し合いがうまく回らない場面では、困った顔で周りを見回す。手続きを守る係が、手続きを守りきれずに困る顔です。二周目は、この人が周りを見回すたびに、欄外に小さな印を付けました。印を並べると、話し合いが荒れた場所の目次になります。Observation from the work
二周目は、手が挙がるまでの時間を見ます。すぐに挙がる手があり、周りを見てから挙がる手がある。紙に書く票ではなく、互いの手が見える票です。周りを見てから挙げた手は、少年についての判断と、部屋についての判断を、一度に済ませています。私の表では、その手の持ち主の欄に、小さな点を一つ打ちます。点の付いた人が、あとでどう動くか。二周目の楽しみの半分は、そこにあります。Interpretation
Up to midway二度目の票(中盤の展開)Tap to open
話が進まないと見た八番は、自分を外した十一人で、名前を書かない紙の票を取ろうと申し出ます。十一人がそろって有罪なら、そのときは自分も有罪に回る、と。開いた紙の中に、無罪が一票ありました。名乗り出たのは、九番の老人です。
手を挙げる票では有罪の側にいた一人が、名前を書かない紙では反対の側に入った。同じ部屋、同じ顔ぶれで、票の取り方だけが変わっています。私は二周目、ここで一度、再生を止めました。手続きは中身を運ぶ器だと、私はずっと考えてきました。この場面では、器を替えただけで、中身の数字が動きます。器も中身の一部です。表の一番上の行に、そう書き足しました。Observation from the work
二周目、私の表の点は、最初の挙手の場面で三つ付きました。その三つが、話し合いの中でどこへ動くか。点を打った時点では、まだ何も分からない。分からないまま観続けるのが、二周目の作法だと私は決めています。点の数は、観る人によって違っていてかまわない、と私は考えています。Preference
机の上に置かれた物
話し合いの序盤に、八番が机の上へ、ある物を置く場面があります。二周目は、置いた八番の手ではなく、それを見た十一人の顔を順に見ていきました。驚く顔、腹を立てる顔、目をそらす顔。私の表で、十一人がはっきり別々の欄に分かれはじめるのは、ここからです。Observation from the work
Up to midway八番が持ち込んだ物(中盤の展開)Tap to open
少年が持っていたとされる飛び出しナイフは、法廷では珍しい品として扱われていました。八番は、同じ形のナイフを上着から取り出して、机に突き立てます。自分で調べに出て、同じ形のナイフを買ってきた、と言って。凶器は特別な一本ではなかった、と示すためです。
私はこの場面に、二周目も異議を書きます。陪審員が自分で法廷の外を調べ、品を買い、部屋に持ち込む。法廷に出ていない証拠です。手続きの順番から言えば、この一手は外れています。そして部屋の話し合いは、この外れた一手から動きはじめる。Observation from the work
二周目は、八番が机の上に物を置いた場面で、部屋の隅で黙っていた一人の顔を覚えておくと面白い。Observation from the work
Up to midway五番が知っていたこと(中盤の展開)Tap to open
父親の傷は、上から下へ向かって刺された形でした。スラム育ちで、飛び出しナイフの扱いを身近に見てきた五番が、ここで口を開きます。この刃物は、ふつう下から突き上げるように使うもので、慣れた者が、背の高い相手を上から刺すような持ち方はしない。五番の知っていたことが、傷の向きの見え方を変えます。
八番の持ち込んだナイフは、法廷の外から来た物でした。五番の知識は、法廷の外の暮らしから来たものです。どちらも、法廷の記録には載っていない。私の手続きの言葉では、どちらも外から入ったものとして同じ欄に入ります。それでも、私は二つの重さを同じには書けずにいます。物は買えば手に入ります。暮らしの中で見てきたことは、その人にしか持ち込めない。
貧しい界隈の出身者をひとまとめに見下す言葉を、この部屋で浴びていたのは、ほかならぬ五番の育った場所でした。二周目、私は五番の欄に、黙っていた時間の長さも書き添えました。Observation from the work
歩いて計る場面
この映画の話し合いは、法廷に出た証言を、部屋の中でもう一度確かめ直す形で進みます。二周目に私が数えたのは、その確かめ直しのうち、言葉だけでなく、体を使って行われたものの数です。数えてみると、見込みより少ない。少ないぶん、その場面の重さが際立ちます。Interpretation
Up to midway証言を計り直す場面(中盤の展開)Tap to open
下の階に住む足の悪い老人は、物音と叫び声を聞いて寝床から玄関まで行き、階段を駆け下りる少年を見た、と証言していました。八番は老人の部屋の見取り図を広げ、椅子を並べて廊下の長さを作り、足を引きずりながら、その距離を自分で歩いてみせます。別の者が時計を見て、かかった時間を読み上げる。証言のとおりの短い時間では、玄関まで届かない。
歩き終えた直後、三番が八番につかみかかり、殺してやる、と叫びます。部屋が静まり返ります。少年が父親に向けたとされる言葉と同じ言葉を、いま目の前の男が、本気ではない形で口にした。
二周目、私はこの二つが続けて置かれていることに気づきました。一つ目は、時間を計る実験。二つ目は、言葉の重さを計る実験です。二つ目は、誰も計画していない。計画されていない実験のほうが、部屋の空気を大きく変えています。Observation from the work
法廷に出た二人の目撃者は、どちらも部屋には来ない。部屋にあるのは、二人の証言を十二人がそれぞれに覚えている形だけです。二周目は、二つの証言を別々の欄に分けず、一つの時刻の欄に並べて書いてみました。すると、二人の証言のあいだに、同じものが一つ通り過ぎていることが見えてきます。Observation from the work
Up to midway通り過ぎる列車(中盤の展開)Tap to open
向かいの建物に住む女性は、寝床から窓の外を見ていて、通り過ぎる高架の電車の窓越しに、少年が父親を刺すところを見たと証言しました。下の階の老人は、少年が父親を殺してやると言うのを聞いたと証言しました。八番は、電車が通り過ぎるあいだの音の大きさを持ち出します。その音の中で、下の階の老人に、上の階の叫び声が聞き分けられたのか。
二人の証言は、別々に聞けば、どちらも少年に不利です。けれど同じ時刻の欄に並べると、同じ一両の電車が、片方には窓を、片方には騒音を差し出している。一つの事実が、二人の証言を同時に支え、同時に揺らしています。私は二周目、表の時刻の欄に、電車、と一語だけ書き足しました。Observation from the work
二周目を観るのは、出張先のホテルの部屋です。小さなテレビに字幕を付け、机の上に表の紙を広げて、場面が変わるたびに再生を止めます。一周目は止めずに観ました。止めずに観た一周目の速さと、止めながら観た二周目の遅さでは、同じ部屋の空気がまるで違います。二周目は、話し合いの熱にのまれずに済む代わりに、十二人の汗が乾くのを待っているような気持ちになります。どちらの観方にも、欄の埋まり方に偏りが出る。私は、偏りが違う二枚の表を、並べて置いています。
長い演説のあいだ
後半、一人の陪審員が長く話し続ける場面があります。一周目の私は、話の中身の乱暴さに気を取られて、話している人の顔ばかり見ていました。二周目は、聞いている側の椅子を見ます。話す人の声が大きくなるほど、聞く側の体は小さく動きます。椅子を引く音、立ち上がる足、向きを変える肩。一周目は台詞の陰に隠れていた音が、二周目にはよく聞こえます。私は字幕を付けて観るので、台詞の欄は字幕が埋めてくれる。その分、目は椅子のほうへ向けられます。Observation from the work
Up to midway十番の演説(中盤の展開)Tap to open
十番が、貧しい界隈に育つ人々をひとまとめにして見下す、長い演説を始めます。演説のあいだ、言い返す者はいない。一人、また一人と席を立ち、十番に背を向けていく。
票でも発言でもない、言葉のない手続きです。私の表には、これを書き取る欄がなかった。二周目、私は欄外に、席を立った順番だけを書きました。その順番を、それまでの票の動きと並べてみると、表がもう一枚できます。誰がどの側に票を入れているかと、誰が誰の言葉に耐えられないかは、別の欄です。二つの欄は、重なるところもあり、重ならないところもある。Observation from the work
理由の欄が空いた票
この部屋には、話し合いそのものに関心の薄い陪審員も座っています。七番は、夜に観に行く予定の野球の試合のことを、何度も口にします。冗談が多く、早く終わらせたい。一周目の私は、そういう人を表の端に置いて、ほとんど見ずにいました。二周目に気づいたのは、その人が票を動かす場面で、いちばん厳しい声を上げるのが誰か、ということです。Observation from the work
Up to midway七番が票を変える場面(中盤の展開)Tap to open
夜の野球の試合を気にしていた七番は、話し合いが長引くのに嫌気がさして、票を無罪に変えると言いだします。十一番がそれを許さない。人の命がかかっているのに、そんな変え方があるのか。有罪なのか、無罪なのか、理由を言え、と詰め寄ります。七番は、少年が有罪だとは思えない、とだけ答えます。
二周目、私がいちばん長く観ていたのは十一番です。結論の欄に入る一語は、十一番の側と同じです。それでも十一番は、理由の欄が空いた票を受け取らない。私が仕事の上で守ってきた線を、この部屋でいちばん厳しく守っているのは、八番ではなく十一番でした。外国の訛りを残した時計職人が、自分の暮らす国の手続きを、誰よりも丁寧に扱っている。一周目の私は、そこを見落としていました。Observation from the work
二周目は、票が動くたびに再生を止め、その瞬間に部屋の誰が立っていて、誰が座っているかだけを書き取りました。台詞は書かずに、体の位置だけを残す。止めた画面を一枚ずつ並べると、票の数とは別に、部屋の中の人の配置がどう移っていったかが、紙の上に残ります。票の表と配置の表を重ねたとき、どこが重なり、どこがずれるか。それを確かめるのが、二周目の夜の私の楽しみになりました。
雨と画面の高さ
少ない予算と、短い日数で撮られた白黒の映画です。ほとんど一つの部屋だけで、これだけの時間を持たせている。Fact[2]
話し合いの途中で、窓の外が暗くなり、強い雨が降りはじめます。部屋に明かりがつく。一周目の私は、雨を場面の区切りとしてしか見ずにいました。二周目は、雨が降りはじめた時点の票の数を、欄外に書いておきました。雨の前に出された票と、雨のあとに出された票。同じ手続きでも、部屋の明るさが違います。誰が窓辺に立って外を見ているかも、雨のあとは書き取っておくと面白い。窓は、この部屋で外が見えるただ一つの場所です。雨の音は、話し合いの声を少しだけ遠くします。その分、部屋の中で黙っている人の沈黙が、一周目よりはっきり聞こえる。私は二周目、雨のあとの場面で、話していない人の顔を数え直しました。Observation from the work
もう一つ、表から目を上げて、画面の高さだけを見る時間を作りました。話し合いの始めのうち、画面は少し上から、部屋の奥行きを広く見せています。終わりに近づくにつれて、顔が大きくなり、下から見上げる角度が増え、背景が狭まっていく。部屋の広さは変わっていないのに、私には部屋が狭くなっていくように見えました。Observation from the work
表の上では、話し合いが進むほど部屋は開いていくはずです。疑いが一つ解けるたびに欄が埋まり、話は前へ進む。それなのに画面のほうは、逆に閉じていく。私はこの食い違いを、二周目でいちばん長く欄外に書き込みました。手続きが進むほど、一人ひとりの逃げ場がなくなっていく。結論に近づくことは、楽になることと同じではない。作り手の狙いを、私は確かめていない。私の目にはそう見える、とだけ書いておきます。Interpretation
九番が見ていたもの
一周目、私は九番の欄をほとんど空けていました。部屋の中でいちばん年の行った、静かな人です。二周目は、九番が話す場面の前に、九番が何を見ているかを先に確かめるようにしました。九番は、たいてい相手の手もとか顔を見ています。九番は、話し合いの中で声を張り上げることがめったにない。大きな声の人が多い部屋で、小さな声の人の言葉が、なぜ通っていくのか。二周目の私は、九番が話しはじめる直前の、部屋の静まり方を見ていました。Observation from the work
Ending and reveals最後から二番目の転向(結末にふれます)Tap to open
終盤、四番は、向かいの窓から犯行を見たという女性の証言はまだ崩れていない、と筋道立てて話します。一度は無罪に移っていた十二番が、それを聞いて有罪の側へ戻る。四番は話しながら眼鏡を外し、鼻の付け根を指でこすります。それを見ていた九番が、法廷の女性も同じように鼻をこすっていたこと、そこに眼鏡の跡があったことを思い出す。ふだん眼鏡をかけている人が、寝床で眠ろうとしていたときに眼鏡をかけていたとは考えにくい。自分も眼鏡をかける四番は、この指摘を受け入れ、無罪に移ります。
二周目にここで私が見るのは、九番の目です。九番は法廷で、証言の中身だけでなく、証人の手と顔を見ていた。足の悪い老人の証人について、誰かに話を聞いてほしかった人ではないか、と読み取ったのも九番でした。法廷の外を歩いて確かめたのは八番ですが、法廷の内側を、証言の外の欄まで含めて見ていたのは九番です。表を作る者として、私が二周目に書き写したいと考えたのは、九番の見方のほうでした。Observation from the work
部屋を出たあとの階段
この映画の最後の数場面は、部屋の外にあります。鍵のかかった扉の内側で始まった話が、どこで終わるのか。一周目の私は、評決が出た時点で話は終わったと受け取り、そのあとの場面を、幕が下りるまでの余白として観ていました。二周目、私はそこまで来て、手もとの表を閉じました。閉じたあとで、書き足したことがあります。余白だと思っていた場面に、表のいちばん大事な欄が残っていたからです。二周目の私は、評決の場面より、その先の数分を観るために再生を続けていたのだと、観終えてから気づきました。
Ending and reveals部屋を出たあと(結末にふれます)Tap to open
評決が決まり、男たちは部屋を出ていきます。八番は、残っていた三番に上着を着せかけてやります。裁判所の外の階段で、九番が八番を呼び止め、二人は互いの姓を名乗り合って、別々の方向へ去っていく。ほかの者たちも、それぞれに散っていきます。
私の表では、十二人は最後まで番号でした。名前の欄が埋まったのは、二つだけです。しかもそれは、評決という手続きがすべて終わり、部屋を出たあとでした。手続きの中では、名前は要らなかった。要らなかったものを、手続きの外で、二人だけが交わしている。私は表を閉じたあとで、その二つの欄に姓を書き入れました。仕事の表なら、締めたあとの書き込みは認めない決まりです。物語の表なので、認めることにしました。
二周目、私が八番の姿を正面から見たのは、上着を着せかける手もとと、この階段の二か所だけです。見ないと決めていても、最後には見てしまう。そのことも、表の隅に正直に書いてあります。Observation from the work
私の二周目の表は、次の形をしています。縦に一番から十二番。横の欄は四つです。一つ目は、最初の挙手で周りを見たかどうか。二つ目は、票を変えた場面と、そのとき口にした理由。理由を口にしなかった票は、空欄のまま残します。三つ目は、長い演説のあいだの、それぞれの椅子の動き。四つ目は、雨のあとに窓辺に立ったかどうか。二周目でいちばん役に立ったのは、一つ目の欄でした。四つ目の欄は、まだ半分ほど空いたままです。Preference
Ending and reveals二周目の一行(結末にふれます)Tap to open
正しい手続きから誤った結論が出る場面に、私はいつも引っかかります。この映画では、その逆が起きています。外れた一手が、手続きを最後まで回すきっかけになる。私はこれを、作品の答えとしてではなく、表に一行足しておく食い違いとして書いています。答えは、まだ書いていません。
二周目を観終えた夜、私は表の横に一行を書きました。この映画で評決に至るまでには、法廷の外から持ち込まれた物があり、証人の顔からの推測があります。どれも、私の仕事の手続きなら差し戻す種類のものです。それでも、最初の一対十一のまま部屋を出ていたら、と考えると、異議とも書けない。私の書いた一行は、保留でした。一周目のときにも、同じ一語を書いています。同じ一語でも、二周目のほうが、その横に並んだ理由の数が多い。Interpretation
二周目は、最初の挙手の場面で、周りを見てから手を挙げた者を数えておく。その数が、あとの票の動きを読むための控えになる。
