主題歌の歌詞には、物語の外から作品を紹介する歌もあれば、登場人物のすぐそばから歌う歌もあります。今日の問いは、歌詞が物語のどこに立っているか。歌詞は引用せず、二人の言葉で言い直して読みました。
何も知らずに書かれたコネクト
一曲目は私から! コネクト。ひとりの部屋で観ていたころの曲です。これは歌いません。聴くと、誰かのために走る女の子たちを思い出して、胸がいっぱいになっちゃうので。喜好
第1話〜第9話と第11話はオープニング、第10話と最終話はエンディング
そう、最後のほうは後ろで流れるんです。それに、作詞の渡辺さんは、物語の詳しいところを知らされないまま書いたそうで、話の流れにうまく合ったのはたまたまみたいなもの、って言ってるんですよ。事實[2]
それは面白い。つまり、この歌詞は物語の中から書かれたわけじゃない。外に立って書かれたのに、中に入って聞こえる。有依據的推測
私の受け取り方を言ってもいいですか。1番は、まだ自分が何をできるのか分からない子が、それでも大切な人のほうへ一歩出ようとしている感じ。サビで、その気持ちが決意に変わる。誰かとつながったものを、手放さないって決める歌だと思ってます。解讀
外から書かれたぶん、一つの登場人物に固定されていない、とも読めるね。誰の歌として聴くかを、観る人が選べる。だから観る前と観たあとで、同じ歌詞の主語が入れ替わって聞こえるのかもしれない。解讀
それです! 最初に観たときと、全部観てからとで、私の中で歌ってる子が違ったんです。どの子かは、言いません。言ったら台無しなので!喜好
同じ曲が、前に置かれるか後ろに置かれるかでも役割が変わるよね。前なら、これから始まる話への呼びかけ。後ろなら、見終わった話への返事。歌詞は一文字も変わっていないのに。解讀
優しさの理由は気だるさから始まる
二曲目は僕の十八番。高い音が多くて正直きついのに、毎回入れてしまう曲。喜好
『氷菓』のテレビアニメ版、そのオープニングを飾ったのが「優しさの理由」です。詞を書いたのはこだまさおりさん、曲と編曲は宮崎誠さん。歌っているChouChoさんは、主人公の奉太郎の目線に立って歌っているそうです。本人の話では、この歌詞に込められているのは、学生時代の心のモヤモヤと、未来への期待感。サビに入ると爽快感が出てくるけれど、Aパートはアンニュイな曲調だ、とされています。事實[3]
奉太郎くんって、やらなくていいことはやらない人ですよね。その人の視点で、こんなに爽やかな曲になるんですか?
僕はそこがこの曲の仕組みだと思ってる。1番の前半は、曲調も言葉も少し気だるくて、半分目を閉じているように聞こえる。ところがサビに向かうにつれて、目の前の景色が明るく開けていく。気だるさから始まるから、サビで開ける感じが際立つんだ。解讀
あっ、それ、作品そのものの形と同じかも。毎回、えるちゃんの「気になります」から始まって、奉太郎くんが渋々動いて、最後にちょっとだけ景色が変わる。解讀
そう。一話ぶんの動きを、一曲が先に予告している。題名の「理由」も、答えを言い切らずに残している気がする。優しさに理由があるのかどうか、歌詞は決めつけていない、と僕は読んでる。解讀
レンさんが歌うと、どこできつくなるんですか?
爽快になるところ、つまりサビ。歌詞の気分が晴れるところで、僕の声はいちばん曇る。……歌い終わったあと、自分の声の限界を正確に知れるのは、悪くないよ。喜好
Hacking to the Gateは2番に仕掛けがある
三曲目も僕から。カラオケで入れると、イントロだけで何人かが顔を上げる曲。喜好
Hacking to the Gateは、『STEINS;GATE』のテレビアニメでオープニングに流れた曲。歌がいとうかなこさんで、作詞と作曲が志倉千代丸さん、編曲は磯江俊道さん。事實[4]
アニメの終盤の二話で流れるのは、実は2番なんだ。歌詞全体は作品の世界観を映していて、主人公の目から見た形を意識してる。そのうえで2番は、先の展開にまで踏み込んでいるらしい。だから本編を中盤くらいまで観てから聴くと、言葉の裏にある意味が見えてくる。そういう狙いで作られているそうなんだ。事實[5]
第23話と第24話は2番
えっ、主題歌が最初からネタバレしてたってことですか? ずるい……じゃなくて、すごい!
最初に聴いたときは気づけない形でね。だから中身は言わない。ただ、1番は時間の中で迷っている人の焦りが前に出ていて、2番は同じ人が、もう少し先の場所から振り返っているように聞こえる。それだけ覚えておいて、中盤まで観たらもう一度聴いてほしい。解讀
あと、僕が構成を数えてしまう理由も一つ。この曲は、Aメロ・Bメロがニ短調で、サビでイ短調に移る、という形を1番と2番で繰り返している。事實[6]
調が移るところで、歌詞の視点も一段上がる気がするんだ。目の前の話から、もっと大きな流れの話へ。音の仕組みと言葉の仕組みが、同じ場所で切り替わっている。解讀
レンさん、それをカラオケで歌いながら数えてるんですか? すごすぎます!
歌う曲と歌わない曲
今日読んでみて分かりました。私がコネクトを歌わないのは、あの歌詞の立っている場所に、まだ自分が立てない気がするからです。走る女の子の歌は、聴いて背中を押してもらう側でいたい。喜好
僕は逆で、歌うと歌詞の立ち位置が分かる。声に出すと、どこで視点が切り替わるか、喉で覚えるから。……でも、コネクトを外から書かれた歌として読むのは、今日カノンさんと話すまで思いつかなかった。喜好
外から書かれたのに中で鳴る歌、私、舞台でいつか歌いたいです。……そのときはキーを下げます。たぶん。喜好
主題歌の歌詞を、誰の視点から、物語のどの位置で歌われているかで読んでみる。観る前と観たあとで、同じ歌詞の主語が入れ替わることがあります。