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Everyday

ナギを待つあいだにナツキ・スバルを語る

Spoiler range Touches on the ending TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』第2期(第26話〜第50話)の最終話まで。第3期以降の展開には触れません

金曜の夕方、約束の時間まであと一時間。駅前のファミレスで、店員さんを呼べずに固まるミコとルカ。ドリンクバーのスープを前に、ルカは『Re:ゼロから始める異世界生活』のスバルの話を始める。アニメ第2期の最後までのネタバレありです。

This article spoils the ending

CoversTVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』第2期(第26話〜第50話)の最終話まで。第3期以降の展開には触れません

Written for people who have finished it and want more from a second viewing. Midway developments and the details of the ending are folded away until you tap them.

For people who
『Re:ゼロから始める異世界生活』のナツキ・スバルが好きな人、アニメ第2期をもう一度思い返したい人へ。人に頼るのが苦手な人にも。
Who's talking
Luka × Miko
Family diner 駅前のファミレス(窓ぎわの四人席) 十月の金曜、夜七時前から八時前まで

金曜の夕方。ナギの家で夕ごはんを食べる約束は七時からだったが、ナギから「残業。一時間遅れる。ごめん」と短い連絡が来た。早く着きすぎたミコとルカは、駅前のファミレスで時間をつぶすことにした。

ミコは変な柄のパジャマの上にパーカーを羽織り、フードを半分かぶっている。今日の柄は、眠そうなペンギンだった。ルカはロゴのない配達用の保冷バッグを足もとに置き、膝の上で文庫本を閉じた。

テーブルの端に、店員さんを呼ぶボタンがある。二人とも、それをしばらく黙って見ていた。

Miko

……押して。

Luka

私が、でございますか。いえ、押すのはかまわないのですが、お忙しい時間に、ドリンクバー二つのためにお呼び立てしてよいものかと。

Miko

そのために付いてるボタンでしょ。

Luka

おっしゃるとおりです。それなら、ミコ様が。

Miko

いや、私が押せたら、最初から押してる。

結局、通りかかった店員さんに、ルカが胸の高さまで手を上げて、ていねいに頭を下げた。ドリンクバーを二つ頼むまでに、三分かかった。

Miko

ドリンクバー二つで、三分。

Luka

恐れ入ります。お詫びの言葉を、二つほど足してしまいまして。

ルカはカップにコーンスープを注いで戻ってきた。ミコは炭酸水だった。

Miko

夕飯の前に、スープ。

Luka

ドリンクバーの範囲内ですので。

Miko

範囲内なら何でもいい、ってわけじゃない。

Luka

昨夜、ようやく『Re:ゼロから始める異世界生活』の、アニメ第2期の最後の話までたどり着きまして。……一話ずつ、と決めて、この夏から観ておりました。

Miko

二期? 遅い。続き、先月ぜんぶ終わったよ。[2]

第4期「奪還編」は2026年8月〜9月に放送。第4期第19話は9月30日放送

Luka

存じております。ですが私は、まだ二期の終わりにおりますので。

Miko

で、話したいんでしょ。顔に書いてある。

Luka

顔に、ですか。

Miko

ネタバレ込みでいいよ。私、四期まで全部観てるから。二期の終わりまでなら、何言われても平気。その先は、私も言わない。

Luka

ありがとうございます。少し長くなりますが、よろしいでしょうか。

Miko

一時間あるし。

Luka

入口からお話しします。主人公のナツキ・スバルは、十七歳。父と母との三人家族で、学校には行かず、好きなだけ眠って遊ぶ暮らしを送っていました。迷ったときはやらないほうを選ぶ、が信条の少年です。[1]

Miko

私は、そこから観てた。元引きこもりの話として。

Luka

ミコ様は、そちらからでしたか。

Miko

深夜の買い出しの帰り道に、いきなり呼ばれる。あれ、夜中しかコンビニに行けない人の話だと思って観始めた。[1]

Luka

私がスバルを最初に好きになったのは、子どもたちに懐かれるところでした。村の子どもたちが、いつのまにかスバルの周りに集まっているのです。[1]

Luka

配達先で、小さなお子さんが玄関まで出てこられることがあります。届いた箱の中身のお話を、最後まで聞かせてくださる。子どもに好かれる方は、たいてい、子どもの話を途中で切らない方なのだと思います。スバルは、そういう人に見えました。

Miko

スバル、口はうるさいけどね。

Luka

ええ。とても。

Miko

作った人も、うるさくなりすぎないように気をつけてたらしいよ。言葉の選び方とか、演出とか、間とか。[2]

Luka

間、ですか。

Miko

黙ってる長さで、うるさいのがうるさく聞こえなくなる。……そういうもんなの。

Luka

第2期は、前の半分が夏に、後ろの半分が冬に放送されたそうです。私はそれを、一話観ては毛布をたたむ、の繰り返しで追いかけました。[2]

前半クールは2020年7月〜9月、後半クールは2021年1月〜3月放送。原作の第三章の終わりから第四章までをアニメ化

Luka

ここから畳みます。一つ目の箱です。

Up to midway中盤の展開(第2期の前半)Tap to open

ルカ「第2期は、第1期の最後の場面から始まります。その裏で、白鯨との戦いのあと王都へ戻る途中だったレムが、魔女教の大罪司教に襲われて、誰からも存在を忘れられた眠り人になってしまう。覚えているのは、スバルただ一人です」

ルカ「避難したまま戻らない村の人たちとロズワールを追って、スバルたちは結界に囲まれた土地、聖域へ向かいます。村の人たちは人質にとられていました。結界の中の住人が求めていたのは、聖域の解放です。結界を解く試練にはエミリアが挑みますが、心を大きく揺さぶる試練を一つも越えられず、少しずつ弱っていきます」

ルカ「スバルのほうには、問題が四方から来ます。エミリアの心の疲れ、屋敷を襲うエルザ、聖域に降る大雪と大兎という魔獣、それから、スバルから魔女のにおいを嗅ぎとって立ちはだかる、聖域いちばんの実力者のガーフィール」

ルカ「しかもスバルは、自分が死ぬと時間が戻ることを、誰にも話せません。話そうとすると、黒い手に心臓をつかまれるような痛みが来る。一度、痛みを押してエミリアに打ち明けたときは、痛んだのはスバルの胸ではありませんでした。握りつぶされたのは、エミリアの心臓のほうだった」

ミコ「痛みが本人を素通りして相手に行くの、いちばん性格悪い作り」

ルカ「ですから、スバルは一人で抱えるしかない。私はそこで、何度も画面を止めました」

ミコ「止めて、何してたの」

ルカ「毛布をたたみ直しておりました」

ミコ「それ、落ち着くためのやつ」[1]

Luka

はい。二つ目の箱です。

Up to midway中盤の展開(第2期の後半その1)Tap to open

ルカ「聖域の試練には、もしも過去に別の道を選んでいたら、という世界を見せられるものがあります。スバルはそれを、思いがけず受けてしまう。そこで見たのは、自分が死んだあとの世界で、悲しみに沈んでいる周りの人たちでした」

ルカ「スバルは揺らぎます。やり直すたびに皆を救ってきたつもりだったけれど、本当は、自分が死んで終わった世界の皆を、切り捨ててきただけではないか、と」

ルカ「弱ったスバルに、魔女のエキドナが契約を持ちかけます。スバルの生き方を見届けさせてくれれば、そのかわりに助言をあげる、と。けれど、エキドナの周りの魔女たちが、あの人は自分の知りたい気持ちのために、スバルにやり直しを重ねさせかねないとほのめかす。スバルは、その契約を断ります」

ルカ「断ったあとで、スバルは思いつめるのです。自分ひとりが黙って何度でもやり直せば、ほかの誰も傷つかずに済む、と。それを見かねたミネルヴァとサテラが、スバルを説き伏せます。あなたもまた周りから大切にされている。だから自分のことも、もっと大事にしてほしい、と」

ミコ「……さっきのボタンと同じ」

ルカ「返す言葉もございません」

ミコ「でも、それは違う。ボタンを押せないのと、一人で背負いこむのは、別。押せないのは、ただの私の弱さ。スバルのは、優しさの顔をした思いあがり。周りを当てにしないのって、周りを信用してないのと、ほぼ同じだよ。魔女の二人が言ったのも、たぶんそういうこと」

ルカ「……はい。耳が痛いです」[1]

Luka

その回を観た夜、私は、倉庫の仕事に入った日のことを思い出しておりました。

Miko

倉庫?

Luka

重い箱を、一人で運ぼうとしました。腕が震えているのに、手伝ってくださいとは言えなくて。隣の方が黙って反対側を持って、二人で持ちましょう、とおっしゃった。そのとき初めて、箱がこんなに軽くなるのかと思いました。

Miko

その人、名前聞いた?

Luka

いいえ。聞きそびれました。お礼も、半分しか言えておりません。

Miko

半分なら、上出来。

Luka

三つ目の箱です。

Up to midway中盤の展開(第2期の後半その2)Tap to open

ルカ「オットーは、行商人の青年です。商いの腕はあるのに、とにかく運がない。スバルたちとは成り行きで付き合っていたはずが、いつのまにか陣営に引きこまれています」

ルカ「オットーは、スバルが何でもできる人ではなく、ふつうに心の弱いところのある人間だと分かっている。分かったうえで、肩を並べる友人でいようとする。助ける側でも、助けられる側でもなく、横に立つ人です」

ルカ「オットーには生まれつき、声を出す生き物なら何とでも話が通じる加護があります。けれど、動物と言葉を交わす姿がひどく奇妙に映るせいで、子どものころから故郷では疎まれてきた」

ルカ「スバルは、一人でやり直すのをやめて、仲間の力を借りると決めます。オットーと地竜のパトラッシュに助けられ、ラムにも手を貸してもらって、立ちはだかっていたガーフィールを打ち破ります」

ミコ「私、二期でいちばん好きなの、オットー」

ルカ「ミコ様は、オットー様でしたか」

ミコ「変に見えるってだけで、地元で疎まれる。それでも、困ってるやつの横に普通に立つ。あいつ、助けてやってる顔を一回もしないんだよ」

ルカ「横に立つ、という言い方、よく分かります。……私はスバルを好きなのとは別に、スバルの横に立てる人がいることに、安心したのかもしれません」

ミコ「ルカ、それ一行で言うと?」

ルカ「一行、でございますか。……スバルに友だちがいて、よかった」[1]

ミコが鼻で短く笑った。ルカは、口の端が上がりかけたのを、スープを飲んで隠した。

Miko

笑えば?

Luka

それは、ご勘弁ください。

Luka

ここからは結末です。

Ending and reveals結末(第2期の終盤)Tap to open

ルカ「ロズワールは、エキドナにまつわる叡智の書で、スバルが世界をやり直せることを知っていました。スバルを、エミリアに忠実な騎士に仕立てるために、わざと周りを窮地に追いこんでいた。聖域の人々がエミリアのせいだと疑っていた大雪も、ロズワールが降らせていたものです。スバルがまだ死を恐れていると見ると、ロズワールはためらわずに自分の命を絶ち、スバルにやり直しを強いる」

ルカ「だからスバルは、ロズワールと約束を交わすのです。この回で窮地を越えられなかったら、あなたに素直に従う。越えられたら、その本を捨ててもらう、と」

ルカ「ガーフィールは、聖域の外の世界をひどく怖がっていました。スバルはその怖さを越えさせて、味方にする。屋敷ではエルザを退けます。そして、燃え落ちる屋敷と一緒に消えようとしていたベアトリスを、炎の中から連れ出します」

ルカ「ベアトリスは、エキドナが作った精霊です。作り手と四百年前に結んだ約束があって、誰かが禁書庫の扉を開けに来る日を、ひとりきりで待ち続けていた。けれどその人は、いつまでたっても現れない。待ちくたびれて、何もかも投げ出しかけていたところを、スバルが説き伏せて禁書庫の外へ連れ出し、契約を結びます」

ミコ「ガーフィールのとこ、私は好きじゃない言い方がある。怖さを越えさせた、ってやつ。外が怖いのは、直すもんじゃない。外が怖いまま生きてるやつもいる」

ルカ「失礼ながら、私は、直したのではなく、外へ一緒に出る人ができた、と読みました。怖いままでも、隣に誰かがいれば、一歩は出られる。さきほどのボタンも、ミコ様お一人なら押せませんでしたが、私がいたので、手だけは上がりました」

ミコ「上げたのはルカでしょ」

ルカ「ええ。ですから、二人なら、です」

ミコ「……それなら、まあ、いい」

ルカ「私がこの箱の中でいちばん長く考えたのは、ベアトリスのことです。四百年、あの禁書庫の中で、ベアトリスはどこで眠っていたのでしょう」

ミコ「そこ?」

ルカ「待つ人は、待つ場所から動けません。……私は、自分の名前の書いてある郵便受けを、まだ持ったことがありません。だから、扉の内側でずっと誰かを待っていた人の話には、どうしても足が止まります」

ミコ「……そう。郵便受けくらい、そのうち持てるよ。たぶん」

ルカ「そうだと、うれしいです」[1]

Luka

最後の箱です。

Ending and reveals結末(第2期の終わりのほう)Tap to open

ルカ「ガーフィールとの戦いで、スバルは体の中の門を使いすぎて、すっかり潰してしまいます。それからは、自分ひとりの力では魔法をまったく使えなくなる」

ルカ「試練を越えたエミリアと、ベアトリスと力を合わせて、スバルは大兎を倒します。ロズワールは、ラムと戦ったときに例の本を失って、もう周りの被害をかえりみずに動くことはしないと約束する。陣営は、ひとまず一つにまとまります」

ルカ「この騒ぎのあとで、スバルは、エミリアの騎士として正式に認められます。彼女を支えると誓って、第2期は幕を下ろします」

ルカ「一人では魔法が使えなくなった人が、騎士になる。私は、そこがいちばん好きなのです。いえ、言い直します。自分ひとりでは力が出せない人が、誰かを支えると誓う。そこが、好きです」

ミコ「自分を大事にしろって言われた人が、最後に、自分ひとりじゃ魔法も使えない体になってる」

ルカ「はい。皮肉のようで、私には、ごほうびのように見えました」

ミコ「……それは分かる」[1]

ミコのスマートフォンが、テーブルの上で短く震えた。ナギからだった。「いま駅。あと五分」。

Miko

来るって。

Luka

そろそろ参りましょうか。ミコ様、第3期の一話目は、どちらで観るのがよろしいでしょうか。

Miko

ナギんちのテレビ、大きいよ。

Luka

では、ナギ様に伺ってみます。……毛布も、一枚お借りできるかどうか。

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