沈黙と余白
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地図に無い町の手前まで
『光が死んだ夏』の町は、地図のどこにも無い。人混みが無理なミコと、返事に三分かかるルカは、三重の山あいへ向かう一両の列車に乗った。終点の駅で、二人は話しかけられて固まり、笑いそうになり、行き止まりの線路を見る。
恋をしたときに薦めたい作品を3人で選ぶ
気持ちに名前を急いでつけない話か、悩みを抱えた高校生たちのラブコメか、それとも思いきり浮かれる話か。スイの部屋で、スイとルカと猫のテンが、恋をしたばかりの人に渡す一本を選んだ。急かさないのか、浮かれさせるのか。テンは最後まで、スイの相手の話をやめなかった。
『ロボット・ドリームズ』には台詞も語りもない
犬とロボットの友情を描くこの映画には、セリフもナレーションもありません。言葉のかわりに、何が二人の時間を運ぶのか。イロハが、ダンス教室のミサ先生に、耳で観る映画の話をしました。
『凪のあすから』二周目は黙る人を見る
一周目の私は、誰が誰を好きなのかの矢印を必死に追っていた。二周目は、矢印を口に出さない人のほうが気になった。言わないことで関係を守ろうとした人たちの、静かな顔の話です。
振り返る歌と立ち止まる歌
1974年に出た歌を28歳のナギが鍋をかき混ぜながら歌い、2013年のアニメの歌を52歳のタカシが帰りの車で一度だけ聴く。昭和の歌と2010年代の歌を、歌詞を引かずに読み比べたら、年齢と歌の向きがあべこべだった。
黙っている人の歌を読む夜
『3月のライオン』のorion、『Re:ゼロから始める異世界生活』のSTYX HELIX、『無職転生』の旅人の唄。言わなかった気持ちを読むスイと、言葉を選びすぎて止まるルカが、三つの主題歌の歌詞を自分の言葉に置き換えながら、物語とどう響き合うかを静かに読み合った。
『NieR:Automata』をもう一度最初から
一度クリアしてからが本番、と言われるゲームを、全部のエンディングを見たあとでまた最初から遊ぶ。クロが拾い直したのは、2Bの短い返事、ハッキングの手ざわり、エンディングの題名に隠れた一文字。FPSの相棒レイと、チャットで並べていく。
『頭文字D』二周目は配達の時間を観る
一周目は峠の勝負に目を奪われていました。二周目にハヤテが観たのは、毎朝の配達の時間と、無口な父の背中と、エンジンの音。速さの答えは、勝負の手前にずっと置いてありました。
『葬送のフリーレン』二周目は手元を見る
一周目は旅の景色を追っていた。二周目、ゴウの目は魔法使いの手元と、言わずにおかれたものばかりを追った。約束と、それを守る型の話として。演出と言葉に詳しいソウマと、第1期を頭から観直した。
借りた傘が三本ある人の雨宿り
夕方の雨。家には借りたままの傘が三本あるのに、手ぶらのスイ。シャッターの下りた本屋の軒先に、白い猫のテンと、ずぶ濡れのシオルが駆けこんでくる。雨の日の午前だけ会う二人の映画の話をしているうちに、スイは一通の返事のことを考えはじめる。
終電まで十八分、解釈は一つにならない
閉店の音楽に追い出されたスイとレイ。駅までの坂道で、描かれていないところを埋めたいレイと、空けておきたいスイが、ゆっくり言い合う。仕事の呼び出しには四十秒で片をつけたレイが、次の通知で一歩も動けなくなった。
『日常』何も起きない一日の間の取り方
上京したばかりのころ、言葉の違いで笑われて悔しかった夜に救われたのが、何も起きない一日を全力で大げさに描くアニメでした。いまも仕事の前に一話観ると、会話のテンポがよくなる気がします。カオルの6選、二本目です。