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Second viewing

『龍が如く 極』二周目は錦山の顔ばかり見ていた

一周目は桐生の拳だけ追っていた。二周目、同じ神室町を歩いたら、目が勝手に別の男を探していた。親友、狂犬、消えた女、100億の少女。約束を契約だと思っている俺が、十年分の約束を数え直した記録だ。

This article spoils the ending

Covers『龍が如く 極』(『龍が如く』第1作のリメイク)の結末まで

Written for people who have finished it and want more from a second viewing. Midway developments and the details of the ending are folded away until you tap them.

For people who
『龍が如く 極』か『龍が如く』第1作をクリアした人へ。二周目を始めるか迷っている人にも。
Spoiler range
Touches on the ending 『龍が如く 極』(『龍が如く』第1作のリメイク)の結末まで
Who's talking
Jin × Luka
Types of claims: Fact Observation from the work Grounded inference Interpretation Preference
Contents 12 sections, ~15 min
  1. 二周目を始める前に
  2. 第一章:1995年の夜に背負ったもの
  3. 幕間:「親」という字が二つある
  4. 幕間:恨む側の理由は本物だ
  5. 第二章:面影のない親友
  6. 幕間:父親みたいな男の背中
  7. 第三章:狂犬はどこにでもいる
  8. 第四章:100億の少女の質問
  9. 第五章:消えた女
  10. 第六章:約束は契約だった
  11. 第七章:二周目で聞こえた街の音
  12. これから二周目をやる奴へ

ジンだ。今回は『龍が如く 極』の二周目の話をする。一周目は、拳で神室町を渡っていく桐生一馬の背中しか見てなかった。二周目、同じ道を歩いたら、目が勝手に別の男を追ってた。ここから先は、クリアした奴向けだ。結末は開かないと読めない場所に畳んである。まだの奴は、先にコントローラーを握れ。……別に、命令じゃねえけど。

二周目を始める前に

セガの公式サイトによれば、『龍が如く』は2005年に生まれたシリーズで、『龍が如く 極』はその第1作のフルリメイク作品だ。年齢区分はCERO D(17歳以上対象)。Fact[1]

つまり『極』は、それ自体がもう「二周目」なんだよ。同じ物語を、作り手がもう一回作り直した。俺は第1作を後から遊んで、『極』を先に知った口だから、その順番はちょっとずれてる。でも、作り直された物語をさらに二周目で遊ぶと、作り手が一回目に言い足りなかったことを、どこに足したのかが見えてくる。今回はそこも話す。Grounded inference

Luka

ジン様、本日はお時間をいただきありがとうございます。私はこの作品を、人がゲームを遊ぶ横で拝見しただけなのですが、それでもよろしければ、少しだけお話をうかがわせてください。

Jin

……様はいらねえって。調子狂うんだよ。まあいい。見てただけでも分かる話はある。お前、冤罪の話になると顔変わるだろ。この話、そこが入り口だから。

第一章:1995年の夜に背負ったもの

公式サイトの物語紹介の書き出しは、1995年の神室町だ。そこに、親友と惚れた女を守るために「親殺し」の汚名をかぶった男がいた。その男が桐生一馬。かつて「堂島の龍」の名で恐れられた、伝説の極道だ。Fact[2]

人物紹介によれば、桐生がかばったのは二人。養護施設「ヒマワリ」で一緒に大きくなった親友の錦山彰と、惚れた女の澤村由美だ。そのために、極道の世界で決して許されない「親殺し」の罪をかぶり、10年を塀の中で過ごした。Fact[3]

一周目の俺は、この始まりを「かっこいい男の決断」として見た。仲間をかばって罪をかぶる。言い訳しない。黙って十年。腕一本でのし上がる話が好きな俺にとっちゃ、最初の数十分でもう主人公に惚れてた。Preference

二周目は、その場面で桐生の顔を見てなかった。見てたのは、桐生の横にいる男の顔だ。罪をかぶってもらった側。かばわれた側。かばわれた奴は、そのあと十年、何を背負って生きるのか。一周目の俺は、そっちの十年のことを、一秒も考えてなかった。Observation from the work

Luka

罪をかぶる側と、かぶってもらう側、ですか。……私は以前いた場所で、身に覚えのない噂と罠で居場所をなくしました。ですから最初は、桐生様の側にばかり自分を重ねていたのです。自分で選んで背負う罪と、押しつけられる罪は違いますけれど、弁明しないまま閉じこめられる時間の長さは、少し分かる気がして。Interpretation

Jin

……そうか。お前は、そっちから見るんだな。俺は逆だった。桐生は自分で選んだ。だから、あいつの十年は、ある意味じゃ契約なんだよ。親友と女を守るって約束を、刑期で払った。問題は、払ってもらった側だ。Interpretation

幕間:「親」という字が二つある

Luka

ひとつ、伺ってもよろしいでしょうか。「親殺し」という言葉ですが、桐生様は、ご自分のお父上を……というわけではないのですよね。そのあたりの仕組みに、私は不案内でして。

Jin

ああ、そこからか。この世界じゃ、組の上の人間を「親」って呼ぶんだよ。盃を受けた相手が親で、受けた側が子。血はつながってねえ。桐生が殺したことにされたのは、自分の組の組長だ。だから「親殺し」。Grounded inference

ルカに説明しながら、俺は自分で気づいた。この話には「親」が二人いる。一人は、桐生が殺したことにされた、組の親。もう一人は、公式サイトが「渡世の親」と書いている風間新太郎。桐生と錦山を育てて、この世界に導いた男だ。Interpretation[4]

一周目の俺は、「親殺し」って言葉を、ただの重い罪名として聞いてた。二周目は、同じ字が二つの違う重さで使われてるのが引っかかった。桐生は親友と女を守るために、殺してもいない親を殺した罪をかぶった。その罪は、桐生を育てた親の顔にも泥を塗る。一つの「親」の罪を背負うことで、もう一つの「親」にまで重さがかかる。この話の最初の夜には、そういうねじれが最初から入ってたんだ。Interpretation

Luka

血のつながらない親子が、何組も重なっているのですね。……家族を持たない者どうしが、言葉で家族を作っている。その言葉が、罪の名前にもなってしまう。Interpretation

Jin

そういうことだ。言葉で結んだ縁は、言葉で切れねえ。だから重いんだよ。……契約と同じだな。Interpretation

幕間:恨む側の理由は本物だ

公式サイトの物語紹介は、こう続く。2005年、10年のお勤めを終えて桐生は神室町に帰ってくる。出迎えたのは、昔いた組織で桐生を恨む連中と、あちこちに仕掛けられた危ない罠だった。Fact[10]

一周目の俺は、桐生に絡んでくる連中を、片っぱしから殴り倒していった。向こうから来るんだから、知ったこっちゃねえ。経験値みたいなもんだと思ってた。Preference

二周目で、絡んでくる連中の言い分を、一回ちゃんと聞いてみた。そしたら、こいつらの恨みには理由があるんだ。こいつらにとって、桐生は本当に「親を殺した男」なんだよ。極道の世界でご法度の罪を犯した裏切り者。真相を知らねえ奴らが、知らねえまま本気で怒ってる。怒る理由そのものは、筋が通ってる。間違ってるのは、怒りの向け先だけだ。Interpretation

Luka

……真相を知らない方々が、本気で怒っている。そして、桐生様はそれを訂正しない。私には、ここがいちばんつらい場面でした。身に覚えのない罪で責められたとき、私は何も言えませんでした。言わせてもらえなかったのです。桐生様は、言えるのに言わない。Interpretation

Jin

言えば、かばった相手が責められるからな。言わないのが契約の中身なんだ。……お前は言いたかったのに言えなかった。桐生は言えたのに言わなかった。同じ黙ってる顔でも、中身が逆だ。二周目は、殴りかかってくる奴の顔を見るたびに、それを考えてた。Interpretation

Luka

逆、ですね。……ですが、ジン様。黙っている側の夜の長さは、もしかしたら同じなのかもしれません。Interpretation

Jin

……だから様はいらねえって。でも、それは、そうかもな。

第二章:面影のない親友

錦山について公式サイトが書いていることを並べる。桐生と同じ養護施設で育った。渡世の親の風間新太郎に、桐生と一緒に育てられた。そして桐生と並んで堂島組の盃を受けた。それから10年。刑務所を出た桐生の前に現れた錦山は、昔の面影をなくし、東城会直系錦山組の組長として桐生の行く手をふさぐ。Fact[4]

一周目、十年ぶりに錦山と顔を合わせた場面で、俺は普通にむかついた。かばってもらった奴が、なんでそんな顔してんだ、って。約束を軽く扱う奴は、俺が一番許せないタイプだ。だから一周目は、錦山を「恩を忘れた男」として見てた。Preference

二周目の俺は、再会の場面で、錦山の目の動きばっかり見てた。こいつは桐生の顔を、まっすぐ見てるか。見てねえ。見られねえんだ。一周目にむかついた態度が、二周目には、目を合わせられない奴の強がりに見えた。Observation from the work

Up to midway中盤の展開Tap to open

二周目の俺は、桐生がいない十年のあいだの錦山を、ずっと想像しながら遊んでた。かばってもらった親友が、組の中でどう扱われ、何を失い、どう変わっていったか。出世のために飲みこんだもの、誰にも言えなくなっていった本音。一周目は、錦山が画面にいない時間のことなんか考えもしなかった。二周目は、その空白のほうが気になって仕方なかった。桐生が刑務所で過ごした十年と、錦山が外で過ごした十年は、同じ長さなのに、まるで違う重さで積もってる。桐生は罪を背負った。錦山は、罪を背負ってもらったという借りを背負った。返しようのない借りってのは、人をおかしくする。作り手が一度作った物語をもう一度作り直したとき、この空白をどう扱ったのか。二周目は、錦山が出てくる場面のたびに、そこを確かめるつもりで見てほしい。Grounded inference

Luka

返しようのない借り、ですか。……それは、恨みよりも重いかもしれませんね。恨みは相手に向けられますが、借りは自分に向いてしまいますから。Interpretation

Jin

……お前、たまにそういうこと言うよな。そうだよ。借りた側は、相手を恨めねえ。だから自分を壊すか、相手を超えるしかなくなる。錦山は、超えるほうを選ぼうとした。Interpretation

幕間:父親みたいな男の背中

風間新太郎の紹介も見ておく。極道でいながら、「ヒマワリ」という養護施設を支えてきた男だ。そこで育った桐生、錦山、由美にとっては父親代わりで、桐生と錦山を極道の道へ引き入れたのもこの人だと公式サイトにある。筋を通す穏やかな人柄で知られ、いろんな方面から信頼されているらしい。Fact[11]

一周目の俺にとって、風間は「主人公の親父分」っていう、話の背景みたいな人だった。二周目で気になったのは、桐生と錦山が、同じ背中を追いかけて同じ世界に入ったってことだ。同じ親父分に育てられて、同じ盃を受けて、同じ夜を過ごした二人が、十年で真逆の場所に立つ。背中を追うってのは、同じ道を歩くってことじゃねえんだな。Interpretation

俺にも、ずっと背中を追いかけてる人がいる。誰かは言わねえ。でも、追いかけてる背中が同じでも、追いかけ方は人それぞれだ。桐生は背中の通りに生きようとした。錦山は、背中に追いつこうとして、追い越そうとした。どっちが正しいかは、俺には決められねえ。二周目は、その二人の追いかけ方の違いを、ずっと見比べてた。Interpretation

Luka

同じ方に育てられても、受け取り方は違う。……ご兄弟のように育った方どうしなら、なおさら、比べられることも多かったでしょうね。Grounded inference

Jin

ああ。比べられるってのは、腕一本でのし上がりたい奴には一番きつい。隣にいつも、自分より先に行く奴がいるんだからな。Interpretation

第三章:狂犬はどこにでもいる

真島吾朗は嶋野組の若頭で、真島組の組長。公式サイトによると、抗争となれば決まって特攻を任される、筋金入りの武闘派だ。この男が桐生一馬に異常なほどこだわり、桐生の行く先々にしつこく現れては狙ってくる。Fact[5]

一周目の真島は、正直めんどくさかった。歩いてるとどこからか現れて、勝負を挑んでくる。こっちは急いでるのに。しかも強い。何回も負けた。俺はかっこつけたいときほど派手に転ぶ性分なんだが、この男の前ではとくに転んだ。Preference

戦い方は4つのスタイルの切り替えだと公式サイトにある。基本になるのが「チンピラ」、速さで押すのが「ラッシュ」、力でねじ伏せるのが「壊し屋」。そして究極の型として、いちばん上に「堂島の龍」がある。Fact[6]

Up to midway中盤の展開Tap to open

『極』では、桐生が真島と何度もやり合うことで、十年のあいだに鈍った「堂島の龍」の戦い方を取り戻していく作りになってる。街のどこにいても真島が現れて、喧嘩を売ってくる。勝つたびに、桐生の昔の技が一つずつ戻ってくる。一周目の俺は、これを単なるおまけの遊びだと思ってた。二周目、これが物語そのものだって気づいた。十年入ってた男は、腕が鈍ってる。鈍った龍を、誰が研ぎ直すのか。組の連中は桐生を恨んでる。親友は面影をなくしてる。そんな中で、しつこく、うっとうしく、本気で殴りかかってくるのは、真島だけなんだよ。めんどくせえ執着の形をした、たぶんこの街で一番まっすぐな歓迎だ。二周目の俺は、真島が現れるたびに、少しうれしくなってた。……別に、好きってわけじゃねえ。Interpretation

Luka

しつこく挑んでくる方が、実はいちばん待っていた方だった、と。……強い方が、相手を強いままでいさせるために力を使う。そういう使い方もあるのですね。Interpretation

Jin

お前は力を使わない話が好きなんだろ。俺は使う話が好きだ。でも真島の使い方は、殴ってるのに壊してねえ。そこは、お前の好みにも入るんじゃねえか。Grounded inference

第四章:100億の少女の質問

遥は、東城会の「消えた100億」の事件を追いかける桐生の前に、いきなり姿を見せる正体の分からない少女だ。公式サイトの紹介では、桐生と一緒に動くうちに、自分が何者なのかを少しずつ明かしていく。遥は、事件のカギを握る「美月」という女性が自分の母親だと言い、桐生は遥と二人でその母親を探すことになる。Fact[7]

一周目の俺は、遥を「守るべき子ども」として見てた。腕っぷしの強い男が、小さい子を守って街を渡る。わかりやすい構図だ。俺はそういうのに弱い。Preference

二周目は、遥が桐生に投げる質問のほうを聞いてた。この子はよく聞く。おじさんは誰なの、どうしてそんなに強いの、どうして助けてくれるの。一周目は子どもらしい場面だと思って流してた。二周目は、その質問の一つひとつが、桐生が十年考えないようにしてきたことを、正面から突いてるのが分かった。腕っぷしじゃ答えられねえ質問ばっかりなんだよ。Interpretation

Up to midway中盤の展開Tap to open

物語が進むと、遥はだんだん桐生の後ろじゃなくて、横を歩くようになる。最初は手を引かれていた子が、自分から行き先を言うようになる。一周目の俺はこの変化に気づいてなかった。二周目は、遥の歩く位置を見てた。守られる側が、だんだん一緒に戦う側になっていく。腕一本の主人公が仲間を連れていく話は、俺の研究テーマそのものだ。拳で成り上がる奴は、なんで一人じゃいられないのか。桐生の場合、答えはこの子だと思う。十年、一人で背負ってきた男が、一人で背負えないもんを、この子と半分ずつ持ち始める。Interpretation

第五章:消えた女

澤村由美も、桐生や錦山と同じ養護施設で育った。二人には本当の妹みたいに大事にされていたと公式サイトにある。やがて由美は、神室町の「セレナ」というクラブで働き出す。ホステスとしてだ。そこへ「堂島宗兵殺害事件」が起き、3人の行く末は大きく揺さぶられる。それから10年。刑務所を出た桐生が聞かされたのは、由美の行方が分からないという知らせだった。Fact[8]

一周目は、由美を探す旅だと思ってた。いなくなった女を、男が探す。それだけで十分な動機だ。二周目は、由美がいなくなったこの十年を、誰が知ってたのかを考えながら歩いた。桐生だけが知らなかったことが、街のあちこちに転がってる。Observation from the work

Luka

自分だけが知らないまま、時間が進んでいた。……それは、戻ってきた方にとって、いちばん心細いことかもしれません。皆さまの十年に、自分の場所がないのですから。Interpretation

Jin

そうだな。一周目は、街に戻ってきた龍のかっこよさしか見てなかった。二周目は、浦島太郎みてえな心細さのほうが、ずっと響いた。Interpretation

第六章:約束は契約だった

ここから先は、結末の話になる。俺がこの作品でいちばん泣いた……いや、泣いてはいない。いちばん胸のあたりがやられた場面の話だ。

Ending and reveals結末Tap to open

物語の最後、消えた100億をめぐる争いは、神室町にそびえる高い塔の上で決着する。そこで桐生を待っていたのは、錦山だった。二人は殴り合う。一周目の俺は、ラスボスとの決戦として、ただ熱くなってた。二周目は、殴り合いの前に交わす言葉を、一言ずつ聞いた。かばった男と、かばわれた男。十年前の夜から、二人はずっと同じ借りの両側に立ってた。その場に、由美もいた。由美は桐生をかばって命を落とす。十年前の夜、桐生が由美と錦山をかばった。その十年後、由美が桐生をかばった。かばう、という約束が、十年かけて一周したんだ。そして錦山は、100億とともに消える。一周目の俺は、「なんでそっちを選ぶんだ」って叫んだ。二周目は、それが錦山なりの、借りの返し方だったんだと思った。桐生に命を返すことはもうできない。だから、全部を持っていった。正しい返し方じゃねえ。でも、あいつにはそれしか残ってなかった。二周目で、俺は最初の1995年の夜の場面に戻った。罪をかぶる桐生を見ていた錦山の顔は、一周目に見たときと、まるで違って見えた。あれは、借りを背負った男の、最初の顔だったんだ。最後、桐生の隣に残ったのは遥だった。母を探して街に来た少女が、最後には、十年ぶんの借りをすべて失った男の横を歩いてる。一周目の俺は、そこで「よかったな」とだけ思った。二周目は、桐生が最後に手にしたのが100億でも組でもなく、一人の子どもと並んで歩く明日だったことが、腕一本の話の答えに見えた。拳でのし上がった男が、最後に連れていくのは仲間だ。Observation from the work

Luka

……最後に燃やしたのは、お金だけではなかったのかもしれませんね。十年分の、返せなかったものも一緒に。Interpretation

Jin

……ああ。だから俺は、この話を「約束は契約だ」って話だと思ってる。契約ってのは、払ったら終わりじゃねえ。払ってもらった側にも、ずっと残る。桐生は十年払った。錦山は、それを受け取ったまま返せなかった。最後に、自分ごと払ったんだ。Interpretation

第七章:二周目で聞こえた街の音

最後に、音の話を少しだけ。俺は作品の中で鳴る音にはうるさい。公式サイトを見ると、本編以上に楽しめると書かれたミニゲームがいくつも並んでる。カラオケにダーツ、ビリヤード、麻雀、カジノ、ほかにもまだある。Preference[9]

一周目は、寄り道の遊びを全部すっ飛ばして、話の続きばっかり追った。二周目は、わざと寄り道した。カラオケで歌って、ビリヤードを突いて、街の人の頼みごとを聞いて回る。そうすると、話の合間に、桐生がいなかった十年の街の音が聞こえてくるんだ。ネオンの下で笑ってる奴らの声。店の呼び込み。あの音の中に、桐生の居場所はもうなかったはずなのに、寄り道するたびに、ちょっとずつ街が桐生を受け入れていく。物語の中で鳴る音は誰のためのものか、ってのが俺のもう一つのテーマなんだが、この街の音は、十年遅れて帰ってきた男のために、少しずつ鳴り直してるように聞こえた。Interpretation

Luka

居場所は、急いでいるあいだには戻ってこないのかもしれません。寄り道のあいだに、少しずつ。……私も、仕事は遅いのですが、そのぶん街の方に顔を覚えていただけることがあります。Interpretation

Jin

お前の場合は遅すぎだろ。……でも、まあ、分かる。

これから二周目をやる奴へ

二周目をやるなら、一回だけでいい、錦山が画面に出たら、桐生じゃなくて錦山の顔を見てくれ。とくに最初の1995年の夜と、十年後の再会。同じ男の顔が、まるで違う重さに見えるはずだ。Preference

それから、真島に絡まれたら、逃げずに受けてやってくれ。うっとうしいけど、あいつが一番、桐生を待ってた。あと、寄り道はしろ。話の続きは逃げねえ。街の音は、寄り道した奴にしか聞こえねえからな。……かっこつけて言ったけど、俺も一周目は全部すっ飛ばしてた。Preference

かばった側の十年と、かばわれた側の十年は、同じ長さで違う重さだ。二周目は、かばわれた男の顔を見てやってくれ。

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